範馬刃牙 第162話 強肉弱食 



今だ!俺は鳥になる!
明日からやる男が、今日飛んだ。
黙って座るのが好きな男が、今日飛んだ。
この飛翔の価値は重い!重いぞ、烈!
何が込められているのかは、わかりません。


そんなわけで刃牙が飛んだ。
リアルシャドーでハゲワシを生み出して、反対側まで飛ぶのかと思ったら、普通に飛んだ。
あとは万有引力に従って落ちるだけだ。
30mからの落下のダメージは身を以て知っている。
それでいいと偉そうに肯定したくせに、見事すぎるほどに瀕死になってしまった。
…何を考えているんだ、刃牙。

(自殺…!!?)

みっちゃん、またナニ言ってんの!
自殺と言い出したら、ピクルに挑もうとする行為自体が自殺同然だが、そこは無視しておこう。
30mの高さから飛んだ。普通に考えれば自殺だ。
ピクルが飛んだ時はそんなことをまったく思わなかったのに…
ピクルと刃牙の評価がわかる台詞だ。
地下闘技場チャンピオンなのに…Jr.との盛り上がらない戦いでファンを一気に逃してしまったのだろうか。

(君に…… 気を遣わせた……)
(俺から仕掛けておきながら…… 俺から誘っておきながら……)
(君に気を遣わせた…………)


遺書の内容は気を遣わせたかららしい。
ヒロインが人質に取られた時に、私がいてはあなたは戦えない!と自らの命を絶つようなものだろうか。
自己犠牲の精神であった。
何のために犠牲になるのか、わかりませんが。
実に範馬刃牙です。

刃牙は落ちていく。
普通に落ちていく。
あまりの出来事にピクルも呆然と落下を見守るのみだった
そりゃそうだ。高いところから落ちて瀕死になって、また飛び降りる恐竜なんていやしない。
ここで刃牙を助けてあげればさらなる挑発になるぞ!

ギャドッ

そんな間に刃牙は地面に激突した
砂埃が舞う。刃牙の姿は確認できない。
ギャラリー一同は沈痛な表情を浮かべる。
そりゃあ、血を吹いて骨を出すグラップラーと言えど飛び降り自殺は見たくはなかろう。
何かもう、戦う前から大惨事だ

やがて、砂埃が晴れる。
そこにいたのはぶっ倒れた刃牙ではない。
体育座りの刃牙だ!
な、何故に体育座り…
ワケがわかりません。何なんだあんた。

だが、表情は皮肉気に笑っている。
どうやら1回目の落下と比べると受けたダメージは抑えられているらしい。
これがエンドルフィンパワー!
落下程度のダメージなんて、へいきへっちゃら。
やっぱりダメージがデカかったから、体育座りしか出来ないというオチはありませんように…
いや、そっちの方が刃牙らしいか?

刃牙は体育座りから立ち上がる。
今の刃牙は動けるのだ。
1回目はそれすらもままならなかった。
エンドルフィンは確実に刃牙の身体能力をブーストさせている。
ぐう…妬ましい。それと何か腹立つな…

これにはギャラリー一同大驚きだ。
烈と花山が驚き役にならざるを得ないほどの衝撃である。
見方を変えると刃牙の飛び降りは豪華キャストに恥じないパフォーマンスと言える。
まずは魅せることが大切なんです。いきなり金的で勝負を決めたらあかん!
ガイアが俺にもっと飛び込めと囁いている。

「何億歳だか知らんが……」
「年上だからってさ…………」
「気ィ遣ってんじゃねぇよ…」


そして、すかさず逆ギレだ!
おいおい、遺書の内容は気を遣わせた自分が悪いから、じゃなかったのかよ。
前言撤回して、ピクルが悪いことにしやがった。
ヒロインが人質が取られた時に、私がいるからあなたは本気で戦えない…って気を遣っているんじゃねえ!と怒られた心持ちだ。
まさに傲慢不遜で俺理論を貫き通す刃牙ISMだ。

そして、何億歳って塩漬けになっていた時間も年齢に勘定するのだろうか
いや、それはないだろう…
せめて生きてきた年齢で判別してやれよ。
もっとも、それでもピクルの方が年上なのかもしれないが。
だから、言っていること自体はおかしくはないけど、白亜紀から年齢を数えるのはやっぱりおかしい。

「……………ッッ 無茶しやがって…………………」

花山さんが的確すぎるツッコミをした。
本当に無茶しやがってだよ!
おっとと思わず花山の本性が漏れてしまった感。
花山の眼鏡は伊達じゃないんです。ネットサーフィンのしすぎで近眼になっただけなんです。
今日もガルガでヴァナに潜るぜ。
リアルではモンクタイプ!

さて、刃牙は本当に無茶をしているのだろうか。
たしかに顔は冷や汗まみれだ。
だが、何事もなかったかのように体育座りして立ち上がった。
今の刃牙は範馬一族特有の超タフネスを発揮しているのかもしれない。
30mからの落下なんて、マジ大したことねえ!
さて、戦力評価にかけては超一流のピクルさんが下した判断は…

[擬態だッッ]
[明らかな擬態……]


うっわ、本当に無茶してた!
膝が震えています。ダメージありありです。
エンドルフィンによってダメージを軽減することは出来たかもしれないが、ダメージ自体は変わらずにあったらしい。
って、それじゃあ何のために飛び降りたんだ?
刃牙は何も変わっていないように見える。エンドルフィンを出したまま、殴っておけばいいじゃん。
自分がイロモノ――もといマゾだと証明するために飛び降りたようなものだよ。

ピクルは混乱していた。冷や汗も流している。
そりゃあ、混乱もするよ。
だって、刃牙の飛び込みは本気で意味がわからない。
文化人でも理解に困る。もう、文化の戦いってレベルじゃないぞ。

ピクルの知っている擬態とは死んだふりであり無力を演じるもの…
生き延びるためのものだ。

[なのにこの雄は――]
[ダメージの原因となった行為を――― あろうことか再び繰り返し]
[強者の前に立っている…ッッ]
[しかも上機嫌すら演じて…]


刃牙は野生の摂理とはまるで異なることをやってのけた。
まさに文化の戦い…なのかもしれない。
未知の心構えをピクルにぶつけた。
これで初体験の出来事は怖いピクルだから、勢い余って逃げ出すかもしれない。
…刃牙が相手だから逃げた方が幸せかもしれない。
だって、マゾとか野生的にキモい。きもーい。

[この雄のやろうとしているのは――――――]
[強肉弱食……!!?]


強い者を弱い者が食う。刃牙が行おうとしていることは野生の摂理から外れているらしい。
でも、ピクル理論だと結果と過程が逆転している
戦いに勝つという過程があるから強者が弱者の肉を食うという結果があるのではなく、
強者が弱者の肉を食うという結果があるから戦いに勝つという過程があることになってしまう。
自分が強者であることが絶対のものと過程なしに判断してしまっている。

これはピクルが強者故の驕りなのであろうか。
最強を信じているのではなく、最強だと思ってしまっている…似ているようで、その隔たりは確実にある。
やはり、ピクルの弱点はメンタル面なのか?

刃牙の瞳の色が変わる。
鋭利なナイフのように研ぎ澄まされた輝きを見せる。
今まで刃牙が見せたことのない視線だ。
飛び降りに意味がまったくないように思えたが、これを引き出すためのものだったのか?
いや、普通にやれよ。飛び降りるなよ。

刃牙は左ジャブをピクルに放つ。
不意打ち気味だったからか、ピクルは反応できない。
さらに矢継ぎ早に右フックを繰り出す。
だが、どちらもクリーンヒットはしていない。
ピクルのアゴをごく僅かにかすめた程度だった。

「刃牙が空振りかい………ッッ」

(回復しているワケがねェ…)


徳川光成と花山は空振り判定を出した。
遠い場所から見ているのもあるが、そう勘違いしてしまうほど浅い当たりだった。
徳川光成はまだしも花山ですら見間違うほどなのだ
よほど浅い当たりで、それでいて速い打撃だったのだろう。

(………………… ……………………………………………………………これは……)

だが、超一流海王にして超一流解説家の烈は刃牙の打撃に何か感じるものがあった
刃牙の打撃を捉えていたのだった。
まぁ、ピクル相手にアゴを狙っても無駄なことは烈が一番知っている第95話)。
中国四千年の技術でアゴを攻めても無駄だった。別人の例だとジャッククラスのパワーでアッパーしても無駄だった。
もしかしたら、アゴを狙っても無駄だ、刃牙さん!とでも言いたいのかもしれない。

もっとも、そんな烈の気持ちなんざ知ったことじゃない。
我が道突き進む刃牙は構わずに飛び上がる。
そして、アゴに蹴りだ!迅く!それでいてインパクトは浅く!
あまりの浅いインパクトで当たっていない。そう錯覚してしまうほどだ。
というか、効果音がない。パンチにはチッと効果音があったのに…
もしかして、本当に外れちゃったか?

刃牙は着地する。
と、同時にピクルの視界が回る。
なんとピクルがダウンした。
…いや、ちょっと待て。ちょっと、待てよ。
ピクルの頸椎は人間をはるかに凌駕しているんじゃなかったのか?第99話

刃牙の打撃はアゴを狙っている。明らかに脳震盪狙いだ。
だが、ピクルに脳震盪を狙っても無駄なことは何度も証明されている。
炎属性を無効化するモンスターに炎属性の魔法を使うくらいに無駄なのだ。

でも、今はこうして脳震盪狙いの打撃が効いている。
脳震盪に耐性があるとはいえ、アゴ狙いの打撃も積み重ねれば効くかもしれない。
でも、刃牙が行ったのはたった3発だ。量としてはどうしても足りない。
ど、どういうことだ?
もしかして、刃牙は飛び降りた時に設定を破壊しちゃった?
謎を残したまま、次回へ続く。


やっぱり、高濃度範馬は侮れない。
先週まで散々情けなかったのに、いきなりダウンを奪ったよ。
主人公補正は凄まじい。ジャックは泣いても泣いてもキリがない。
ステロイドを使わずとも主人公に生まれていれば…

さて、最大の謎は刃牙が飛び降りた意味…じゃなくて、ピクルのダウンだ
脳震盪狙いの打撃でダウンした。ピクルの頸椎から考えればありえない出来事だ。
一体何があったのだろうか。


1.普通に脳震盪
刃牙の打撃のタイミング・パワー。スピード・ポイント・インパクト…全てが完璧な打撃ッッ。ならば、ピクルといえどダウンせざるを得ないッッ。
来週、烈は豪語するのであった。あんまり豪語して欲しくない。
烈やジャックの立場がまるでなくなってしまうのが難点だ。
そういえば、頸椎を筋肉の鎧に守られたオリバも、楽に(多分)脳震盪でダウンさせたことがある(第70話)。
刃牙は防御力のついでに設定を無視することが大好きだ。
少しくらいは守ってやってください。

2.なんかすごい技を使った
ただのパンチに見えてインパクトの瞬間、関節の全てを停止させる剛体術だったのだ。
それをアゴに3連発…ピクルと言えどダウンせざるを得ない…かもしれない。
あるいは消力とか。
消力ならば烈が反応した理由もわかるというものだ。
飛び降りたのは消力の練習です。消力によって浮力を得て落下速度を軽減したのだ。
ダメージを受けているようですが気にしないように。あとたった1回で体得して烈に妬ましく見られる。

3.実は脳震盪によるダウンではない
ピクルに脳震盪は効かない!はやくあやまっテ!
というわけで発想を逆転させよう。
一見、アゴを狙っているように見えるけど違うんです。
あれはフェイクで本当は別の部位を狙っているのだ。
そこは金的!
ピクルの股間を注視すると無残にもちぎれたふんどしがあるのだ…
来週からは1年ぶりに全裸を解放するピクルを見られるぞ!
最後の跳び蹴りでどうやって金的を狙ったのかは知りません。

4.そもそもダメージによるダウンではない
実は催眠術だったのだ。
刃牙の落下も催眠術の一環と相成る。自殺の謎も解けて一石二鳥、いやいっせきさんちょう!
刃牙さんッッ。怒李庵氏の催眠術を模倣したというかッッ。なんという天才…ッッ。烈は唸る。
刃牙は一度もあいつの催眠術を見ちゃいねえ。花山のツッコミで全てが台無しになる。
お主もそのことを知らんがの。とみっちゃんのツッコミで話はメタレベルになっていく。

5.一流のハンターを使っていた
勝てば良かろうなのだァー!
麻酔薬の使用もこちらに該当しますです。

6.ピクルは演技していた
わざわざ安全パンチ(公称)で自分の安全性を偽った、もとい教えたのだ。
ならば、今度はわざとダウンすることで己の脆弱さをアッピルだ!
これならアゴを狙ってもダメージを与えられなかった烈とジャックの名誉は傷付かない。
傷付くのは刃牙の誇りだけだ!

7.リアルシャドーだった
背後には本物のピクルが立っています。
迫真の演技に思わずギャラリーは騙されたのだ。読者も騙されたよ。
飛び込んだのは演出のためです。エンターティナ―らしい小技であった。
本物のピクルは何やってんだこいつ的に唖然としている。
そして、刃牙は勝ったのは俺だと名台詞を言いながらピクルに飛びかかる。
数時間後、ビルの屋上には吊された刃牙の姿があった…

8.夢オチ
刃牙は郭海皇に土下座され、オリバに勇次郎を紹介され、地上最強はお前だと称えられる。
こういうことって…大抵はそう…大抵は…夢。
現実に戻ったら刃牙は落下のショックで気絶していた。
ピクルはさすがに困ったので寝た。


いろいろ書いてみたけど、どれも当たっている気がしない…
個人的には8が有力だと思う。

とにもかくにも、飛び降りた理由はさっぱりわからないが、何にせよダウンを奪えて良かったね、刃牙。
いや、このダウンの奪い方はどうなんだ。
何か納得いかねえ。鬼の貌も出していないしなおさらだ。
まぁ、オリバですら一発でダウンしたのが0.5秒パンチだ。
それと同等と思われるものを3連発されたなら…いやダメだろう。

次回どうなるのであろうか。
返答次第では今までピクルに挑んだ3人の頑張りがまるで無駄になってしまう
刃牙は主人公らしく、散っていった人たちを踏みにじることなく、むしろ立てて欲しいですね!
…あ、敗者を踏みにじるのは刃牙のストロングスタイルだった。
現にジャックが追い打ちを食らって脱落している。
ああ…今度は3人まとめてやっちゃうっていうのか…



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