範馬刃牙 第301話 肩車
転蓮華を破られ肩車になってしまった!
ここに烈海王がいないのが本当に惜しい。
彼の驚きっぷりが目に浮かぶ。
でも、中国武術において転蓮華はどの程度の位置づけなのだろう。
けっこうな技術が必要とされるのは間違いないだろうけど……
勇次郎は刃牙を肩車したまま歩き出す。
刃牙も転蓮華の型を解いて完全な肩車になっている。
そして、今更ながらに勇次郎がデカい。
刃牙の2倍以上はあるぞ。
やはり、身長を大きく見せるためには迫力か。
世の巨漢たちは迫力の見せ方をもっと学べい。
(親父の頭……………)
(範馬勇次郎の頭蓋骨……)
(こんなふうに…触れるのは…初めてだ)
で、勇次郎の頭蓋骨にときめく範馬刃牙である。
頭蓋骨萌えって新しいな。
そういう視点もあったのか。
刃牙ほどの実力者になれば触れただけでどのような骨格か察することができるはずだ。
現にジャックはアッパーを当てただけでピクルの頸椎の秘密に気付いていた。(第142話)
烈も後日談ではあるがピクルの頸椎について触れていた以上は気付いていたのだろう。(第178話)
で、勇次郎の頭蓋骨は鬼の形をしている。
直に触れることでそれに気付くことができた。
刃牙は「親父の頭蓋骨って鬼の形をしているのかよ!? 萌え萌え☆キュンッッ」と昂ぶっているのかもしれない。(第211話)
勇次郎は刃牙を肩車したままゆっくりと歩く。
特に目的もなくぐるぐる回っているようだ。
先ほどまでの絶技を尽くしためまぐるしい攻防が嘘のように静かな一時だ。
この夜で一番静かな時間かもしれない。
食事している時も説教から始まったし。
(培われた全部(すべ)てを使用(つか)わせてもらった…)
(この親父(ひと)が………全てを受け止めてくれた…)
(おまけにこんな…)
(特典(サプライズ)まで…)
刃牙は全てを出し尽くしたことを感じる。
最大トーナメントを制してから刃牙は妙に強くなり、並ぶものはほとんどいなくなった。
絶大な実力を見せたピクルだって圧倒できている。
刃牙は最強にもっとも近い存在になった。
そんな刃牙が全てを出し尽くした。
そして、受け止めてくれる相手と出逢えた。
格闘家冥利に尽きるのだろう。
それは勇次郎も一緒であるに違いない。
お互いに運命的な相手であった。
諸々の意味で相性が良すぎる。
「刃牙よ………」
「……うん…」
「なァ!」
「ハハ……」
「なァ…………って…………」
「言いにくい」
〜〜〜〜ッッ、何だ……これは……
恋人を息子に向かってセックスしろと堂々と言っていたとは思えない、奥ゆかしい会話だ。
息子も息子もその後に恋人にセックスすると言った。
恥じらいも何もない二人らしからぬ会話だ。
それだけ二人の距離が縮まっているということか。
近付きすぎて、言いにくくなるほど。
[それぞれが]
[それぞれに]
[宴の終了(おわ)りを予感し………]
[覚悟していた]
徳川光成も、ピクルも、独歩も、オリバも、おまけで梢江も決着を予感した。
皆一様に流す冷や汗がその決着の意味を物語る。
予感するだけではなく覚悟させる決着なのだ。
その重さは推して知るべきか。
「刃牙よ」
「うん」
「そろそろだ」
「うん」
「思い残すことはないか」
「うん」
まるで親子のように勇次郎は刃牙に問う。
この戦いが始まる前と今では二人の関係は別物になっている。
勇次郎も刃牙もお互いの気持ちを隠すことなく伝えられている。
が、愛情が暴力に転化するのが範馬一族だ。
刃牙は肩から降りると即座にバックドロップを決める。
バックドロップは刃牙が愛用している技である。
猪狩戦のジャンピングバックドロップやジャック戦の脚を掴んだバックドロップなど、いくつかの変形系を交えながらも愛用している。
伝統の一撃でありそれを受けた勇次郎の頭部はアスファルトを貫く。
が、ノーダメージだ。
微笑む余裕を見せ即座に起き上がる。
そんな勇次郎に刃牙は走り出す。
さりげなく地面を踏み抜いている。
ゴキブリダッシュ級のダッシュ力で向かっていることがわかる。
そして、顔面にフック、ボディ、ハイキックとありったけのコンビネーションを叩き込む。
だが、相変わらず勇次郎には通用していない。
決着を着ける直前になると勇次郎の防御力は飛躍的に向上する。
独歩の時も、郭海皇の時も。
ならば、今も……?
「何にだって終わりがある……」
勇次郎の十八番、鼓膜破りが刃牙に決まった!
勇次郎は鼓膜破りで相手の動きを封じてからの鬼哭拳で強者を屠ってきた。
鬼哭拳が人成らざる速度を誇ると言えど、基本的には大振りだ。
だから、破壊力こそあれどガードすることは容易いだろう。
まして刃牙クラスのタフネスの持ち主ならば、ガードさえすれば鬼哭拳は凌ぎうる破壊力なのかもしれない。
というか、事実耐えた。
だが、鬼哭拳を完全な形で当てることができれば話は変わってくるかもしれない。
そのための鼓膜破りなのだろう。
鬼哭拳が不発を迎えたからこそ、鼓膜破りの持つ意味が改めてわかる。
ノーガードの状態で刃牙は鬼哭拳を受けてしまうのか。
そうなると命も危うい。
覚悟しなければいけない決着とはつまりはそういうことなのだ。
あるいは刃牙がここに来てさらなる進化を遂げるのか。
いや、ここまで前振りしておいて長引くのはないなー。
でも、詐欺には幾度もあってきたからなー。
どうにも信用のならないまさに範馬な一戦である。
次回へ続く。
次回、ついに決着!
……するんですか?
走馬燈でいきなり回想を始めてもおかしくない。
それもどっぷりコミックス1巻分くらい。
刃牙としては大ピンチだ。
今度こそ鬼哭拳を完全な形で喰らうことになる。
無防備なところを打たれれば大ダメージだ。
リカルド・マルチネスだってダメージをほとんど受けていなかったのに、
ハートブレイクショットからのコンビネーションを受ければ負けていたと語っている。
刃牙も同じように穿たれてしまうのだろうか。
いや、ここで梢江の出番かも。
刃牙に襲いくる鬼哭拳から身を挺して守る!
最愛の人を失って刃牙はさらなるパワーアップを果たすのだ。
刃牙がお前笑ってるぜ状態になったらまぁ主人公失格でいいや。
もう失格気味かもしれないが。
鬼哭拳を心臓に打ち込む。
それだと刃牙を殺すことになってしまう。
さすがにそれは忍びない。
最愛の息子であり最大の強敵なのだ。
強敵と書いて「とも」と読む。
じゃあ、致命傷を与えつつも殺さない方法で刃牙を倒すのはどうか。
それは金的への鬼哭拳だ!
これなら刃牙は死なないだろう。その上で刃牙を倒すことができる。
でも、範馬一族そのものが子種的に死んでしまうか。
刃牙は唯一の勇次郎に並んだ範馬一族なのだから、その血を絶やすのはもったいない。
そんなわけで殺される前に子孫を残させてくださいと梢江と公衆の面前でSAGAっておくとどうでしょうか。
場の雰囲気に流されて嘔吐の前に落涙してくれるかもしれないぞ。
んー、でも、梢江の前にピクルの遺伝子の方が大事な気がしてきた。
ピクルに犯されたナレーターは今どうしているんだろう。
この場で梢江争奪戦が始まってもおかしくはないか……
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