EPISODE13 遙か彼方、星が音楽となった…かの日



ついにシンフォギアGも最終回だ!
今日、この日までマリアは虐げられてきた。
賞味期限はギリギリ第4話で、以降はへっぽこっぷりを炸裂させるのみだった。
だが、謎ポエムで圧倒的な後押しを受けた。
ならば、立ち上がるより他ない。
牛乳だって腐りきればチーズになる! 一周して生まれ変われる!
なお、腐敗と発酵は別物です。



「ガングニールに……適合だと……?」

融合症例でもなければ適合者でもない響がその身をガングニールで鎧った。
しかも、マリアのガングニールを奪っている。
前代未聞の事態にマリアは驚愕する。
そして、いつの間にか服を着ている。
全裸全世界中継は引っ張らないようだ。
マリアの大事な何かはかろうじて守られているような、手遅れなような。



「ビッキー」

「やっぱり立花さんの――」

「人助け」


響の変身を3人娘も見ていた。
メッチャカメラ目線ですね。
ともあれ、3人娘には人助けに映ったようだ。
人助けに見えたのならば良し!




「うおおおぉぉぉおんッ!」
「こんなところで――うわぁあッ!?」
「こんなところで……ッ!」
「終われる、ものかッ!」


劇的な変身を迎えたが、その隙を突いてウェル博士は逃げ出す。
階段を転げ落ちる辺り、相変わらずのどじっこである。
ウェル博士は転ぶことが多いから運動神経がないのか、あるいは焦るとダメな人になるのか。
触れるだけで脱出口になるからフロンティアは便利だ。
さすがは先史文明の遺産である。
金子彰史は先史文明とやっておけば無茶が効くから好きなんじゃないだろうか。



「ウェル博士ッ!」

ここでついに弦十郎と緒川さんが最前線に到着する。
共にシンフォギアに匹敵する強者である。
緒川さんはフィーネさんに一矢報いることさえできなかったが、思えば3人の装者を相手に互角以上に渡り合ったのがフィーネさんである。
相手が悪すぎたと言えよう。
悪すぎた相手を圧倒したのが弦十郎だけど。
だが、僅かに遅かったため、ウェル博士を逃がしてしまうのだった。
しぶとさだけなら相変わらずのウェル博士であった。



「響さんッ! そのシンフォギアはッ!?」

「マリアさんのガングニールがわたしの歌に応えてくれたんですッ!」


物凄い上手い言い回しをする響だった。
「解き放たれた」とか「応えてくれた」とか、ガングニールNTR事件は上手い言い回しばかりだ。
こんな言い方をされると一連の流れも美談に思えてしまう。
減らず口の上手い映画をたくさん見ているんじゃないか?



さて、ウェル博士の操作によってフロンティアは高度を上げていくのだった。
元々は星間航行船がフロンティアである。
ならば、宇宙まで飛んでいくことも可能なのだろう。
また、壁を触るだけで操作可能と大分操作性がいい。
タッチパネルならぬタッチウォール。



「フロンティアの動力はネフィリムの心臓……」
「それを停止させればウェルの暴挙を止められる……」
「お願い――戦う資格のない私に変わって……お願い……ッ!」


マリアは歌で世界を救うこともできず、悪を貫くガングニールも失ってしまった。
ここに全てを喪失した。
だから、すがることしかできなかった。
すがることしかできずとも、ウェル博士を止めることを祈っていた。
マリアが救済を願う気持ちはかろうじてではあるが繋ぎ止めている。
あの時、響に止められなければその気持ちも崩れていたかもしれない。
奪われたのではない。解き放たれたのだ。



「調ちゃんにも頼まれてるんだ」
「マリアさんを助けてって」
「だから、心配しないでッ!」


そんなマリアを響は励ました。
もう敵も味方もない。
響は人助けをしたいだけであり、マリアはその対象なのだった。
困っているマリアを助けるためにここまで来たのだ。
だから、答えも決まっている。言われるまでもなかった。
16歳に励まされる(最低)20歳というのも、こう、マリアさんらしいというか何というか。



弦十郎はウェル博士を追うために床にパンチで穴を開ける。
冷静に考えるとおかしいが当たり前の光景にしか思えないのがおかしい。
第1期第11話でも天井をブチ抜いてフィーネさんの前に現れた。
あの時も同じように床をブチ抜いたのだろう。
さすがのOTONAパワーである。
やはり、前線にいる時の弦十郎の頼れる感は凄まじい。



「ウェル博士の追跡は俺たちに任せろ」
「だから、響君は――」

「ネフィリムの心臓を止めますッ!」


師弟の意志疎通は完璧だ。
聖遺物には聖遺物を、人間には人間という構図だ。
まぁ、ここにいる人間は聖遺物に勝てるけどな!
とはいえ、ウェル博士はフロンティアの構造を把握しているだろうし、その点で弦十郎たちの方が追跡に適しているのもあるだろう。
なお、風を読むとかそういうよくわからん理屈で追いかける。



「待ってて――」
「ちょーっと行ってくるから」


第1期第13話で月の破片を砕くために宇宙へ飛び立った時の台詞と同じだ。
シンフォギアは比較と対比の物語である。
だから、かつてと同じ言葉がまた使われた。
駆け抜けていく響をマリアはどこか寂しそうに見送る。
ついに訪れたガングニールの邂逅は劇的であれどいつまでも引っ張るものではなかった。
だが、その邂逅の意味は大きかった。
マリアにしてみれば本当の自分を体現しているような人物を出逢えたのだ。
響は嘘で塗り固めた今の自分とは正反対の存在である。
同時に互いに一生懸命であることに何の差異もない。
どこまでも違っているけど、どこまでも似た2人なのだ。



「もう遅れは取りませんッ!」
「だからッ!」

「ああ」
「一緒に戦うぞッ!」


響は翼とクリスと合流する。
「一緒に戦うぞ」という台詞も第1期第13話で用いられたものだ。
あの時と同じようにすれ違ったものの共に力を合わせる道を選んだ。
感動もひとしおである。



「やったね、クリスちゃんッ!」
「きっと取り戻して帰ってくると信じてたッ!」

「お、おう……たりめえだッ!」


そして、クリスに相変わらず無防備なまでの信頼を見せる。
こんな信頼を向けられればクリスもこう答えるしかない。
そして、こんな信頼を反故にするような真似をしたことを馬鹿馬鹿しく感じているかもしれない。
クリスも響には無防備だし、無防備同士のコンビだ。



「行くぞッ!」
「この場に槍と弓――そして、剣を携えているのは私たちだけだッ!」

ここで第1期第1話の奏の台詞のオマージュだ!
やはり、今の翼は奏の領域に踏み込んでいる。
先輩として後に続く者を支える心構えだ。
成長したものである。
あと地味に剣をもったいぶっている。ズルい。
奏は「槍と剣を携えている」と剣を後に回したんですけどね……



「ひとんちの庭を走り回る野良猫め」
「フロンティアを食らって同化したネフィリムの力を思い知るがいいッ!」

「何ッ!?」

「今更何が来たってッ!」


ここでウェル博士のとっておきたかったとっておきが出てくる。
フロンティアと同化したネフィリム!
あっさりとやられた中ボスくらいの印象しかなかったが、この土壇場で大ボスとして蘇るのか。
まるでWA:Fのベルセルクのような扱いだ(中盤でやられるがラスボス前に再登場と好待遇)。
せり上がった岩盤が形を取っていき――



「あの時の自立型完全聖遺物なのかッ!?」

完全体ネフィリムに変ただの怪獣じゃねえか!?
はい、出ましたよー。怪獣だよー。金子のおっさん大好きな怪獣だよー。
もうわかりやすいまでに怪獣ですね。
うむ、これである。これこそが金子彰史である。
何だかんだでボスが不在と思われたシンフォギアGであったが、怪獣が出てきては文句ない。
怪獣こそが日本人にとっての倒すべき敵だ! ならば、ボスの風格十分!



怪獣となったネフィリムは100000000000℃を放つ。
肉弾戦のみだった成長段階とは大違いだ。
さすが怪獣だ。
怪獣としか言いようがない攻撃方法である。
このどこか香る昭和臭がシンフォギアの魅力。
2013年に放映されているはずなんですけどねぇ……



「食らい尽くせ、僕の邪魔をする何もかもを」
「暴食の二つ名で呼ばれた力を――」
「示すんだ、ネフィリィイイイムッ!!」


(暴食のくせに火球を吐き出してばかりなのはともかく)男の子大好きな怪獣を操れて上機嫌なウェル博士である。
さすが、日本人だけのことはある。
でも、最近は海外もKAIJUを剣と携えているからナー。
ウェル博士は外人でもいいかもしれない。
ウェル博士が日本人か外人かはファンの間でも意見が分かれるトカ。



「私では何もできやしない」
「セレナの歌を、セレナの死を無駄なものにしてしまう」


さて、ついに全てを喪失したマリアは静かに涙する。
世界を救えなかった。
マムはクッキー星へ行った。
挙げ句、ガングニールが響に応えてしまった。
もう残金0ですよ。
どうしようもこうしようもないし、感情を昂ぶらせる気力さえもない。
高校生超(最低20歳)の絶望である。



「マリア姉さん」

「セレナッ!?」

「マリア姉さんがやりたいことは何?」


だが、ここでついにエアセレナの召喚だ!
翼が心折れそうな時にエア奏を召喚したように、マリアも心折れそうな時にエアセレナを召喚である。
思えばマリアはただ独りで使命を果たそうと戦ってきた。
切歌や調、ナスターシャ教授の力を借りられない状況に追い込んでいったし、今も独りで世界を救おうと奮闘して折られたばかりだ。
まさにカデンツァ、独奏の名の如く独り奏でようとしてきた。
それもこれもセレナの死を負い目と感じ、自分を追い込むばかりだったからか。
全てを失った今なら、セレナを題目に歌う理由さえもなくなった今なら、マリアは血涙したセレナ以外にも目を向けることができるのか。



「……歌で、世界を救いたい」
「月の落下がもたらす災厄からみんなを助けたい」


ついに、やっと、マリアはただの自分の願いを口にした。
今まではセレナの死に報いるためと歌う理由を自分以外に押しつけいた。
思い返せばまるでセレナを死に至らせたのだから、それ以外のために許されないと自分で自分に咎を押しつけてしまっているようでもある。
だが、本当の理由は自分の中にこそあった。
マリアがやりたかったのはただの人助けなのだ。
マリアは響と根の部分は何も変わらなかった。
困っている人たちを助けたいだけだった。
あと頬を染めているマリアさん可愛いっすね。飼いたい。



「生まれたままの感情を隠さないで」

「セレナ……」


セレナはマリアにもう嘘を付かなくていいと言う。
本気の嘘で自分を塗り固めてきたマリアにとってこの言葉はどれほどの意味があることか。
ただ計り知れない意味があることだけがわかる。
「生まれたままの感情を隠さないで」は言うまでもなく主題歌「Vitalization」の一節だ。
また、ここから「Vitalization」がマリアを歌った曲だとわかる。
嘘をつき傷付きながらも歌い続けるマリアの、本当の気持ちを歌ったものだったのだ。



ただの優しいマリアの本当の気持ちを歌った「Apple」だ!
本心を隠すために嘘で塗り固めた黒いガングニールで歌った「烈槍・ガングニール」ではない。
本当のマリアの優しい気持ちが溢れ出た「Apple」である。
「Apple」は「嘘や偽りのない、マリアの裸の気持ちを伝える歌」と設定で説明されている歌だ。
数少ない解説のある歌である(他は「恋の桶狭間」とか)。




嘘のないただの優しいマリアの歌に世界が共鳴していく。
マリアは世界にその歌を響かせたアーティストである。
それは偽らないマリアの歌に誰の心にも届く優しさがあったからではないのか。
だからこそ、世界にマリアの歌が愛されたのではないか。
歌を愛するマリアだからこそ持ち合わせた力と優しさはみんなの心に届くのだ。
嘘を付かないマリアの魅力とそれに心を振るわせる姿は第1話で既に描かれている。
マリアはあの頃に戻っただけであり、それがどれほど辛い道のりだったか。

マリアの歌に心を振るわせる人々の姿にはトニー、第1期で響に助けられた親子、ふらわーのおばちゃん、担任の先生がいる。
今わかる……みんなの心がひとつになっていく……
月を起動させるのは一人じゃない!



だから、感動的な場面で笑わせるのは止めろぉ!
何でウケを狙ってくるんですかね!
ここに来て第1話の伏線を無駄に活かしてきやがった……!
ま、まぁ、思わず落涙するほどのマリアの歌が蘇ったということですよ。
マリアさん、完全復活だ!



だが、如何にマリアの歌が世界を動かそうと、肝心要のマムは生存が絶望的な状況だ。
耐Gへの充分な準備がなく、施設の構造は脆弱、トドメには生身で重篤なナスターシャ教授と何重にも絶望的な状況が重なっている。
歌があってもそれを月に届かせる者がいなければ意味がない。
ナスターシャ教授が命を落としてしまっては意味が――



だから、感動的な場面で笑わせるのは止めろってぇ!
車いすと合体するという発想はなかったよ!
あってはいけなかったよ!
用語集であそこまで追記したのは生身じゃなければ何とか助かるということかよ!
絶対おもしろがってつけただろ、この描写ぁ!
面白いと感じてしまえば例えどんなコーナーだろうと悪路だろうと下り坂だろうとアクセルを踏み込むしかない。ブレーキなんて何のその。
これこそが金子彰史である。
要するにバカ。ホントのバカ。だからこそ、価値がある。



「世界中のフォニックゲインがフロンティアを経由してここに収束している」
「これだけのフォニックゲインを照射すれば
月の遺跡を再起動させ公転軌道の修正も可能……ッ!」


いかに車いすと合体しても血涙を流すほどのダメージを受けたことには変わりない。
それでも月軌道の修正、F.I.S.が目指した世界を救うという目標は目の前まで迫っている。
貫いた悪は嘘ではあれど無意味なものではなく、その一生懸命は世界を救おうとしているのだ。



「マリア――マリアッ!」

「マムッ!」

「あなたの歌に世界が共鳴しています」
「これだけフォニックゲインが高まれば月の遺跡を稼働させるには十分です」
「月は私が責任を持って止めますッ!」


瀕死の致命傷なナスターシャ教授も本懐のためなら命を燃やし尽くす覚悟を見せる。
今まで見せ場はなく、妙な笑いどころを(ついさっきまで)提供していたナスターシャ教授だったが、ここに来て意地を見せる。



「もう何もあなたを縛るモノはありません」
「行きなさい、マリア」
「行って私にあなたの歌を聴かせなさい」

「マム……」


マリアは世界を月の落下から救うという目的からも解き放たれた。
喪失したのではない。解き放たれたのだ。
マリアの背中を押したのは今までマリアに重責を強いてきたナスターシャ教授ではなく、
マリアのやりたいことを支えて応援してあげるナスターシャ教授だ。
これにてマリアは本当に何もかもを失ってしまった。
何もかもを失ってしまったからこそ、もう残されたものは裸のマリアだけだ。
そして、何も持たなくても走り抜けようとした響の姿をマリアは見ている。



「OK――マム」
「世界最高のステージの幕を開けましょうッ!!」


だからこそ、嘘のない自分の一生懸命を届けるために立ち上がる!
マリアの格好良さが圧倒的な勢いでオーバーフローを起こしている。
この台詞は第1話の言動を原型としている。
あの時が「世界最後のステージ」なら今回は「世界最高のステージ」だ。
この先にあるのは嘘をつくための戦いやそのために誰かを傷付ける戦いでもなく、自分の一生懸命をぶつけて人助けをする戦いだ。
響と同じステージに立つ時が来たのだ。
ならば、世界最高に他ならない。




さて、響たちは怪獣ネフィリムドンに攻撃を加えるが手応えがない。
カ・ディンギル跡地戦とは異なり、巨大化しているにそれに伴って戦闘力も上がっているようだ。
さすが、怪獣である。
簡単に怪獣が倒せたらウルトラマンなんていりませんよ。



「なら、全部乗せだッ!!」

怪獣に対してクリスはフルバーストで対抗する。
やったか!という表情である。
こういうのはほぼ全てがやってない!ものである。




当然、やってなかった。
クリスは100000000000℃の反撃を食らい、翼も防戦を余儀なくされる。
そして、触手のように蠢く腕部に響は狙われる。
ラギュ・オ・ラギュラの自律思考付き触手テンタクラーヘッドのような攻撃だ。
そういえば、微妙にラギュ様っぽいような……はは、まさか……




「デェエスッ!」

そこに切歌が「断殺・邪刃ウォttKKK」で、調が「非常Σ式・禁月輪」で割り込み響を助ける!
二つとも命中していない必殺技だが今回は無事命中だ!
特に「断殺・邪刃ウォttKKK」はネフィリムの腕を両断するほどの破壊力である。
これ、まともに食らっていたら翼も真っ二つでグロ画像だった。
危ない危ない。



「シュルシャガナと」

「イガリマ到着デスッ!」

「来てくれたんだッ!」


最高のタイミングで助っ人がやってきた。
今まで相争うばかりだった敵が今は戦場で絆を共にする仲間になった!
――さ ぁ ふ る え る が い い



「とはいえ、コイツを相手にするのはけっこう骨が折れそうデスよ」

まぁ、怪獣ですからね。
F.I.S.のトレーニングを見るにあくまでもノイズ前提のものだ。
怪獣用のトレーニングなんて積んでいないことだろう。
ウェル博士が英雄を目指しているなら怪獣用トレーニングがあっても良かったのに。
それじゃ装者が英雄になるからダウトか?
その辺、二課はモンスターパニック系映画も観ているだろうし万全か。



「――だけど、歌があるッ!!」

窮地に訪れたのは切歌と調だけではない。
マリアもだ!
歌がある。ならば、相手が怪獣だろうと怖じる必要はないのだ。
歌の持つ可能性は散々見せつけられている。
もはや、これだけで十分な理由となっている。



で、マリアさん、生身なのにどうやってこの岩の上に来たんですかねぇ!
勢いがシンフォギアの心情なのだからこんなこと誤差の範囲内だが。
格好良ければ何でも許されるのだ。



「マリアさんッ!」

「もう迷わない」
「だって、マムが命がけで月の落下を阻止してくれている」


ここで本当の「もう迷わない」だ。
第8話の「もう迷わない」の後は凹みっぱなしだが今度は違う。
同じ台詞だが以前は現実から目を逸らすため、今度は現実を生き抜くためだ。
様々な過程を経てたしかな決意がある「もう迷わない」へと変化した。




「出来損ないどもが集まったところでこちらの優位は動かないッ!」
「焼き尽くせッ! ネフィリィイイイムッ!!」


目が赤く発光してやる気満々のウェル博士だ。
そして、100000000000℃!
爆炎に装者6人は包まれるのだが――




「――んあッ!?」

ここでマリアが聖詠だ!
嘘で塗り固めるためのガングニールではなく、セレナが遺してマリアが継いだ壊れた聖遺物のペンダントによる聖詠である。
その聖詠のフレーズには「アガートラーム」が使われている。
ついに、ついにWAシリーズのリーサルウェポンアガートラームの出番である。
1人で抜くことができないアガートラームこそ最後の聖遺物に相応しくマリアに相応しい。




(調がいる)
(切歌がいる)
(マムもセレナもついている)
(みんながいるならこれくらいの奇跡――)

「――安いものッ!!」

適合係数が低い。
聖遺物のペンダントは壊れている。
道理が幾多にもマリアを遮る。
だが、もうマリアが独り奏でることはない。
みんながいるならこれくらいの奇跡は安いものだ!
アガートラームは英雄一人の力で抜くものでは、ないッ!!

その想いを連ねた6人の歌、「始まりの歌(バベル)」が歌われる。
聖詠だけでメロディを紡いだまさにシンフォギアな歌である。
みんなの心をひとつにした象徴とも言える。
聖詠を繋げることで1曲になることは推測されていた。
だが、本編であえてやるとは!
歌も全力なシンフォギアの魂が込められている。



「装着時のエネルギーをバリアフィールドにッ!?」
「だが、そんな芸当ッ!」
「いつまでも続くものではなぁぁあいッ!!」


それでもさらに100000000000℃だ!
さすがのエネルギー量である。
デュランダルとは何だったのか。
扱いはデュランダルの方が数倍楽そうではあるけれど。




「S2CAッ!!」
「フォニックゲインを力に変えてェェェッ!!」


それをS2CAで迎撃だ!
絶唱を束ねるS2CAは今も健在だ。
それはつまり、響はただの適合者ではないということなのか?
ともあれ、手を繋がずともS2CAを使える圧倒的なフォニックゲインがあることがわかる。
アガートラームですから10年来の金子信者のフォニックゲインもヤバいことになっています。





「引かれ合う音色に理由なんていらない」

「あたしもつける薬がないな」

「それはお互い様デスよ」

「調ちゃんッ! 切歌ちゃんッ!」


そして、皆で手を繋ぐ!
すれ違い続けてきた装者たちがついに心をひとつにした。
シンフォギアGはすれ違いが第1期以上に強調されてきた。
それだけについに心をひとつに合わせた時の感動も大きい。



「あなたやってること、偽善でないと信じたい」
「だから、近くでわたしに見せて」
「あなたの言う人助けを、わたしたちに」


対立した調も響の想いを信じている。
「わたし」と1度言ってから「わたしたち」と言い換えている。
それはF.I.S.に人助けを見せて欲しいのか、あるいはフィーネさんにか。



(繋いだ手だけが、紡ぐモノ――)

繋がる絆をマリアは感じる。
マリアさん、ずっと一人だったから……
けれど、今はもう一人ではない。
しかし、推定20歳以上が一人で孤独というのも微妙にリアルだ。
大学入学と共に都市部へ出向いて、友達ができなかった人ですか?



「絶唱6人分ッ!」
「たかだか6人ぽっちですっかりその気かァアッ!?」


今のウェル博士は絶唱6人分を嘲笑うほどであった。
絶唱3人分でも十分凄まじかったのに……
インフレをまったく恐れていない。
いんだよ、細けぇことは!




「6人じゃない……ッ!」
「わたしが束ねるこの歌は――70億の絶唱ォオオオッ!!」


だが、絶唱は一人で歌うものでもなければ6人だけで歌うものでもない。
世界中の想いを連ねているのだ。
だからこそ、70億の絶唱!
圧倒的なまでの絶唱だ。
これなら100000000000℃に対抗できる!





そして、今再びXD(エクスドライブ)モード! アガートラームのシンフォギアも再誕だ!
翼さんの脚部ブレードが凄いことになっている。
この人、こんなに逆羅刹が好きなのか?
多分、スタッフが逆羅刹を好き。
また、アガートラームのシンフォギアはセレナのシンフォギアのデザインに酷似している。
あの時点でセレナはXDモードになっていたということか。
類い希なる適合係数の持ち主だけのことはある。
しかし、ぱつんぱつんっすね、マリアさん。その辺のアピールは欠かさない人だ。





「響き合うみんなの音色がくれた――」
「シンフォギアでェェェェエエエッ!!」


フィーネさんの死闘を終わらせた「Synchrogazer」の時と同じ台詞で突撃!
6人だけじゃない。
70億の絶唱!
ネフィリムもこれには敵わず倒される。
心も力も一つに合わせたのだから、一人の想いだけで動いているネフィリムが敗北するのは道理である。



戦姫絶唱シンフォギアG完ッ!
だが、ここまででAパート。
相変わらずシンフォギアの最終回は圧倒的な内容だ!



「何だと……」

「ウェル博士ッ!」
「お前の手には世界は大きすぎたようだなッ!」


ついにウェル博士は追い詰められる。
目の前にいるのはOTONAとNINJAだ。
もう詰みですね。どうしようもない。
フィーネさんも為す術なくやられてしまいそうなくらいに絶望的だ。




それでも諦めないウェル博士は端末に触れようとする。
そこで緒川さんのオリジナル版影縫いだ!
銃弾で縫い止める現代忍法(なんじゃそりゃ)である。
装者でなく生身でしかも男でカットインという大盤振る舞いである。
さすがの影縫いだ。
影縫いは要所要所の見せ場で輝いている。
なお、弾丸は山なりの軌道を描いている。
捻りながら打ち出したのでこういう軌道になるに決まっている。



「奇跡が一生懸命の報酬なら――」
「僕にこそ――ッ!!」


それでも諦めない。
血涙を流しながらウェル博士もまた「一生懸命」で影縫いを破る。
「奇跡は一生懸命の報酬」はWA3のラストを飾った台詞である。
アンタの一生懸命はロクなことにならんから止めて差し上げろ。
だが、ウェル博士も全力だったからこそ、ある意味で理想的な結果になろうともしている。
お前はハートキャッチプリキュアのライバルか。




「何をしたッ!」

「ただ一言ッ!」
「ネフィリムの心臓を切り離せと命じただけッ!」
「こちらの制御から離れたネフィリムの心臓はフロンティアの船体を食らい、
糧として暴走を開始するッ!」
「そこから放たれるエネルギーは1000000000000℃だァッ!!」


そして、ついに1000000000000℃のフレーズが用いられた!
WAシリーズにおける常用単語である(除くWA1。WA1では設定だけだった。技名も「1000000000000℃」ではなく「ヴォルカニックボム」)。
その1000000000000℃で自爆が狙いだった。
現実に1000000000000℃を引き起こそうものならその時点で地球は崩壊するらしい。
その辺、リアルな描写と言えなくもない。



「僕が英雄になれない世界なんて蒸発してしまえば――」
「うわぁッ!?」


血涙に加えて1000000000000℃である。
ウェル博士はシンフォギアとWAシリーズを象徴する事柄2つを同時に満たした。
嬉しそうで楽しそうなのも道理だ。
天和と国士無双を同時に満たしたようなもんですよ。
そんなウェル博士の暴挙を前に弦十郎はとりあえず端末を壊す。
とりあえず壊す。



「壊してどうにかなる状況ではなさそうですね」

これは端末を壊してということか、あるいはネフィリムの心臓を壊してということか。
さすがに1000000000000℃となればOTONAでも壊せないか。
でも、やろうと思えばやれそうだなー。
発勁で熱をかき消すとか。



「確保だなんて悠長なことを……」
「僕を殺せば簡単なことを――」
「うひぃいいいッ!?」


さて、ウェル博士は捕まる。
左腕は元に戻っている。
どうやら気力を使い果たしてLiNKERの効果も切れたらしい。
何か言動がメチャクチャになっている。
完全復活したマリアとは異なり完全に糸が切れたらしい。
そんな折りに巨大な岩が降ってくる。ジープ以上のサイズだ! アブナイサプライズ!



「おおおおぉおおぉおおおおッ!!」

まぁ、弦十郎がいれば小石同然なのだが。
さすが完全聖遺物を打ち砕いた男だ。
そして、ジープを運転する緒川さんは一切避ける気ゼロだ。
圧倒的な信頼ですね。
もちろん、見ているこちらとしてもこんな小石程度でどうにかなると思っていない。



「殺しはしない」
「お前を――世界を滅ぼしたした悪魔にも理想に殉じた英雄にもさせはしない」
「どこにでもいるただの人間として裁いてやるッ!!」


英雄を望んだ悪魔にも英雄にもさせない。
ただの人間として裁くのがウェル博士に与える罰だった。
シンフォギアGになって弦十郎の超絶アクションは少なくなったと言わざるを得ない。
だが、司令という立場での輝きはより見せるようになった。
弦十郎にも揺るぎなく貫く想いがある。
だからこそ、二課の皆も自分の想いを貫けるのだろう。



「チクショウッ!」
「僕を殺せッ!
「英雄にしてくれッ!」
「英雄にしてくれよぉおおッ!!」


(精神的にも物理的にも)ただの人間だと思い知らされたウェル博士は吠える。
英雄に憧れた男は英雄になれず、ただの人間として終わるのだった。
そして、それこそがウェル博士に与える最大の罰となるのは間違いない。
ウェル博士は決して器は大きくはないが、ブレずに悪役としての役割を果たしたのだった。



さて、ネフィリムがフロンティアを取り込み始める。
むしろ、フロンティアが溶けていく。
さすが、1000000000000℃の炎を持つだけのことはある。
空を飛べる装者たちはともかく、潜水艦で取り残された二課はどうするのか。



「藤尭ッ! 出番だッ!!」

「忙しすぎですよッ!」

「ぼやかないでッ!!」


ここでまさか藤尭に出番だ!
ついにやっと初めて名前で呼ばれた!
シンフォギアGの藤尭は地味に良い仕事を続けている。
思い返せば第1期も月の欠片の軌道を即座に計算していた。
優秀な裏方仕事役だ。



さて、脱出方法は地盤をミサイルで破壊! 自由落下!
……何と力任せな。
そう見えても膨大な計算が必要なことは間違いない。
藤尭の見えない活躍があっての脱出劇である。
褒めろ。たくさん褒めろ。



「あれを見ろッ!」
「あれが、司令の言っていた――」

「再生する、ネフィリムの心臓――」


ネフィリムの再誕は止められず成層圏で形を取っていく。
フロンティアには聖遺物が大層使われているのは間違いない。
それをフロンティアが丸ごと取り込むということは、つまりネフィリムの力が十全に発揮されるということだ。
十分に怪獣だったのだから、1000000000000℃にもなると――



ただのラギュ・オ・ラギュラじゃねえかァ!?
やったー! ついにやったー!
シンフォギアにもラギュ様登場です!
始まりと終わりを司る百魔獣の王の登場です!
ネフィリムだけどただのラギュ・オ・ラギュラ、本当にありがとうございます!
こりゃあ1000000000000℃だよ!
なお、人によってはゼットンにもなりますがそれもまた正解の一つとなります。



ネフィリムもといラギュ・オ・ラギュラを前にまずは切歌と調が動く。
ここは俺に任せてもらおうかと言わんばかりだ。
ちょっと噛ませ犬臭い。




まずは調からだ。
アームユニットやレッグユニットが分離、変形、(何故か)巨大化、そして合体、最後にパイルダーオン!
ザンスカール帝国かと思ったら突然スーパーロボットになった。
こういうことを怒濤の勢いでやはりシンフォギアは恐ろしい。



スーパーロボットに乗り込む必殺技が「終Ω式・ディストピア」!
最後の最後でヤケクソ気味だ!
いつだってシンフォギアはヤケクソだ!
パーツのところどころにノコギリが見えるのがシュルシャガナらしさを出している。
あとおっぱいデカいっすね。
深層心理ですか?



切歌は巨大な3連鎌をブン回す「終虐・Ne破aァ乱怒」で仕る。
読み方は「しゅうぎゃく・ネバーランド」か。
ハッタリを効かせているけどスーパーロボットになった調と比べるとさすがに地味ですね。
切歌が鎌を振り回すのは第1話でクリスの射撃を防いだ技と酷似している。
強化技にしてアレンジ技なのだろうか。



一閃だ。
XDモードの出力はラギュ・オ・ラギュラ(最大HPは大きい時で999999)に通じるのか?
ここでファイネストアーツ一発死だったらWA4オマージュ。




「聖遺物どころか、そのエネルギーまでも食らっているのかッ!」

「臨界に達したら地上は――」

「蒸発しちゃうッ!」


だが、攻撃した側の切歌と調がダメージを受ける。
今のネフィリムはエネルギーそのものを食らう。
神獣鏡(シェンショウジン)のような聖遺物キラーだ。
まさに最強最大にして最凶の怪獣に相応しい能力である。
そりゃあウルトラマンだって負けるよ。




「バビロニア――」
「フルオープンだァッ!!」

「バビロニアの宝物庫をッ!」

「XDの出力でソロモンの杖を機能拡張したのかッ!」

「バビロニアの宝物庫にネフィリムを格納できればッ!」

「人を殺すだけじゃないってッ!」
「やってみせろよ――ソロモォォォオオオンッ!!」


力で対抗することが難しいと悟ると、クリスはソロモンの杖を使ってバビロニアの宝物庫そのものを開く。
ネフィリムをバビロニアの宝物庫にぶち込む作戦だ。
ソロモンの杖を初めてノイズを呼び出すこと以外に使った。
力そのものに善悪はない、というのがWAシリーズに共通する思考である。
同じようにソロモンの杖もノイズを呼び出すために使うだけではなかった。
ソロモンの杖の見せ場がこんな形で現れようとは!



が、クリスはラギュ・オ・ラギュラのジャイアントインパクトによって吹き飛ばされる。
ソロモンの杖も弾き飛ばされた。
バビロニア宝物庫ぶち込み作戦、失敗か?



「明日をォォォオオオオオッ!!」

ここでチャンスを逃さずいい働きを見せるのがマリアである。
神獣鏡の輝きを束ねフロンティアの起動に繋げただけのことはある。
目立ちにくいが極めて優秀なのだ。
でも、その優秀さってどちらかと言うと裏方としての優秀さなんですけどね。
だが、明日を掴み取るその格好良さの前にはそんなものは無粋だ!




「格納後、私が内部よりゲートを閉じるッ!」
「ネフィリムは私がッ!」

「自分を犠牲にする気デスかッ!」

「マリアぁッ!!」


だが、ラギュ・オ・ラギュラの触手に捉えられπ/をやることになってしまう。
ならば、犠牲にしてでもラギュ・オ・ラギュラを封じ込める覚悟を見せる。
今のマリアに迷いはない。
散ることにも迷いはないのだろうか。



「こんなことで私の罪が償えるはずがない」
「だけど、全ての命は私が守ってみせる」


F.I.S.の決起によって結果ではあるが命を散らせた人間は多い。
米国兵士、スカイタワーの客、艦隊の兵士たち、そしてチャリンコジャリガキ野球部……
世界を守り犠牲に報いるために散ることにも澱みない。




「それじゃ、マリアさんの命はわたしたちが守ってみせますね」

「あなたたち――……」


そんなマリアを支えるために響たちが寄り添う。
マリアが世界を守るなら、響たちはマリアを守る。
ウェル博士が英雄になろうとしたなら、響たちは英雄ではない者として世界を救おうとしている。
英雄でない者だからこそ、その手に零さず掴める世界がある。



さて、本邦初公開のバビロニアの宝物庫です。
ノイズさんオールスターである。
みんな勢揃いだ。レアな増殖型や気球型もいるぞ。
そして、やっぱり出てくる言葉はほのぼのである。
さすがのノイズさんだよ。ただただ漂っているばかりだから、そりゃあ人の温もりが欲しくなるよね。





「英雄でないわたしに世界なんて守れやしない」
「でも、わたしたち――わたしたちはひとりじゃないんだ……ッ!!」


たしかに響は聖遺物に選ばれた英雄なんかじゃない。
響たちの生きる世界は、大切なファルガ……げふんげふん……
地球は英雄なんかの力で支えれるほどちっぽけなものではない。
たくさんの命が生きて同じ数の想いが行き交う世界なのだから、世界を支える力はファルガイ……げふんげふん……
地球に生きる全ての歌の力に他ならない。
誰もが心をひとつにして立ち上がることができたなら英雄なんて生け贄にすがらなくても世界を支えていけるッ!
だからこそ、皆でラギュ・オ・ラギュラに挑むのだ。
その想いを受け取ったマリアは静かに笑う。
一蓮托生の構えである。
マリアがもう独り奏でることはないのだ。



「響ぃッ!!」

こうして響たちはラギュ・オ・ラギュラ諸共バビロニアの宝物庫に呑み込まれていく。
こうして地球は救われた。
だが、響たちの真の戦いはここからだ。
陽だまりに帰るための戦いが今ここに始まる。



さて、自由落下じゃ不味いので分離することにします。
ブリッジ分離! そして、パラシュート!
何で潜水艦にこんな機能を用意しているんだ?
こんなこともあろうかと用意していたとしか思えない。
潜水艦なんて大規模なものは二課本部がおしゃかになってからたった3ヶ月で作れない。
おそらくはそれ以前から建造、二課の戦力として用いることが考えられていたのだろう。
これも了子が遺した置き土産の一つなのだろうか……



「フォニックゲイン照射継続……」
「月遺跡、バラルの咒詛――管制装置の再起動を確認……」
「月起動のアジャストを開始……」


一方でナスターシャ教授はバラルの咒詛を起動させることで、月軌道の修正を完了――
迷って寄り道をしたがついにF.I.S.はその本懐を成し遂げた。
ついに世界を守り切った。
こと月の落下を防ぐという点において、二課は直接的な関与をしていない。
もちろん、その屋台裏には多大に関わっているが、月の落下を防ぐ点に関してはF.I.S.だけの力で為したと言ってもおかしくはない。
そして、これは世界に届くマリアの歌と聖遺物の知識を持つナスターシャ教授でなければできなかったことだ。
F.I.S.の戦いは無駄ではなかったのだ。



「星が……音楽と、なって――……」

本懐を遂げて気力が尽きたのか、ついにナスターシャ教授は倒れる。
けれど、それはどこまでも満足げだった。
マリアの歌を聴き、世界を救うことができた。
そして、ウェル博士がナスターシャ教授を射出しなければマムの作業は途中で中断していた。
ナスターシャ教授の一生懸命は奇跡を起こしたのだ。
死で最期を締めくくることになったのは悲しいが、悔いはないだろう……




「イッけェェェェエエエエエッ!!」

そして、バビロニアの宝物庫で「Vitalization」をBGMとしての最終決戦が始まる。
響はついに槍を手にし、翼は逆羅刹・滅破(仮称)で薙ぎ払い、クリスは復活のミーティアでフルバーストだ!
ノイズをどんどんと薙ぎ払っていく。



「調ッ!」
「まだデスかッ!」

「もう少し……ッ!!」


一方、切歌と調はラギュ・オ・ラギュラと戦いながらマリアを助けようとする。
なお、マリアを助けた時点でシラベンガーGは壊れてしまう。
儚い人生であった。
まぁ、最終決戦で愛機が壊れるのはカタルシスのひとつだ。
ガンダムSEED DESTINYを思い出すのは止めて差し上げろ。




「マリアさんはその杖でもう1度宝物庫を開くことに集中してくださいッ!」

「外から開くなら中から開けることだってできるはずだッ!」

「鍵なんだよ、そいつはッ!」


響たちはノイズを蹴散らしながらマリアに鍵を託す。
かつての敵だったのに全面の信頼を置いている。
そして、マリアは繋いで紡がれた絆のためにもその信頼に応えねばなるまい。



「セレナァァァァアアアアッ!!」

あ、でも、セレナなんだ! 本当にセレナ好きだな、マリア姉さん!
だが、愛ッ! ですよッ!
マリアのセレナLOVEでゲートは開かれる。
セレナ、凄いな。さすがデスよ。



だが、ラギュ・オ・ラギュラが響たちを遮る。
さすがの隠しボスだ。
ゲームクリアのためには倒さなくてもいい。
でも、倒さないと気が済まない。
これぞラギュ・オ・ラギュラ!




「迂回路はなさそうだッ!」

「ならば往く道は一つッ!」

「手を繋ごうッ!!」


ならば、S2CAだ!
手を繋ぐことに恐れも迷いもない。
みんなの心はひとつだ。



「マリア」

「マリアさんッ!」


そして、マリアにも手を差し伸べる。
もうマリアは独りではないのだ。
誰かと繋ぐ手を持っているし、繋ぎたい心に嘘も付かない。




「この手――」
「簡単には離さないッ!」


胸の歌、アガートラームのアームドギアを取り出し、手を繋ぐ!
ついに繋いだ手を離さないと叫んだ。
溜めて溜めて溜めてきただけにマリアの輝きがヤバい。
第1話が全盛期? 賞味期限は第4話!
マリアの一番輝いている時は今この時だ!



「「最速でッ!」」
「「最短でッ!!」」
「「真っ直ぐにッ!!!」」


響とマリア、どこまでも似ている2人がついに同じ輝きを胸に手を繋ぎ合った。
最速で! 最短で! 真っ直ぐに!
2人の同じ一生懸命がついにひとつになった!
共に過ごした時間などなく、邂逅も瞬く間に終わったが、それでも2人の意志は同じものなのだ。




2人のシンフォギアのパーツが分離、パーツは巨大な手に変化していく。
もちろん、アガートラームは銀の左腕だ!
シンフォギアとWAシリーズ、金子彰史の全てが結集していく。
それを彩るのが圧倒的な歌である。
これはもう熱いというレベルじゃない。
これこそが1000000000000℃だ!



そして、ガングニールとアガートラームが手を繋ぐ!
ヘルアンドヘブンだ!






「「一直線にィィイイイイイッ!!!」」
「「「「「「うおおおおおおおぉぉおおおおぉぉおおッ!!」」」」」」


装者全員の心と力が一つに合わさった「Vi†aliza†ion」がラギュ・オ・ラギュラを貫いた!
ついにラギュ・オ・ラギュラを討ち倒した。
圧倒的な強敵であったが一つに合わさった装者たちには敵わなかった。
でも、ラギュ・オ・ラギュラ戦でコンビネーションアーツがダメージソースになるシリーズはないけど。



「Vi†aliza†ion」でラギュ・オ・ラギュラを貫き元の世界へと帰還する。
だが、ソロモンの杖を手放してしまう。
そして、バビロニアの宝物庫は開いたままだ。
このままではノイズが溢れ出す以前に1000000000000℃に巻き込まれてしまう。





「杖が……ッ!」
「すぐにゲートを閉じなければ間もなくネフィリムの爆発が……ッ!!」

「まだだ……ッ!」

「心強い仲間は他にも……ッ!!」

「仲間……ッ!?」

「わたしの――親友だよ」


ダメージは大きく皆立ち上がれない。
しかし、クリスと翼は仲間を信じていた。
そして、未来が駆けつけた。
皆の帰りを誰よりも待っていたのだ。
ならば、それを迎える準備も万全!



(ギアだけが戦う力じゃないって響が教えてくれたッ!)
「私だって戦うんだッ!!」
「お願いッ!」
「閉じてェェェエエッ!!」


猛ダッシュしてソロモンの杖をバビロニアの宝物庫へと投げる!
未来さん超すげえ!
砂浜をダッシュする脚力、脅威の遠投力と常人離れどころか人間離れしていると言っても差し支えない。
アンタの身体能力、どうなっているんだ?

だが、これは何一つ不自然な描写ではない。
設定で保証された極めて自然な描写なのだ。
そう、未来は陸上部である。
未来が陸上部であるという設定をこういう形で回収するとは!
付け加えるならシンフォギア独特の異常な傾斜によって足腰が鍛え上げられたと推測もできる。
これには唸らざるを得ない。
陸上部というよりもRIKUJYO部の気がするけど。







「もう響が、誰もが戦わなくていいような――」
「世界に――ッ!!」


未来のYARINAGEによってバビロニアの宝物庫は閉じ、1000000000000℃の爆発によって世界は滅ぶことはなかった。
こうして、世界は救われた。
だが、誰か一人の力によるものではなく、みんなの力を合わせたものだ。
そして、それを締めたのは装者ではないただの人間(でも、陸上部)の未来の手によるものだった。
本当に困った時に助けてくれた。
戦う力を持たなくても戦える、助けられるのだ。



「間違っている」
「英雄を必要としない世界なんて……」


さて、ウェル博士は老けていました。
やっていることがやっていることだし、言い訳無用だ。
そして、人間として裁かれることになった。
罪を背負い裁かれる最後を迎える金子彰史悪役は存外初めてではないだろうか。
みんな、華々しく散っていったし。



「月の軌道は正常値へと近付きつつあります」
「ですが、ナスターシャ教授との連絡は……」


月の落下を防げたことが正式に報告される。
だが、ナスターシャ教授との連絡はなし。
状況が状況だ。病がなくとも生存は絶望的である。
弦十郎はその報告に悲しげな表情を見せる。
傷付いた身体を厭わず自らの身を犠牲にして世界のために戦い散った。
ナスターシャ教授こそ英雄と呼べる人物かもしれない。
ナスターシャという名前も英雄らしい。
何せアナスタシアの愛称がナスターシャなのだから……



(マムが未来を繋げてくれた……)
「ありがとう」
「お母さん」


壊れた聖遺物で戦うという奇跡を果たした代償か、アガートラームの聖遺物は完全に壊れていた。
ナスターシャ教授も失ってしまった。
それでもマリアは泣かずに微笑みを空へ向ける。
ナスターシャ教授はマリアに泣いてもらうではなく笑って歌ってもらうために命を燃やしたのだ。
ここで泣いては格好付かない。

そして、向けたお母さんという言葉の意味や如何に。
母親のような存在に向けた言葉なのか、本当に血が繋がっているのか。
ただわかることはマリアのナスターシャ教授への気持ちが込められていることだ。




「マリアさん――」

「ガングニールは、君にこそ相応しい」


響は自分に応えてくれたガングニールを返そうとするが、マリアはそれを響に託す。
奏から、そしてマリアから響はガングニールを継承した。
継承したのは力だけでなく生き様もだろう。
マリアが見せた一生懸命は響にも届いたに違いあるまい。

マリアが響を呼ぶ時に「あなた」から「君」に変わっている。
親しみを感じられる。
心を許した友としての言葉なのか。
格好良いですね、この人。正直、一番格好良いわ、セレナ。



「だが、月の遺跡を再起動させてしまった……」

「バラルの咒詛か」

「人類の相互理解はまた遠のいたってわけか」


人類は絶滅から逃れたわけだが、バラルの咒詛が再起動するという問題は抱えている。
世界は救ってもそれで全てが解決するわけではないのが金子彰史作品の伝統だ。
ファルガイアの荒野化は止まることなく、シンフォギガイア(今考えた)では人々の相互理解を阻む存在は絶えない。
月の落下を防ぐことと引き替えに相互理解は遠のいたのだ。
マリアの歌が世界に響いたのもバラルの咒詛の影響が軽減したからだろう。
世界が一つに繋がったという相互理解の象徴も一瞬だけの奇跡に違いない。
世界の心をひとつにアガートラームを抜いたWA2も、本編終了後に争いが起きているのだ。




「へいき、へっちゃらです」
「だって、この世界には歌があるんですよッ!」


だけど、この世界には歌がある。
歌があるからこそ一つになれたし力になった。
そして、歌の持つ力を全力でぶつけてきたのがシンフォギアだ。
ならば、世界に歌があるという言葉を疑う必要はない。
歌があるからへいき、へっちゃら。



「――いつか人は繋がれる」
「だけど、それはどこかの場所でも、いつかの未来でもない」
「たしかに、伝えたから」


その言葉を受けて調はフィーネさんから託された言葉を伝えた。
だが、その内容は異なる。
バラルの咒詛があっても人は繋がる手を持つというたしかな事実を、響を認めた言葉だ。
それはフィーネさんの言葉でもあり調の言葉なのだろう。



「立花響」
「君に出逢えて良かった――」


マリアは響に最大のリスペクトを向ける。
真っ直ぐな響と出逢って、マリアは自分の本当の気持ちに気付いて真っ直ぐに自分を貫くことができた。
それはマリアにとってただ気付くだけのことであり、同時にそれが何よりも困難な道のりだった。
響もマリアも全てを失ったことでやっと出逢えてわかり合えた。
2人が出逢えたことに意味があれば、出逢えなかったことにも意味があった。
シンフォギアGは2つのガングニールが邂逅する物語なのだ。



そして、F.I.S.の3人は去って行く。
3人共、悪に手を染めたことは変わらない。
この先どうなるのかはわからない。
ただ複雑を極めるシンフォギアの世情では容易く未来へ歩むことはできないのは間違いない。
それでも暗い未来があるとは思いにくい。
困難があっても負けないたしかな心と絆を手にしたのだ。
だから、寂しい別れであっても暗い別れではない。



さて、響たちは日常に回帰する。
無事に日常に戻れて良かったですね。
全世界全裸ライブをやってどうなるかと思ったがどうにかなったようだ。
どうしたんだろう。
歌があるから何とかなったか?



「聞いてくれ立花」
「あれ以来、雪音が私のことを先輩と呼んでくれないのだ」

「だからぁッ!」


で、翼は拗ねていた!
シンフォギアGで初めて可愛らしいところを見せた。
もう手遅れです。アンタ、手遅れです。
クリスと一緒に登校しているようだから、やはり風鳴家の居候なのだろうか。
OTONAがいて、汚部屋がいて、汚食事をしている……
今、風鳴家が熱い、かも。




「なになにぃ?」
「クリスちゃんってば翼さんのことを先輩って呼んでるの?」

「いい機会だから教えてやる」
「あたしはお前より年上で先輩だってことをッ!」


響とクリスがじゃれ合う。
平和な学園生活でありきたりな学園生活である。
しかし、クリス先輩だったんですね。
作中世界でも自覚がなかったようだ。
良心と言える未来がクリスを呼び捨てにしているくらいだから仕方あるまい。



「ねえ、響」
「身体、平気?」
「おかしくない?」


さて、より仲良くなった反動か、堂々と腕を抱く。
より百合百合しくなりましたね。
背景のモブも2人1組ですしここはレズ養成学校ですか?
……あんましそそらないなぁ。




「わたしを蝕む聖遺物はあの時全部綺麗さっぱり消えたんだって」
「でもね」
「胸のガングニールはなくなったけれど、奏さんから託された歌は絶対になくしたりしないよ」


こっちは堂々と抱いた!
抑えて! 抑えて!
神獣鏡で体内のガングニールは消えたようだが、胸の歌はなくなっていないようだ。
意味はよくわかりません。
だが、歌があれば何とかなる。
疑う余地なんてない。



「それに、それはわたしだけじゃない」
「きっと、それは――誰の胸にもある、歌なんだ」


歌はみんなの胸にある。
だから、70億の絶唱がひとつになったのだろう。
歌には力がある。
それは皆が持っている力。
そう、シンフォギアは歌に対する想いを貫き徹した。
そして、その想いを(金子のおっさんの狂ったパワーで)叩き付けた。
ならば、言葉など不要! 胸の響きこそが答えだ!



戦姫絶唱シンフォギアG完ッ!!


さて、後書き。
相変わらず金子のおっさんはバカで頭がおかしい。
いや、それはわかっていたことだけど。
いつもこんなのデス。

ともあれ、相変わらずノリにノリノリな頭の悪い(褒め言葉)アニメだった。
金子のおっさんが諸悪の根源なのは間違いないけれど、スタッフ一同の悪ノリが光った。
熱い歌を提供したもう1人の諸悪の根源上松氏、ネタ盛り沢山の公式、アクションシーンで好き勝手した現場(社長ブログ)……
スタッフ全員のやりたいことを詰め込んでいる。
お前らはRPGツクール(SFC版)を初めて買ったジャリガキか。
だが、それがいい。

第1期は最初のイメージとは違った展開になった。
奏が主人公かと思いきや実は響が主人公だった。
シンフォギアGも同じように響とマリアがライバル関係になるかと思ったら違った。
そもそも、二課とF.I.S.がライバル関係ということがミスリードだったように思える。
二課はノイズと戦うことを主体とした組織であり、F.I.S.は月の落下の阻止を本懐としている。
本来、2つの組織が相争う理由はないし、互いの主目的となる部分にはほとんど触れていない。
2つの組織が戦うことがシンフォギアGのドラマではないのだ。

むしろ、組織外との争いよりも組織内での不和が強調されていた。
シンフォギアGは目的を同じとする者でもわかり合えない構図に満ちている。
F.I.S.はもちろん、二課も第1期で心を共にして戦ったのに、足並みを揃えることができなかった。
人と人がわかり合うことの難しさが描かれている。

一方で金子彰史は第1期のインタビューにおいて、こう答えている。

 意見の食い違いは日常生活でも往々にしてあります。
 でも、そうした衝突の末に別の道をお互いに探すことで、元の考えよりも一歩進んだものが生まれる場合もあるじゃないですか。
 それこそが文化の発祥なんです。


人と人がわかり合えなかった結果、月の落下を阻止しバビロニアの宝物庫に1000000000000℃をぶつけてノイズの被害を絶やすことができた。
(後者はまだどうなるのかわかりませんが)
わかり合うことの難しさ、わかり合うことの大切さと共にわかり合えないことによって生み出されるものも描こうとしている。
これは第1期にはなかったものだ。

もちろん、シンフォギアGのハッピーエンドは結果論によるものではあるのだが、結果論でしかわからないことがあるのも真理ではないだろうか。
そして、わかり合えないことにも全力で一生懸命だったからこそ起こせた奇跡でもある。
シンフォギアGも数々の衝突の末に生まれただろう。
その結果、スタッフでさえ予見できなかった作風に仕上がったことは間違いない。
何せシンフォギアの特色である歌を歌いながら戦うこともわかり合えなかった結果の産物だ。
未来を見通して作品を作ることはできないし、見通せないからこそ生み出せるものがある。
それもまた全力で一生懸命なスタッフの全力投球があってのものだ。

さて、シンフォギアGは響が全てを失う物語だと思っていた。
そこに間違いはなかった。
だが、全てを失っていくのはマリアも同じだった。
第1話で正義のために悪を為すために歌が大好きで人助けをしたいただの優しいマリアを捨てている。
そして、本当の自分と向かい合えなくなったマリアは摩耗していく。
その姿は全編を通して描かれている。

それでもマリアは最後に本当の自分と向かい合い本懐を成し遂げる。
それができたのは本当の自分にそっくりな響と出逢ったからである。
響もマリアも全てを喪失して初めて自分を取り戻すことができた。
その点においても2人は共通している。

だが、響とマリアは最後まで出逢わなかった。
2人が出逢わないように徹底して描いていた。
それは何故か。
響と奏が出逢ったような、僅かな出逢いでもそれは大きな意味を持つ。
そうした出逢いを響とマリアの邂逅に込めたかったのではないか。
それは響も誰かに自分の生き様を伝えられるくらいに成長した証なのだ。

そして、響は何も持たないからただの自分を伝えるしかなかった。
その響の気持ちは「生きるのを諦めないでッ!」に集約される。
それしか伝えられなかったからこそ、マリアに響の想いは届いたのだろう。
響とマリアが裸になったのは身体だけに限った話ではない。
心もまた裸になったのだ。

こうしたただの自分を伝え合うために2人に接点を設けなかったように思える。
もし、頻繁に戦うライバルのような関係ならまた別の物語が紡がれていただろう。
それはそれで面白いだろうし、多くの人たちの期待もそこにあったのは事実である。
だが、その全てわかった上であえてそうした物語にしなかったことを私は尊重したい。
第13話のマリアがどこまでも輝いていたのは、その脆さと弱さと裡に秘めた優しさが描かれ続けたからだ。
出逢ったことに意味があるのなら、出逢えなかったことにも意味がある。
だからこそ、「君に出逢えて良かった」とマリアは感謝するのだった。

これでシンフォギアGの放映は終わったが今後もBD発売を初めとして用語解説やライブ、そしてインタビューとまだまだ展開はある。
なるべく追っかけていきたいです。
余裕があればマリアさんの心情の変化なんかもまとめてみたいですね。
抱きたい。


シンフォギア感想トップに戻る TOPに戻る