刃牙道 第1話 欠伸



新しいバキシリーズ、『刃牙道』の開始だ!
ついに刃牙は道となった。
今までのタイトルは実はテーマに即したものとなっている。
『グラップラー刃牙』時代は格闘家としての刃牙が前面に押し出され、 『バキ』時代は刃牙個人にスポットが当てられた。
『範馬刃牙』では範馬一族としての刃牙が描かれることとなった。
これは特に勇次郎との決戦で強調されている。

そして、刃牙道!
道としての刃牙!
それってクソ生意気なことをしたりSAGAったりする人が増え るのだろうか。
それは勘弁かな……


さて、新シリーズ開始である。
刃牙と言えばその存在感の薄さである。
主人公なのに忘れられるというか、あんまり出てきて欲しくないというか、ムカつくというか。
とにかく、そんなヤツである。

そんな刃牙だが神社の参道の階段の上に立っている。
ちゃんと出番があった!
範馬刃牙第1話ではほんの数ページしか出番がなかったのに!
これは刃牙フィーバー確定ですよ。そのうち、出番は減ると思いますがね。
刃牙とはそんなヤツ。

さて、階段と言えばそれを駆け登る。
シンプルしてディープなトレーニングの基本である。
だが、刃牙は既に駆け登った後だ。

とりあえず、わかることは勇次郎戦の傷は癒えたらしい。
大分重傷だったが範馬刃牙は平穏のんのんとしております。

「駆け登るなんて珍しくも…面白くとも何ともない」
「駆け落ちるのだ」
「下まで」
「一気に!!!」


本日の刃牙のトレーニングは階段から駆け落ちることだ!
バカか、テメエ!
階段を何段も飛ばして駆けていく。
もう自由落下に等しい行為だ。

「落下より速く!!!」

だが、刃牙は重力加速度9.8m/s2を越える勢いでさらに加速しようとする。
危険なだけであまり意味のない気もするが、崖から飛び降りることもトレーニングなの が範馬一族だ。
落ちることに加えてさらに加速の要素を加えている分、むしろ難度の高いトレーニングかもしれない。
うーむ、やはりこいつら(勇次郎含む)のやっていることはよくわからん。

「転倒しない」
「唯一の策は…」
「更なる加速だ!!!」
「落ちる……のではなく」
「底に向かって」
「疾走(はし)る!!!」


さすが急ぐのだから奔る男だ。
転ばないために、走る!
一輪車を安定させるためには走り続ける。
理屈としてはわかるようなわからんような。
まぁ、常人がやったら命がいくらあっても足りんな。
本部なんか普通に死にそうだ。

これは危険な状況をあえて作ることで、死に際の集中力を発揮し同時に火事場の馬鹿力を引き出すトレーニングなのだろうか。
でも、刃牙って烈や花山が匙を投げる高さから落下しても死んでいないんだよな。(範馬刃牙第 159話
これくらいじゃ死にそうにないし危機感も覚えなさそうだ。
それに落下よりも圧倒的なGがかかっていたであろうドレスを乗り越えたのだ。(範馬刃牙第292 話
何かもうコイツはどうやれば死ぬんですかね。
いや、勇次郎には殺されかけたけど、逆に言えば勇次郎でなければ殺しかけることもできない。
ゴキブリ以上の生命力である。火星へ行けそうだ。

「こんなときにまで……」
「こんなときに…」
「あり得ないでしょ……」
「来るッ」「来るッ」「来るッ」
「来た!!!」
「欠伸って……」


危機的な状況だがのんきにあくびをする刃牙であった。
全然平常心だ。これっぽっちも緊張していやがらねえ。
あくびの表情がキモいくらいに憎たらしい。
いや、憎たらしいくらいにキモいと言った方がいいですかね。

そして、刃牙は着地――表現として正しいのかはわからないが――する。
シューズがダメになるほどの超スピードからの急ブレーキである。
文明の利器が人間の筋力に追いつけていない。

「予測は…」
「していたこととはいえ…」
「こうまで…退屈だなんて………………」


相変わらずの変態的なトレーニングだったが刃牙は退屈していた。
だが、仕方ないのかもしれない。
勇次郎との戦いという世界でモースト・デンジャラスな戦場(いくさば)を潜り抜けた のだ。
あれと比べたら何もかもが刺激不足に感じても仕方ないかもしれない。

そして、退屈は勇次郎のキーワードでもある。範馬刃牙第294話
勇次郎との戦いで刃牙は勇次郎の領域へ近付き、範馬一族としてのアイデンティティも得た。
結果、勇次郎と同じように刃牙は退屈することとなってしまった。
強くなったのかもしれないが、強くなった故の悲しみを背負うこととなってしまった。

そもそも刃牙のトレーニングは勇次郎を倒すために行われていたものだ。範馬刃牙第172話
だが、勇次郎との確執にフィナーレを打ってしまった。
人生最大の目標を失ってしまった状態である。
強くなることより強くあることの方が何倍も退屈だろう。
トレーニングだってただ惰性で行っているものかもしれない。
だから、こうした変わったことを行ってみたが退屈は紛れなかった。
刃牙は勇次郎との戦いを経たことで強者故の悲しみを背負ってしまった。
こう書けば刃牙の憎たらしさも半減するんじゃないっすかね?

そんな刃牙の退屈を打ち消すような強者は現れるのだろうか。
勇次郎やピクル級のインパクトが。
第2話へ続く。


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