バトルスタイル考察-風鳴翼編-



風鳴翼と言えば防人。防人と言えば風鳴翼。
「一人前の防人」として名実ともに翼は存在している。
防人の家系でもあるしシンフォギアシステムの発祥にも携わっている。
キャリアという点において翼は装者の中でもっとも長い。
漫画版で最強と設定された奏でさえキャリアでは翼よりも短い。
このキャリアは作中の随所で実力という形で反映されている。
風鳴翼は装者の中でもっとも最強に近い力量を誇るのだ。


・在りし日の翼
さて、そんな翼だが奏が存命していた頃はどうだったのか。
あまり強くなかったのではないだろうか。
それはライブ会場の惨劇で奏と違って万全の身ながら、ノイズの物量に押され奏の援護もままならず、結果として奏を失っていることからも伺える。
あの時に奏は必殺技を連発して大暴れしていたのに対し、翼は必殺技を使うこともできず大した活躍ができなかった。
(シンフォギアを纏って戦うことを躊躇ったり)
結果、奏の負担が増大。あの結末に至ったと考えられるだろう。

もちろん、翼が必殺技を使わなかったのは演出上の理由もあるだろう。
それを含めても翼が活躍できなかったことに変わりはない。
先述通り、翼は防人の家系だ。叔父にも弦十郎がいる。
幼少期から鍛錬を積んでいたことに間違いはない。

それでもこの時点では大した力量を備えていなかったことから、防人として一人前になるだけの鍛錬を積んでいなかったのか、
あるいは精神的に甘えがあったのかもしれない。
奏はノイズを皆殺すという明確な目標があり、そのために血を吐いた。それと同じくらいの鍛錬も積んだだろう。
同じだけのモノを翼は背負っていたのかとなると怪しい。

様々な理由は考えられるがこの時点での翼は未熟で間違いない。
作中でもそれは言及されている。
だからこそ、ライブ会場の惨劇以来、翼は鍛錬を重ね力量という点において目覚ましい成長を遂げるのだった。


・第1期初期の翼
奏を失ってからの翼の力量は著しく向上している。
第1期第1話で苦戦したノイズを弄せず殲滅できるようになっていることからも明らかである。
奏を失ってから一人で鍛錬を重ね戦い続けた結果だろう。



その成長を物語る一コマがこちら。
左が第1期第1話、右が第1期第2話でそれぞれ蒼ノ一閃でノイズを真っ二つである。
第1期第2話では急遽響が参戦、翼の援護した。
これによって蒼ノ一閃が命中した……というわけではない。

左のノイズを見ると身体の中心から真っ二つである。
対して右のノイズは中心から若干ズレている。
響の援護があったから命中させることができたどころか、響の援護のせいで仕損じかねなかったのだ。
これは正確に中心点を切り裂く極めて高い技量を身に付けたと解釈できる。

なお、これが第1期第3話における翼の怒りに繋がっているに違いない。
翼は確実に倒す心構えでノイズと戦っていたのに、響の余計な援護によって倒し損ねるかもしれなかった。
怒ってもおかしくはない。
FPSで例えるとヘッドショットを狙ったのに余計なフラッシュバンでヘッドショットならずといったところか。
結果としては倒せはしたけど文句のひとつやふたつは言いたくなる。
もちろん、怒るのはいいけどあんな怒り方をしたのは先輩としてどうかと思いますがね。



翼は防人としては一流になった一方で精神面には大きな不安を抱えており、それが戦いにおける弱点にもなっている。
第1期第4話のネフシュタンクリスとの戦いではパワーで勝る完全聖遺物相手に力による真っ向勝負を挑んでいる。
結果、大苦戦している。そりゃあそうなるというものである。
影縫いという搦め手を用いたものの、そこからの策が自爆同然の絶唱による力勝負である。
極めて効率が悪い、無理をしていると言えよう。

翼の強みは装者随一の技量と天羽々斬の機動力によるものだ。(機動力についてはシンフォギアG第3話で触れられている)
決してパワーを売りにしているわけではない。
ないのだが、奏の死と響との出逢いによって視野狭窄になっているのか、自ら持ち味を殺した立ち回りをしてしまっている。
これは奏なら真っ向勝負で戦って勝っていた、奏のように戦わなければいけないという思い込みが背景にあるのだろうか。
(こうした奏へのこだわりがSTARDUST∞FOTONに酷似した千ノ落涙を編み出したと考えるとなかなか面白い、かも)

第1期前半の翼で印象深いのがその面倒臭さだ。
それは響との付き合い方のみならず戦いにも表れている。
それは精神的にも余裕がなければ、頼れる仲間がいないという状況からの余裕のなさも反映されているのだろう。


・第1期後半の翼
第1期前半の翼は精神面の不安定さが戦いにも表れていた。
では、精神面が安定すればどうなるのか。
当然、戦いにもそれは表れ本来の持ち味を活かした立ち回りをするようになる。



まず、復帰第1戦のイチイバルクリス戦で特にそれが表れている。
万全ではないというのもあるが真っ向勝負を避け、その機動性でクリスを翻弄、死角を取っている。
自慢の技量と機動性を存分に活かしており、またガトリングという重量物を抱えていることから小回りが利かないと見ての動きでもあるだろう。
これが翼にとっては本来の戦い方に違いない。
(あとこの頃のクリスちゃん、背ぇけっこうありますね)



フィーネさえも一撃で引き裂いたほどのパワーを誇る暴走状態の響にカウンターを取って吹き飛ばすなど、
その技量はその後も表れている。
そんなパワーを持つ響と交戦してダメージを受けているものの持ち応えていることからも、その技量が見て取れる。
さりげなくその高い技量を見せたシーンである。



そして、その後のフィーネとの立ち合いでは空中逆羅刹で攻撃を捌くという持ち前の技量のみならず、
時として真っ向からの全身全霊での力勝負を行うなど力と技が融合したスタイルを見せている。
結果、装者3人でさえ明確なアドバンテージが取れなかったフィーネを1人で圧倒しているほどである。
技にも力にも傾倒することなく、勝利のための戦い方を選んでいる。
翼の成長がよくわかる一コマである。


・そして、シンフォギアG
翼は卓越した技量によって装者最強に近い立ち位置を手にした。
当然、シンフォギアGでも強い。



第1戦となるマリア戦ではマリアがアームドギアを封印していたものの、
調と切歌の援護がなければ勝利していたかもしれないまでに追い詰めている。
(とはいえ、マリアにはそれなりに余裕があったのでまだあがけたかもしれないけれども)
マリアの一瞬の隙を見切った点にも翼の技量が見て取れる。



マリア第2戦でもAnti_LiNKERと不意打ちによるダメージこそ残しているもののアームドギアを用いたマリアと互角以上に渡り合う。
ここでも技量やスピードに傾倒するだけでなく、時に渾身の逆羅刹による力勝負を挑むなど柔軟な立ち回りを行っている。
(もっともその力勝負による無理が祟ったのか、結果として隙を見せてしまうのだが)
結果としてはこの戦いではマリアのパワーに圧倒されたものの精妙なカウンターで手傷を負わせる技量を見せている。
万全でない状態でマリアと渡り合えたことから翼の強さがわかる。



そんな力量の持ち主なのだから元より隙だらけな切歌では分が悪い。
一瞬で制圧している。しかも、2回も。
その後、切歌は翼の隙を突いて一矢報いようとするのだが、それでも決定打にはならなかった。
装者が相手でも圧倒する強さを見せている。



そして、あえて旧式ギアを纏うアーリーシルエットというシンフォギアに詳しいであろうウェル博士でさえ予想できなかった技を見せるのだった。
シンフォギアGでは翼の高い技量とそれからなる強さが強調されている。
長いキャリアと確かな鍛錬の賜物だろう。
特に一対一では絶対的な強さを見せていることから、さすがは武術経験者と言えるか。

また、精神的に不安定だった第1期とは異なり、(一時期不安定になったものの)シンフォギアGにおける翼のメンタルは安定している。
響の死という大きな山を乗り越えた後は特に安定しており、クリスに対して先輩らしい寛容な精神で向き合っている。
第1期前半の翼なら物凄い勢いでキレていたことは想像に難くない。
こうした精神面の強さもシンフォギアGにおける翼の強さに繋がっていると言えよう。


・翼の強さと脆さ
翼は強い。
特に技量という点では生来の防人として鍛錬を積んできただけに圧倒的である。
万全ならフィーネと真っ向から渡り合えるほどである。
装者の中でもっとも最強に近いのではないだろうか。

一方で精神面がもっとも戦いに反映されており不安定と言える。
乗っている時は強いが、乗っていない時は脆い。
それもシンフォギアGでは大分克服しており、第1期でやったような失態同然の無茶はしていない。

そんな翼だがその強さを支えているのは経験と鍛錬であり、才能という点ではやや劣るだろう。
事実、ライブ会場での惨劇の時点ではあまり強くない。
自らを剣とするような苛烈な生き方をしたからこそ、翼は強くなれたのだ。
自然と剣になれるような才能は備わっていないのだろう。

それでも剣としてあるべく無理を重ねている。
第1期前半にその姿が表れており、あくまでも折れやすい剣である。
その自身の不足を受け入れ仲間に頼ることを覚えて、やっと翼は本当の意味で強くなることができた。
翼は最強の装者かもしれないが完璧な装者ではないのだ。
そこに翼の脆さと強さ、そして魅力があるのではないだろうか。


・翼の技の紹介


逆羅刹
翼もといシンフォギアの象徴とも言える必殺技である。
初期はアームドギアを持っての脚部ブレードと合わせて3つの刃を用いての攻撃だが、いつの間にか両手で逆立ちするようになった。
これは安定性の向上を図って改良を加えた結果だろうか。
カットイン回数こそ少ないものの使い勝手がいいのか、使用回数そのものは多く様々な場面で用いている。
ギアの出力が下がった場面での奥の手としてこれを用いたことから、燃費の良さと翼の信頼が伺える。



千の落涙
いくつもの剣を雨のように落とす飛び道具系必殺技。
攻撃範囲の広さからノイズの掃討に向いている。
攻撃時の態勢を問わないようで、追い詰められた時の逆転の一手として用いることが多い。
翼のモーションが少なく隙が少ないためか、シンフォギアG第12話のクリス戦で見せたコンビネーションのパーツとしても用いている。
汎用性が高い必殺技と言えよう。
先述したがその出自に奏のSTARDUST∞FOTONが関わっている可能性がある。



蒼ノ一閃
逆羅刹が翼の裏の十八番なら、こちらは表の十八番。強化型に蒼ノ一閃滅破あり。
雑魚戦でもボス戦でもどちらでも多用していることから、範囲燃費攻撃力のバランスが良いことが伺える。
一方で破られることも多いのが不遇な技。
蒼ノ一閃のために巨大化したアームドギアをそのまま近接戦闘に用いることがあるため、あくまでも壱の太刀に過ぎないということか。
おそらく織田光子のPVから学んだと思われる。



天ノ逆鱗
翼の決め技。その威力は高いのか、フィーネにASGARDの展開を余儀なくしている。
破壊力のみならず応用の範囲も広く、巨大ブレード展開を盾として用いることも多い。
こうした技の応用は翼がもっとも多く、ここからも技量の高さがわかると言えよう。



影縫い
元は緒川家の忍術。
相手の動きを止めるというシンプルながらも絶大な効果を発揮するだけに何度も高いのか、翼は習得に3年を要している。
同時に気合いと根性さえあれば破れるらしく、ウェル博士は見事に破っている。
逆に言えば破れなかった当時のクリスの気合いと根性はウェル博士以下……?



炎鳥極翔斬
カ・ディンギルを破壊するほどの威力を秘めた絶唱を除けば第1期最大の必殺技。
それだけにバックファイアも大きいらしく、(カ・ディンギル破壊の余波もあるとはいえ)反応が途絶するほどである。
特攻同然の技なのか、出番は1度だけである。



風輪火山
炎鳥極翔斬同様に炎を纏う必殺技。
炎鳥極翔斬をベースに過度のバックファイアを抑えたのだろうか。
なかなかの大技なのだが出番は1度きりである。
大振りかつ燃費もさほど良くないのが出番の少なさに影響しているのだろうか。



騎刃ノ一閃
シンフォギアとバイクの融合というまったく新しい技。
スタッフは正気か。
高速移動しつつノイズを一掃できるのだが、如何せん使う場面が限定されるのが難点。
シンフォギア無双が出たら乗馬時の無双乱舞は多分これになる。


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