EPISODE12 撃槍



クライマックスを迎えついに響とマリアが邂逅しようとしている。
すれ違い続けたガングニールとガングニール、本気の偽善と本気の嘘の激突である。
シンフォギアGの主人公と言っても過言ではない。
そして、片方は数々の困難に見舞われても屈せずうつむかず諦めずに走り続け、
片方は数々の困難に†膝を屈し†凹み†何かどうしようもなくなっている†。

どちらがどちらとはあえて言わないが、あれですよ。
バネが最大限に縮んだ状態なんですよ。
現実の重さにバネが押し潰されないといいですね。



翼とクリスの戦いは続く。
蒼ノ一閃をかわしての空中射撃だ。
クリスはあえて大技を使わない方向で行っている。
格闘ぶっぱに頼らない射撃始動に徹したミニマムリスクスタイルである。



「何故弓を引くッ!」
「雪音ッ!」


相変わらずクリスは何も喋らない。
防人語にも無反応だ。
お互いに剣と弓をぶつけ合う。
ハンドガンだけど。ハンドガンだけど。



「その沈黙を私は答えと受け取らねばならないのかッ!」

あんまりにもダンマリなものだから翼が勝手に盛り上がっているようにも見えるが、本人としては気が気ではない。
仲間が弓を引くという修羅場で正念場なのだ。
あと翼は元より勝手に盛り上がるタイプでした。
盛り上がりすぎて面倒臭くなることはよくある。



「何を求めて手を伸ばしているッ!」

「あたしの十字架を他の誰かに負わすわけにはいかねえだろッ!」


翼はクリスの意図を探ろうとぶつかり続ける。
そして、ついにクリスは自身の心情を吐露する。
やっぱり、ソロモンの杖関係であった。
そして、思い詰めて1人になるのがクリスらしい。
この辺でこの2人は似ている。
響という緩衝材の偉大さを知るのだった。



「きりちゃんがきりちゃんでいられるうちにって、どういうこと?」

「あたしの中にフィーネの魂が、覚醒しそうなんデス」


調と切歌もぶつかる。
切歌は初めてフィーネさんのことを告白した。
フィーネさんは2人のすれ違いの原因である。
だが、それがわかれば戦わずに済む、というわけでもない。
お互いに通したい意志があるのだ。
互いに不退転である。こういったキャラを用意した金子彰史くらいに不退転である。



「だとしたらわたしはなおのこときりちゃんを止めてみせる」
「これ以上塗り潰されないように、大好きなきりちゃんを守るために」


切歌の魂を塗り潰させないために戦うことを決意した。
調が戦うのは仲間のためであり、そのためにも下がれない。
あとさりげなく告白した!



「大好きとか言うなッ!」
「あたしの方がずっと調が大好きデスッ!」
「だから、大好きな人たちがいる世界を守るんデスッ!」


こっちも告白した!
大好きと言うなと言った後に大好きと言うなんてヤケクソだ。
ヤケクソになるほど大好きなのだ。
だから、下がれない。
これは大好きをぶつけ合う戦いだ。
愛ッ! ですよッ!



「きりちゃん――」

調は新技「緊急φ式双月カルマ」の態勢に移る。
ノコギリをローターに変形、浮き上がる技である。
シュルシャガナはおっかない見た目に反して汎用性に富んでいるだけあり、空も飛ぶことができる。
しかし、どこのザンスカール帝国のMSだ?
ゲドラフといい調にはザンスカール帝国の血が流れている。
なお、金子彰史はVガンダムネタをかつて掲載していたブルーブックレポートや社長ブログでちまちまと使っているので多分Vガンダム好き。



「調――」

対する切歌も新技「封伐・PィNo奇ぉ」を解放する。
肩のユニットがそれぞれ鎌に変形する技のようだ。
読み方は「ふうばつ・ピノキオ」だろうか。相変わらずである。
こちらは隠し腕的な発想である。
どっちも癖のあるMSだ。



「「大好きだって――言っているでしょうぉおおッ!!」」

お互いの胸の「大好き」をぶつけ合う。
想い合うが故にぶつかるしかない。
おあつらえ向きに「鏖鋸・シュルシャガナ」にも「獄鎌・イガリマ」にも「大好き」の歌詞がある。
だが、その「大好き」をぶつけ合うことになろうとは……
しかし、「大好き」で留まりそうなのでこの辺は安心感がある。
未来ならいざとなれば「愛している」と余裕で言いそうだ。



「世話の焼ける弟子のおかげでこれだ」

「きっかけを作ってくれたと素直に喜ぶべきでは?」


さて、ついに戦場に弦十郎が赴こうとしていた。
しかも、緒川さんもいる。
緒川さんの驚異的な能力はシンフォギアGの作中で何度も描かれてきた。
弦十郎はシンフォギアGになってから戦うことはなくなったが、第1期の驚異的な活躍は今でも鮮明に思い出すことができる。
これはある意味で最強のコンビだ。
謎武術の使い手にニンジャの組み合わせですよ。
間違いなく装者相手に勝る戦力を誇る。



その時、マリアの画像が全世界に配信されていることを知る。
さすが、フロンティアは先史文明の遺産だけあり、電波ジャックはお手の物だった。
電波ジャックなんてWA2的だ。
WA2の時は無闇に盛り上がりすぎて半ばギャグだったが、今度は違うぞ!
でも、マリアさんってヴィンスフェルト並みにへっぽこですよね。
どちらも公式でへっぽこと描かれている点で共通している。



マリアは全世界中継で月の落下とそれに関わる各国の陰謀を語る。
本来は翼とのライブで暴露しようとしたものだ。
計画に多大なズレが生じたが、今こうしてそれを遂行している。
今のマリアに迷いはない。
世界を守るために一直線だ。
本気の嘘を本物にする時がつい来た。



「月を、私の歌で?」

「月は地球人類より相互理解を剥奪するため、カストディアンが設置した監視装置」
「ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動できれば公転軌道上修正可能です」


今までの後れを取り戻さんばかりに働くナスターシャ教授であった。
人の不和の象徴である月をあえて動かす。
逆に言えば月が問題なく動いていれば人類が危機に瀕することもなかったということか。
人の不和の象徴が人類を救う鍵となり、その機能が不全となることで人類の危機となるのも皮肉だ。
人間がわかり合えない現実は必要ということだろうか。
人がわかり合えないからこそ見つけられる大切なモノがあるというのはシンフォギアの根底に流れるテーマに思える(第1期第13話の後書きで触れてみてた)。
そして、シンフォギアはわかり合えない者同士がわかり合うストーリーでもある。



だが、吐血!
今までで一番派手な吐血だ。
ナスターシャ教授の体調が非常に怪しいということなのだが、何だか笑いを誘ってしまうのがズルい。
昨今のクッキーブームに便乗したものなのか?
それともクッキー自体がマムに便乗しているのか?



「あなたの歌で世界を救いなさい……ッ!」

株価大暴落のマリアをナスターシャ教授は信じた。
何という信頼か。
事実、マリアの歌は世界を動かしている。
皆さん、もうとっくの昔に忘れていると思いますけど、マリアさんはデビュー2ヶ月で米国チャートの頂点に上り詰めたんですよ?
歌という分野では英雄そのものなのだ。
歌という分野ではな……



「全てを偽ってきた私の言葉がどれほど届くか自信はない」
「だが、歌が力になるというこの事実だけは信じて欲しい」


歌には力がある。
第1話でマリアが翼に語った言葉だ。
それはF.I.S.のマリアではなく、アーティストのマリアとしての言葉であり、それは嘘のないマリアの言葉でもある。
今、マリアは偽らない自分を伝えるべく立ち上がった!



そして、変身!
第8話の変身とは違い笑っている。
これこそがマリアですよ!
格好良い時のマリアが帰ってきた!
なお、今までは賞味期限が第4話がいっぱいいっぱいだと思われていました。



「私1人の力では落下する月を受け止め切れないッ!」
「だから、貸して欲しいッ!」
「皆の歌を届けて欲しいッ!」


もう偽ることなく自分の胸の想いをあるがままに届ける。
ここにいるのはフィーネさんになろうとしたマリアではなく裸のただの優しいマリアだ。
それでも世界を守るために戦う。歌う。
マリアの本当の強さが今、カタチになろうとしている。



胸の想いを伝えるためについに「烈槍・ガングニール」の2番を歌った!
マリアの気高い意志を象徴するような歌詞である。
これが使われるとなれば興奮は収まらない。
歌には力があることに納得せざるを得ない。
サブタイトルが「撃槍」じゃなく「烈槍」でいいんじゃないっすかね!



(セレナが助けてくれた私の命で誰かの命を救ってみせる)
(それだけでセレナの死に報いられる)


マリアはセレナに命を救われた。
この関係は奏に命を救われた響に酷似している。
そして、その死に報いるために戦っている点でも酷似している。
マリアのそれは惨劇を生き残った負い目なのか、あるいはセレナから託されて受け取った気持ちなのか――
今はまだわからないのだった。



「誰かが頑張っているッ!」
「私も負けられないッ!」
「進むこと以外答えなんてあるわけないッ!」


響もまた走る。
「進むこと以外答えなんてあるわけない」は「撃槍・ガングニール」の歌詞だ。
マリアが烈槍ってる時に撃槍をぶつけるとは……
まぁ、サブタイトルもらっていますからね。
答えに向かって歌うマリアと答えなのかわからないがそれでも諦めずに前に向かう響と対比されている。
そのどちらが強いのかは、誰にもわからない。



一方、進展しない戦いにクリスは焦り始める。
何だかんだで2人の実力は拮抗しているということか。
装者戦での戦果には圧倒的な差があるんですけどね。
それを踏まえるとむしろ翼はクリスの真意を探るためにあえて勝負を決めに行かないのか?



「ちゃっちゃと仕留めないと約束のオモチャはお預けですよ」

(ソロモンの杖……人だけを殺せる力なんて人が持ってちゃいけないんだ)


ソロモンの杖をギターのように揺らすウェル博士は楽しそうだ。
仲間割れさせているのが本当に楽しそうですね、この人。
さすがの外道というか何というか。
クリスの罪の意識を知っててこれなのだろう。
まったく外道ですね。



(あれが雪音を従わせているのかッ!?)

翼はクリスの首輪に気付く。
ギアスですね。どうみてもギアスです。金子彰史必須アイテムギアスですよ。
余裕のある翼はこうしたことを悟る視野の広さを持っている。
面倒臭くない時の翼の頼れる感は凄まじい。
なお、余裕がない時は味方だろうが天ノ逆鱗をぶっ放すけど。
面倒臭い時は死にたがるのでこれぽっちも頼れない。



「犬の首輪を嵌められてまで何を為そうとしているのかッ!」

「汚れ仕事は居場所のない奴がこなすのが相場だ」
「違うか?」


未来の時のようにクリスは汚れ仕事を自認しているようだった。
誰にも愛されていないから嫌われることを厭うこともない。
誰よりも愛されることを欲しているのに……
人の好意に臆病な子だ。
第4話でそれを素直に受け止められるようになったと思ったが、ソロモンの杖による被害で罪の意識に押し潰されてしまったのだろうか。

まぁ、汚れ仕事はまだマシかもしれない。
マリアさんみたいに汚れ役になると後始末が大変だ。
い、いや、今後始末しているから……




「首根っこ引きずってでも連れ帰ってやる」
「お前の居場所――帰る場所に」


頼れる!? この人何なの? ホント頼れる!
クリスに真っ向勝負で帰る場所があると言い切った。
こりゃクリスも泣きますよ。私だって泣く。
第1期第12話でも翼は頼れるところを見せた。
ならば、同じ第12話である今回も頼れるところを見せるのか。
シンフォギア得意の対比である。

翼はクリスと級友たちの関係を知っている。
帰る場所があることを知っている。
翼自身がそれに救われた人間なのだ(第1期第9話)。
ならば、首根っこ引きずってでも連れ帰るよりない。



「お前がどんなに拒絶しようと私はお前のやりたいことに手を貸してやる」
「それが片翼では飛べぬことを知る私の――」
「先輩と風を吹かせる者の果たすべき使命だッ!」


翼は奏の姿を思い起こす。
先輩のように、姉のように自分を引っ張った奏のように、翼もまた皆を引っ張っていく決意を見せた。
今の翼は完全に奏の領域に踏み入れている。
第1期で奏の喪失を乗り越え、シンフォギアGでは奏の生き様を継いでいる。
これこそが奏が遺して翼が受け取った気持ちだ。
響がガングニールとその気持ちを継承したように、翼も奏を継承しているのだ。



(そうだったよね――奏)

「そうさ」
「だから、翼のやりたいことは私が、周りのみんなが助けてやる」


喋ったァアアアアアアア!? 奏が喋った!?
例えちょい役でも出すことが難しいのが声優の世界である。
なので、フィーネさんの台詞は使い回されているわけで。
だが、今こうして喋った。それだけの力を賭けた。
今の翼にはそれだけの価値がある。
そして、ネクロマンサーとしての力量は健在で安心した。

奏からお墨をもらったのでもう翼が面倒臭くなることはないだろう。
でも、面倒臭い時の翼が一番面白いのでたまに面倒臭くなってもいいのよ?



「何をしてるのですか」
「素っ首のギアスが爆ぜるまでもう間もなくですよ」


やっぱり、ギアスでしたァー!
これがギアスじゃないという方が無理がある。
必然! 道理!
そして、ウェル博士は煽っていくスタイルだ。
事態に関係なく爆発させるくせに何言ってんだ、この人は。



「風鳴、先輩」

翼の言葉を受けて、クリスは名前を呼んだ。
ついにクリスが誰かの名前を呼んだ。 (除くフィーネさんとウェル博士)
しかも、先輩と付けるのが微妙に序列に気を遣っている。
これには翼も驚く。
だが、当然の出来事か。
翼の言葉はクリスの心を溶かすには十分な効果があったのだ。



「次で決める」
「昨日まで組み立ててきたあたしのコンビネーションだ」

「ならば、こちらも真打ちをくれてやるッ!」


クリスは決着を付けようとする。
積み上げてきたコンビネーションに翼も真打ちで答えると決意を向ける。
S2CAのことから二課の装者3人は共同でトレーニングを積んでいることがわかる。
映画トレーニングを3人一緒にやっていたことからも明らかだ。
そのコンビネーションをぶつける――二課に来てから積み重ねてきた自分をぶつけるということだ。



コンビネーションは翼は蒼ノ一閃、クリスはハンドガンの連射から入る。
ハンドガンで脚を止めるのが狙いか。



だが、ハンドガンはオトリ。
真打ちは今まで温存していたボウガン形態だ。
片方は蒼ノ一閃で破壊されるものの、残された片方で射撃を行う。



打ち出された弾頭は分裂し翼に襲いかかる。
第1話の「GIGA ZEPPELIN」の変形系だ。
翼は刀身でガードするが動きは止められてしまう。



だが、それさえもオトリに過ぎない。
本命は「MEGA DETH PARTY」! 翼もそれに対抗するべく「千ノ落涙」だ!
お互いの得意技VS得意技である。
1発1発の火力は互いに高いわけではないが、連携の密度を上げることでそれを補っている。
まさに積み重ねてきたコンビネーションである。



だが、両者共に相打ち! 爆発四散! ナムアミダブツ!
翼とクリスの戦いは両者相打ちに終わってしまった。
共に研鑽してきたコンビネーションなら相打ちに終わるのも道理かもしれない。
ナムサン!



「イヤッハアアアアアッ!」
「願ったり叶ったりッ!」
「してやったりィイイイッ!!」


で、メチャクチャ嬉しそうで楽しそうなウェル博士であった。
踊ってるよ! この人、踊ってるよ!?
何でこの人は萌えを意識しているのだろうか。
マムとウェル博士のどっちが萌えるかで勝負を行えばいい勝負になるかもしれん。
ともあれ、共倒れが望みだったようだ。
相打ちなら最高。クリスが勝てばギアスを爆発。翼が勝てば……ノイズさんかマリアさんをけしかける?
無理だろうJK。



翼とクリスの戦いは決着付いたが切歌と調の戦いは続いている。
ここで歌っているのは「Edge Works of Goddess ZABABA」の2番である。
「大好き」の歌詞が印象的な2番だ。
大好きをぶつけ合うことになった以上、2番を歌わざるを得ない。




ゲドラフこと「非常Σ式・禁月輪」と新技「双斬・死nデRぇラ」の激突する。
読み方は「そうざん・シンデレラ」だろうか。
ここに来て少なかった切歌の新技がどんどん増えていく。
だが、マリアの新技は増えない。全部「†」が付くのに増えない。これが証拠のログ
マ、マリアさぁん……




切歌のこの両腕を広げてからの肩部ユニットでの攻撃は(格好良かった時の)マリアの攻撃に似ている(第4話)。
同門だから攻撃も似るのか。
だが、2人の間に優劣は付かない。
翼とクリスのようにウェル博士の望む共倒れの形に近付いている。




「きりちゃん、どうしても引けないの」

「引かせたいのなら力尽くでやってみせるといいデスよ」

「LiNKER?」

「ままならない想いは力尽くで押し通すしかないじゃないデスか」


埒が明かないと判断したのか、LiNKERを渡す。
LiNKER過剰摂取による絶唱の構えだ。
わざわざLiNKERを渡す辺り、騎士道である。
大好きをぶつけ合うのだ。
その想いに嘘を付かないためにも、互いに全力でなければ意味がない。
この世界における愛の大きさが伺える。



そして、互いに絶唱開始!
ついに行われる絶唱VS絶唱だ。
絶唱をぶつけ合うのはこれが初めてである。
LiNKER過剰摂取による似非適合者による絶唱であれどそれに通す想いは本物だ。
ならば、少女の歌には血が流れている――
血涙級の死闘が始まろうとしている。



「絶唱にて繰り出されるイガリマは相手の魂を刈り取る刃ッ!」
「分からず屋の調からほんの少し負けん気を削ればッ!」


まずはイガリマから仕る。
物理的防御の一切の意味を為さない魂を刈り取る絶対に絶対の一撃!
魂を刈り取るとなると大好きな人に向けるには相当にヤバそうなのだが、生身に当てないと大丈夫なのか?
ともあれ、手加減する気ゼロ。
響や未来といいこの世界の住民は大好きな人が相手ほど本気を出す傾向があるのだろうか。



って、そういう使い方するのかよぉー!?
いや、たしかに魔女っ子っぽいけど!
いきなりな魔女っ子でさえやらなかったぞ、それ!
鎌を箒代わりにするという新展開である。



ならばと調もかつては不発に終わった絶唱を歌う。
手も足も超巨大ノコギリだ。
シンフォギアお得意のハッタリを効かせまくりである。



って、巨大MAだ、これェー!?
何でこの2人はどこか面白さを出すのだろうか。
これもマリアの同門だからか?
ともあれ、MSの次はMAである。順当な進化だ。



「分からず屋はどっちッ!」
「わたしの望む世界はきりちゃんもいなくちゃダメ」
「寂しさを押しつける世界なんて欲しくないよッ!」


そして、絶唱VS絶唱が開始される。
物凄い絵だ。
美少女バトル物だということを忘れてしまいそうになる異形である。
こんなものを町中でぶっ放そうとしたのか?



「あたしが調を守るんデスッ!」
「例えフィーネの魂にあたしが塗り潰されることになってもッ!」


アウフヴァッヘン波形によってフィーネさんは目覚める。
より高いアウフヴァッヘン波形だとフィーネさんの目覚めを促進させるかはわからない。
もっともマリアとの会話を見る限り、F.I.S.にはそうした認識がありそうだ。
そして、それはフィーネさんとの繋がりがあるF.I.S.なのだからあながち間違いでもないだろう。
つまり、絶唱によって強力なアウフヴァッヘン波形が出ている今、切歌は常に塗り潰される危険を伴っている。
それでも引けず引かない覚悟で戦っているのだ。




「ドクターのやり方で助かる人たちもわたしと同じように大切な人を失ってしまうんだよッ!」
「そんな世界に生き残ったってわたしは二度と歌えないッ!」

「でも、それしかないデスッ!」
「そうするしかないデスッ!」


命を捨てる覚悟の差か、均衡は崩れ始める。
イガリマの絶唱は物理的な破壊力も相当あるようで。
殴っても良し、魂を切り刻むからガードも不能と凶悪性能のような……
また、調が「歌えない」と喋っていることから歌うことが好きなのだろうか。
「ORBITAL BEAT」を歌った以上、歌が大好きに違いないか(第5話)。




「例えあたしが調に、嫌われても――ッ!!」

「きりちゃん、もう戦わないで……」
「わたしから大好きなきりちゃんをもう奪わないでッ!!」


「大好き」が「大嫌い」に変わってもいい覚悟で切歌は戦っていた。
悲壮な覚悟だ。あるいは自棄か。
だが、調に嫌われることも厭わない切歌が調は好きなのか。
「大好き」をぶつけ合う戦いは辛いものになっていく。
互いに引けなくなったその時――



調が「ASGARD」を使った!
WA1の時代から伝わる伝統と実績の「ASGARD」に切歌の絶唱は阻まれる。
そして、これは即ち調が真のフィーネの器だったということになる。
思えば初めて「ASGARD」を切歌が使った(と思われた)時、調は体調不良になっていた。
あれはフィーネさんが目覚めの兆候だったのだろうか。
フィーネさんが目覚めたタイミングとしては響との変則S2CAによって強大なアウフヴァッヘン波形が発生したことによるのだろう。
二段ミスリードである。
マリアさんはミスリードになっていなかった気もするけどな!



「何、これ……」

「まさか、調デスか」
「フィーネの器になったのは調なのに、あたしは調を……」
「調に悲しい想いをして欲しくなかったのに、できたのは調を泣かすことだけデス……」


2人共、驚愕する。
片方は突然バリアを出して驚き、片方は自分がフィーネさんではなかったこと、そして大好きな人がフィーネさんではなかったことに驚く。
そして、切歌の行為が悲しくも空回り、それどころか調との戦いこそが大好きな人を失わせる要因になっていたことになる。
悲しい空回りである。
それもフルスウィングで空回りした。
だが、それも切歌に大好きな人がいることによるものである。
大好き過ぎて空回りしたとしても、誰もそれを責められない。
そして、シンフォギアは大好きな人を巡る物語なのだ。フィーネさんとか。



「あたし――本当にヤな子だね」
「消えてなくなりたいデス――」


フィーネを気取ってた頃でも思い出して、恥ずかしさに悶えることもままならない。
フィーネ化を誰よりも悩んで思い詰めて、その救いを大嫌いなウェル博士に求めるほど切歌は追い詰められていた。
そして、自分の行為こそが大好きな人を追い詰めていた――
如何にシンフォギア装者で非常識人でデースと言えど15歳の女の子である。
よってセプクに思い至るほどの慚悔を抱えてもおかしくはない。
そして、セプクのためにアームドギアが切歌に迫る――




「ダメ――きりちゃんッ!」

「調――」
「調ーッ!!」


だが、大好きな人を失わせないために調は自らを盾とした。
「大好き」と「大好き」は空回りから互いを失う結果になってしまうのか。
これがバラルの咒詛なのか。
わかり合えないことの辛さと苦しさもシンフォギアでは描かれているのだ。



さて、マリア・カデンツァヴナ・イヴディナーショーinフロンティアの結果である。
必死にマリアは歌った。
ラスボスかと言わんばかりに壇上に立って歌った。
息を切らすほどに歌った。
全力で、本気で、自分を貫こうとした。
採点は――



「月の遺跡は依然沈黙――」

「私の歌は誰の命も救えないの……セレナ……」


ハイ、ダメー! 凹みましたー! これっぽっちもブレないな、この人!
恐ろしいまでの折れない人だ。
折れすぎてもう直せないくらいに折れなくなってしまっている。
筋の金が入っているとはこのことだ(防人調)。
何物もを貫く無双の一振りとは何だったのか。
まぁ、いきなり全世界放送してカラオケやられても困ると思うが。
いや、「烈槍・ガングニール」の2番は素晴らしいですよ?



「この人、ビッキーたちと一緒だね」

「うん」
「誰かを助けるために」

「歌うなんて……」


醜態と言えなくもない結果だったが、その心が届いた人間もいる。
折れたとはいえ一生懸命。
また、一生懸命は届くものなのだ。
そして、届いた一生懸命で自分も一生懸命となって勝利の鍵となったのがこの3人娘だと忘れてはならない。
今後の3人娘の活躍に大いに期待できるというものだ。
繰り返すが「アニメを真に受けて何が悪い」は至言なのだ。
マリアさんは3人娘のいい餌になったさ……あれ?



「シンフォギア装者はこれから僕が統治する世界には不要」
「そのためにぶつけ合わせたのですが、こうもそうこうするとはチョロすぎるぅ……」


さて、ここでウェル博士の陰謀その何番目かが明かされる。
ウェル博士の頭の中には月を落とす計画が最初からあったのだろう。
そして、落とした後はソロモンの杖で武力による統治を図る算段だが、そうなると邪魔になるのはシンフォギア装者だ。
そのシンフォギア装者に対抗するためにAnti_LiNKERを開発したのだろうし、その完成のために拠点を投げ捨てたわけである。
周到に計画していたんですね、この人。
その計画が崩されそうになるとそりゃあ顔芸するわな。




「はぁあああああッ!?」

「約束通り二課所属の装者は片付けた」
「だから、ソロモンの杖をあたしに」


翼は気を失っているようだが、クリスは生きていた。
これには恒例のナイスリアクションである。
この人、軍師として才はあると思うが不測の事態に弱すぎる。
そして、クリスは翼と引き替えにソロモンの杖をもらい受ける契約のようだ。



「こんなままごとみたいな取り引きにどこまで応じる必要があるんですかねぇ?」

あ、やった! ギアスのボタン押した! やっぱり、押した!
むしろ、ちゃんとした意味があってボタンを押した方が意外である。
無意味にとりあえず押して嫌がらせしてもおかしくはなかった。
まぁ、ウェル博士は計画に従って動いているから、その場の楽しみだけで行動することはないように描かれてはいる。
無理や無茶はしても無駄はしないのだ。
なお、楽しみだけでは行動しませんが楽しみ含めての行動はする。



「えッ!? あれッ!?」
「何で爆発しないッ!?」

「壊れてんだよッ!」
「約束の反故とは悪党のやりそうなことだ」


だが、不発!
壊れているだけで不発になるとは爆発物の扱いが雑だ。
さすがのシンフォギアである。
爆発物を如何に爆発させないようにするかなどで時間を割くという無粋はしない。
最悪爆発しても発勁でかき消せるから無問題である。




「今更ノイズッ!」

「Anti_LiNKERは忘れた頃にやってくるッ!」


大ピンチになったウェル博士はノイズを出す。
だが、今更ノイズである。
ノイズは前回のように完全に和やか枠になってしまっている。
一掃しようとするがここでAnti_LiNKERである。
この用意周到さ……こういうところはさすがである。
クリスの存命に怯え、ギアスの故障に戸惑い、それでも最善の策を用意していた。 
ウェル軍師、さすがである。



「なら、ぶっ飛べッ!」
「アーマーパージだッ!!」


ならば久し振りのアーマーパージだ!
懐かしの技である。
そして、王道の技でもある。
でも、あの時はネフシュタンの鎧を脱いでもイチイバルを用意していた。
マッパになっても平気だった。
今はそんな二つ目を用意していない。つまり……



裸です! 裸になってソロモンの杖を弾きました!
これだけあっても十分にいきり立たないぃ……
真剣に何がいけないのだろう。
女の子が脱衣する。それもおっぱいがデカい女の子が全裸。
そそる要素はある。
いきり立つはずだ。
なのに、これっぽっちも……どういうことだ……?



己の不能を疑いながらもソロモンの杖を弾いてしまったため、ノイズたちは制御不能になる。
つまり、ウェル博士も攻撃対象になった。
そして、クリスは全裸だしシンフォギアを使えない。
まさにまさしく絶対絶命である。
この状況でも弦十郎なら何とかできるだろうが生憎クリスはOTONAではない。
映画トレーニングに音を上げていた描写は無意味ではなかったのだ。
地味な伏線ですね。疑うな。



「――先輩……ッ!」

追い詰められたクリスは目を閉じ叫ぶ。
先輩と、翼を呼んだ。
響たちと出逢ったことでクリスは誰かに背中を預けることを覚えた。
だが、未だに誰かに頼ることはできていない。
だから、こうして一時的にとはいえ二課を離反することになった。
そんなクリスが初めて誰かを頼ろうとした。
クリスにとってこれは甘えではなく絶対に絶対な信頼があって初めて為せる――壁を越えたことでできることである。



その時、千ノ落涙だ!
ノイズは一掃される。
翼は生きていたのか。
生きていても(風鳴一族だし)不思議ではないが、Anti_LiNKERが漂う状況では必殺技を使えない。
だが、こうして必殺技を使った。



煙が晴れ翼の姿が見える。
その姿は見覚えがあるシンフォギアで身を鎧っている。
だが、このシンフォギアは見覚えがありすぎる。
そして、流れるメロディはもしやデス!



「馬鹿なッ!?」
「Anti_LiNKERの負荷を抑えるため、
あえてフォニックゲインを高めず出力の低いギアを纏うだとぉッ!?」

ここで第1期の天羽々斬だとぉ!?
まさかの第1期の天羽々斬!
これは興奮のシチュエーションだ!
クリスの全裸を本気で忘れるほどである。
何というか、脱ぎ損っすね……これだけで十分な話題になれるのに……



「できんだよ」
「そういう先輩だ」


本気を出すよりも手加減する方が難しいのが世の常だ。
それはシンフォギアにおいても変わらないのだろう。
だが、それをできる技量を翼は持っていた。
さすが、ベテラン装者だけのことはあり装者最高の技量を持っている。
そして、翼にはそれだけの技量があるとクリスは信頼していた。
ここまで頼れる先輩はなかなかない。頼って大正解だ。



そして、復活の「絶刀・天羽々斬」を歌う!
第1期からシンフォギアを見守って来た身としてはテンションが沸騰ものである。
ある金子信者は思わず落涙したと言っているが誰が責められようか。責めるな。
この時の逆羅刹の構図も第1期第1話のそれと酷似しているのがポイントだ。
芸が非常に細かい。
今は戦姫絶唱シンフォギアGだが、この瞬間だけは戦姫絶唱シンフォギアだ!



「一緒に積み上げてきたコンビネーションだからこそ目をつむっていてもわかる」
「だからかわせる――かわしてくれる」
「ただの一言で通じ合えるから、あたしの馬鹿にも付き合ってもらえるッ!」


2人が激突したコンビネーションは訓練で積み重ねたもの――
つまり、互いに知り尽くしたコンビネーションだ。
だからこそ、その隙を突くことで致命傷を避けるばかりかギアスを破壊することができた。
弾幕が展開される中で首筋のギアスだけで破壊する――精妙なるコントロールである。
翼は本当に技量全振りのキャラだ。
そして、それを成功させるのもまた信頼であった。



「付き合えるかッ!」

ウェル博士はソロモンの杖を捨てて逃げ出す。
地味にクリスの台詞に突っ込んでいるのもポイントですね。
で、どてっとコケる。
萌えキャラ爆発させんでも……
これがあざといというヤツですね。
つまり、ウェル博士はシンフォギアで一番あざといキャラ。



第1期verの天羽々斬とはいえ、その鋭さに陰りは見られない。
翼はノイズを一掃しクリスは制服に戻る。
大好きな制服に二度と袖は通さない、通せないと予告で誓ったが、今こうして袖を通した。
二課に戻った象徴でもあると言えるだろう。



「回収完了」
「これで一安心だな」


そんなわけでついに、やっとソロモンの杖を取り戻すことができた。
クリスとしては悲願を果たせたこととなる。
それはやっと背負ってしまった罪を払拭できたことを意味するのだろうか。



「1人で飛び出して、ごめんなさい」

「気に病むな」
「私も1人では何もできないことを思い出せた」


あああああ、謝った!? 素直にクリスが謝ったぁ!?
フィーネにも詫びなかった小生意気なジャリガキのクリスが素直に謝った!
素直になって裸の自分を見せている。
ついに、ついにクリスが完全にデレた瞬間であった。
そして、翼はそれをあっさりと許す。
何という器の大きさか。
漂白した翼にデレたクリス……
第1期で劇的な成長を果たした装者たちがさらなる成長を果たそうとは……!



「何よりこんな殊勝な雪音を知ることができたのは僥倖だ」

殊勝ってレベルじゃないぞ!?
もう別人だよう!
あとやっぱりクリスはエロいじゃなく可愛いキャラなんですね。
全裸はそそらなかったけど顔を染めている姿は素直に可愛いと思います。
性的な肉体をしているのに……何かがおかしい。
あとエロさも可愛さも出していない翼さんも何かがおかしい。
いや、奏がいた時代は可愛かったと思いますが……あと格好良くて頼れるので防人としては問題ありません。

 

「それにしたってよ、何であたしの言葉を信じてくれたんだ」

「雪音が先輩と呼んでくれたのだ」
「続く言葉を斜めに切るわけにはいかぬだろう」

「それだけか?」

「それだけだ」


クリスが翼を信頼したように、翼もクリスを信頼した。
2人は信頼し合える関係になったのだ。
かつて共にご飯を食べられなかったというのに……



(まったく、どうかしてやがる)
(だから、こいつらの側はあたしの帰る場所なんだな)


こうして、クリスも迷って見失った自分の帰る場所を見つけることができた。
帰る場所を失ったクリスはそれを与えられるが受け入れることができなかった。
だが、今やっとそれを受け入れることができるようになった。
雪音クリスはここに一つのゴールへ到達した。
ならば、あとはみんなで帰るために響との合流を果たすまでだ。
こうして、もう1人の仲間である響を目指して2人は歩き出す。
……誰かマリアさんにも帰る場所を差し上げてくだされ。



「クソッ!」
「ソロモンの杖を手放すとはッ!」
「こうなったらマリアをぶつけてやるッ!」


追い詰められたウェル博士はマリアをぶつけることを考える。
それってジョジョASBを買い占めて転売するくらいに勝てるビジョンが思い浮かばないのですが。
絶頂時の翼の鋭さを見せつけられた後ではマリアでは勝ち目が薄いどころかなさそうだ。
マリアもフォニックゲインを抑えてシンフォギアを鎧ってみるか?
マントがないぞ! 無理ィ!



「調……目を開けて……調ぇ……ッ!」

翼とクリスは円満に解決したが、調は大ピンチ続行中だ。
血涙や吐血を流すのは大丈夫だが背中に血が流れていると何となくだがヤバい。
切歌は泣きじゃくるしかなかった。
もう踏んだり蹴ったりである。



「きりちゃん、じゃない」
「だとすると、あなたは……」

「どうだっていいじゃない、そんなこと」


フィーネさん、降臨! そして、この人も喋った!?
調に取り憑いていた路線で正しいようだ。
シンフォギアの全ての発端であり元凶だ。
だが、諸悪の根源と呼ぶにはその想いは純粋すぎる。
だからなのか、漫画版ではフィーネさんに救いが与えられている。



「そうね、誰の魂も塗り潰すことなく
このまま大人しくしているつもりだったけどそうもいかないものね」
「魂を両断する一撃を受けてあまり長くは持ちそうにないか」

「わたしをかばって……?」
「でも、どうして……」


自分最高あのお方最高のフィーネさんらしからぬ発言である。
フィーネが調をかばったというのも信じられない。
かつて妄執を見せつけたとは思えない。
変わったのか、変えられたのか。
かつてのフィーネの発言だが、響との出逢いで本当に変わってしまったらしい。
響にかけた最後の言葉は了子の言葉でもあり、フィーネ自身の言葉でもあったのだろう。
フィーネは了子の仮面を被っていただけで、二課との付き合いで見せたのはフィーネ自身だったと今ならわかる。



「あの子に伝えて欲しいのよ」
「だって数千年も悪者やってきたのよ」
「いつかの時代、どこかの場所で今更正義の味方を気取ることなんてできないって」
「今日を生きるあなたたちで何とかなさい」

「立花、響……」


フィーネさんは未来を今生きる人間に託した。
世界を自分色に染めようとしていた人とは思えない。
だが、第1期第13話で自分で語ったのだがフィーネさんも挫折と悲しみを抱えている。
わかり合えない人間の姿を見たからこそ、人間を支配する道を選ぼうとしたのだ。
フィーネさんも最初はわかり合おうとしたのだが、何度も挫折し結果歪んでしまったのだろう。

だが、わかり合えない人間でもわかり合えること、繋がれることを響に教えられた。
そして、その最後には響を信じた。
ならば、託すのも道理である。
フィーネは今もまた響を信じているのだ。



「いつか未来に、人が繋がれるなんてことは亡霊が語るものではないわ」

こうして、ついにフィーネさんは成仏した。
人を繋がる道を選べなかったフィーネさんだが、最後にそれを信じて去って行った。
あのお方への想いは成就することはなかった。
だが、かつて否定された生き方を響が肯定してくれ、それに未来を託すことができた。
フィーネさんにとっては救いに他ならない。



「目を開けてよ、調……」

「開いてるよ、きりちゃん」

「身体の怪我が……?」


それと同時に調も目覚める。
傷も治ったようだ。
フィーネさんの能力、不思議が一杯である。



「調……ッ!」
「でも、どうして……」

「多分――フィーネの魂に助けられた」

「フィーネに、デスか?」


また、「大好き」をぶつけた!
今度は暖かい「大好き」だ。
2人にとってフィーネさんは勝手に魂を塗り潰す極悪な人としか思えなかっただけに僥倖だろう。
あの人も弱い部分も脆い部分も抱えた同じ人間なのだ。
用語集で精神の化け物って言われたけど。



「みんながわたしを助けてくれている」
「だから、きりちゃんの力も貸して欲しい」
「一緒にマリアを救おう」


調も大好きをぶつける。
相思相愛ですね。
金子彰史がマム並みに血ぃ吐かないかちょっと真面目に不安です。



「……うん」
「今度こそ調と一緒にみんなを助けるデスよ」


2人は「大好き」をぶつけ合った。
ならば、今度は「大好き」を合わせる時だ。
2人分の「大好き」でマリアを、みんなを助ける。
「大好き」でもわかり合えない。けれど、「大好き」だからわかり合える。
わかり合う道は難しく、それでどこまでも大切なものであった。
そんな2人を見たから、フィーネさんもそれを信じるようになったのかもしれない。



「マリア、もう1度月遺跡の再起動を――」

「無理よッ!」
「私の歌で世界を救うなんて……ッ!」

「マリア、月の落下を防げる最後のチャンスなのですよ」


響と未来、翼とクリス、調と切歌、そしてフィーネさんまでも救われた。
そんな中でノー救済がこの人である。
誰か優しくしてあげてください。
(主にウェル博士から)生温い視線が集まるばかりですよ。
カップリングから1人だけ省かれているし。
金子のおっさんの溢れる愛の影響か……




しかも、殴られたぁ!
2回目です。しかも、バックナックルです。
レイプ目でエロさはあると思うんですけどね。
もうこの人はエロさでしか売れないのか?
グラビア崩れのAVアイドルみたいな悲惨な末路だな。
……生きるのを諦めないでください。



「月が落ちなきゃ好き勝手できないだろうがッ!」

あ、やっぱり好き勝手したいんだ!
というか、それが一番先行しているだろ!
将来の夢が好き勝手したいというのもさすがである。
オデッサ首魁のヴィンスフェルトか何かですか(世界征服の目標、豪華な暮らしをしたい)。



「あ? やっぱり、おばはんか」

ナスターシャ教授はウェル博士に月落下を阻止する手立てを諭すが馬耳東風。
それどころかおばはん呼ばわりである。
さすがである。
ある意味、フィーネさん以上に曲がらない人だ。




「そんなに遺跡を動かしたいのならアンタが月に行ってくればいいだろうッ!」

「マムッ!?」


さらにナスターシャ教授を飛ばした!
ついに物理的行使に乗り出した。
ウェル博士の暴走は留まることを知らない。
せめて先史文明の智慧から二課に対抗する手段を探せとか言えばいいのに。
追い詰められると判断力が弱る人らしい。



「有史以来、数多の英雄が人類支配を為し得なかったのは
人の数がその手に余るからだッ!」
「だったら支配可能なまでに減らせばいいッ!」
「僕だからこそ気付いた必勝法ッ!」
「英雄に憧れる僕が英雄を越えてみせるッ!」

人類絶滅すれば戦争は起きない並みに無茶振りである。
狂人であるが行動力と実行力を持っているのだから困った物だ。
あと英雄はいないんじゃないいらない教の人のようで。
ちょっと見方を変えればアシュレーに見えてくるかも……?



ここにマムロケットが完成した。
燃える展開や感動する展開が続いた中で唐突にこれである。
やっぱり、ズルい。
シンフォギアもとい金子彰史はズルい。
そして、これを特に意図していないだろうと思われるのがズルい。

+=




「よくもマムをッ!」

「手にかけるのかッ!?」
「この僕を殺すことは全人類を殺すことだぞッ!」


響と違ってマリアは怒りでガングニールを構える。
それに対してどや顔なウェル博士であった。
マリアは怒りや悲しみ、凹みと響の持っていない負の部分を象徴している。
だが、ここまで背負うことになろうとは……
ある意味、シンフォギア世界の不幸の全てを背負っているかのようだ。



「殺すッ!」

「えぐうううぅううッ!?」


かつては命を奪うことを躊躇い、奪っても涙を流したただの優しいマリアだったが、今は怒りに身を任せてウェル博士を殺めようとする。
もう自棄だ。
ウェル博士を殺した後は押し潰されて自害も躊躇わないだろう。
これはたしかに助ける必要がある。
調はマリアのことをよく理解していたのだった。
マリアに重責を背負わせない道を選んだナスターシャ教授もマリアを理解している。
ナスターシャ教授の行動は存外間違えていなかったのかもしれない。



ここで響が道を遮った。
思わず踏みとどまるマリアだった。
響みたいに真っ直ぐに一直線に行かない人である。
悲しいね。



「そこをどけ、融合症例第1号ッ!」

「違うッ!」
「わたしは立花響16歳ッ!」
「融合症例なんかじゃないッ!」
「ただの立花響がマリアさんとお話ししたくてここに来ているッ!」


自己紹介から始まる響式交渉術開始だ!
でも、クリスの時より大分省かれている。
だが、それでも話したい。
響はわかり合おうとする人間なのだ。
それに対してマリアはわかり合おうとしない人間か。



「お前と話す必要はないッ!」
「マムがこの男に殺されたのだッ!」
「ならば、私もこいつを殺すッ!」
「世界を守れないのなら私も生きる意味なんてないッ!」


完ッ全ッに自暴自棄である。
もっとも、信じていて敬愛する人間がロケットになって空を飛んでクッキーになったのだから自暴自棄にもなるか。
ダントツのメンタルの弱さを炸裂させている。
だが、等身大のメンタルでもある。
そういう意味で愛おしさすら漂ってくる。



立ちはだかる響に構わずアームドギアを突き立てようとするが、響に素手で止められる。
素手で止められる。
素手で止められた。
これはやはりマリアには躊躇いがあったということか、それとも響は融合症例でなくなったのではないのか。
ただマリアさんがヘタれているだけというのは止めて差し上げろ。




「お前……ッ!」

「意味なんて後で考えればいいじゃないですか」
「だから――」
「生きるのを諦めないでッ!!」


ついにシンフォギアGで「生きるのを諦めないで」が炸裂だ!
シンフォギアを代表する言葉である。
それがマリアへ向けられた。
生きるのを諦めようとしているマリアと生きるのを諦めない響……
光と影の対比である。悲しいね。



「聖詠ッ!?」
「何のつもりだッ!」


そして、聖詠!
だが、今の響は融合症例ではない。
その情報は神獣鏡(シェンショウジン)の効果をするウェル博士から聞かされていることだろう。
だが、それでも聖詠を歌った。
生きるのを諦めない時に響は聖詠を歌うのだ。
(なお、今回聖詠の読み方が「せいえい」で確定しました)



その時、マリアの変身が解けた!
さらに膨大な粒子が飛び散る。
明らかに普通ではないことが起きている。
今の響は融合症例では起こせない奇跡を手にしているのか。



「あれは……」

「マリアを助けるデスッ!」

「あの馬鹿の仕業だな」

「ああ、だけど立花らしいッ!」


その光を見て各々が各々の感想を抱く。
しかし、マリアは助ける対象であった。
状況的には響のがヤバいはずだが……
人望か?




全裸全世界中継だとぉ!?
凄い絵である。物凄い絵である。
変身シーンは実質一瞬だからまだしも、今回は堂々と全裸である。
謎ポエムの「裸で叫ぶその歌」はそのまんまの意味だったのだ。
少しは工夫しろ!
なお、いつもは工夫しすぎて意味わからんのであえての直球ということなのかもしれないが。



「何が起きているッ!」
「こんなことってあり得ないッ!」
「融合者は適合者ではないはずッ!」




「これはあなたの歌?」



「胸の歌がして見せたこと?」



「あなたの歌って何ッ!?」



「何なのッ!?」



「イッちゃえ響ッ! Heartのゼンブでッ!!」

第1期第12話のフィーネさん並みに止まらないマリアの疑問!
そして、それを後押しする未来!
未来の台詞は「撃槍・ガングニール」の歌詞だ。
それは、つまり――





「撃槍ッ!!」
「ガングニールだぁあああッ!!!」


生きるのを諦めない響の元にガングニールが復活した!
これはまさに「撃槍」のサブタイトルに相応しいフィニッシュだ。
悲しいが「烈槍」では務まらない。
劇的な変身ではあったが第1期とは違いXD(エクスドライブ)モードではない。
だが、それだからこそ響にガングニールが戻った実感がある。
響の手には正真正銘の「響のガングニール」が戻ってきたのだ。

でも、このガングニールってマリアのガングニールをパクったものなんですかね?
これがNTRというものですかね?
ええい、マリアさんなんかもう知るか!
あと1話も残っていれば挽回はできる。
生きるのを諦めなければマリアも輝ける!
奏から響はその気持ちを受け取った。
マリアも受け取って、セレナの気持ちを未来へ行くことだって――
……できるよね?
次回へ続くッ!


シンフォギア感想トップに戻る TOPに戻る