バキ道感想 第52話「のこった」



巨鯨墜つ! 巨漢墜つ!
まぁ、巨漢の呪いは常に根深い。
巨漢はまずは噛まれるのがバキというか格闘漫画のお約束ですよ。
では次行ってみよう。

巨鯨は投げられる。
張り手の力を利用した見事な合気であった。
そして、巨鯨は力士。
力士である以上は地に着けば負けだ。
力士は常に力士であることに縛られている。 喧嘩稼業の金隆山も横綱としての対面を重視しなければいけないために、戦い方が縛られていましたな。

「のこったッ」「のこったッッ」
「大関巨鯨ッッ」「秘術合気をしのいで見せたァッッ」


馬鹿な、巨鯨が墜ちなかった!?
投げられたところで素早く身を翻して地面を蹴って堪えた。
いつもの巨漢ならこの時点で負けていた。 巨鯨は意外な身のこなしを見せて並みの巨漢とは違うことを見せつけたのだった。

ジャックでさえ一度投げに入ったら簡単に崩されていたのに……
まぁ、そこは育った環境の違いがありそうだ。
ジャックは何をやられても気を失わなければ反撃できるのに対し、巨鯨は転んだら負けの相撲に生きてきた。
なので、転ばないことに関しては細心の注意を払っているのだろう。
この受け身からわかるように巨鯨はたしかに鍛錬を怠っていない。 投げられた時の対処もしっかりと準備しているのだ。
ただの才能任せの巨漢なら失禁している!

会長は驚愕する。
巨鯨が受け身を取ったこと……ではなく、巨鯨が投げられたことに驚いた。
曰く零鵬と獅子丸だけが巨鯨を投げられるようだ。
つまり、巨鯨を投げられる人間は力士でも限られるのだ。
何か角界でも試し割りの素材みたいな扱いを受けていないか? 地下闘技場戦士と力士の双方から試金石扱いを受けているな、巨鯨……

これには観戦している地下闘技場戦士も驚く。
刃牙は投げたことに驚き、克巳は耐えたことに驚いている。
克巳が驚くのはわかる。
だって、巨鯨は巨漢だし。
それでなくとも最大トーナメントで並み居る猛者たちを投げた姿を見ている。
そして、それに対して堪えることのできた格闘家はいない。
渋川先生が体格に勝る相手を投げるのは当然のことだし、それに耐えたことが異常なのだ。

でも、刃牙は渋川先生の戦力を低く見積もりすぎていないか? 投げたってそりゃ投げられますがな。
何なら刃牙だって合気を使えるから投げられる。
バキ道の刃牙は刃牙道の刃牙以上に何を考えているのかわからない。
勇次郎という軸を失うと何かよくわからない人になりますな。

「わたしは投げられたことに心底ショックしてます」
「大相撲が「他競技」に投げられる」「断じてあってはならないこと…ッッ」


地下闘技場戦士側のはずの金竜山だが、あくまで力士視点で驚いていた。
力士は力士以外に投げられてはならぬ!
金竜山は最大トーナメントで知見を広げたのだと思っていたがあまりそうではないようだ。
力士は格闘貴族と呼べるほどの気位の持ち主とは言っていたが、どうやら金竜山自身もその傾向にあるようだ。
勇次郎にぶちかましを止められた挙げ句、押し切られたことはすっかり忘れたか。 あれは相手が人間じゃなく鬼だから仕方ないか?

力士としては巨鯨が投げられたことが想定外。
地下闘技場戦士としては巨鯨が耐えたことが想定外。
お互いに想定外の一幕であった。
刃牙だけは例外的に力士側視点である。
まさかしてリアルシャドーで相撲を何度も取って力士になりきっているのか?
「あのサイズに効かせるンだァ……………」

そんな刃牙の珍妙発言である。
渋川先生は最大トーナメントでジャックにロジャー・ハーロンと巨漢と戦い投げてきた。
巨鯨ほどの規格外のサイズではないとはいえ、フィジカルモンスターのジャックに合気が通用していたのは大きい。
でも、刃牙的には6倍の体格差ともなれば理合が通じないと思っているのか?
その刃牙はリーガンに真っ向勝負で勝っているし……
何ならトリケラトプス拳で宿禰を投げているし……
いつの間にか刃牙が不思議ちゃんになっているよ。

巨鯨としての重量を感じさせる術に投げと予想外の展開が続いた。
だが、巨鯨は持ちこたえた。 巨漢とは思えぬ粘り腰である。
そして、巨鯨の戦力は在りし頃の渋川BOYよりは上であることは間違いない。
今の渋川先生とどちらが上か……
いや、上になられても困るけど。

ここで巨鯨は蹲踞、中腰である。
ファーストコンタクトは掴んで張り手という相撲外の行動を取った巨鯨ではあるが、
今度は相撲オブ相撲のぶちかましを狙っている。 巨漢らしからぬ運動神経に巨漢らしからぬ心構えである。

でも、これだと巨漢の持ち味をあまり活かせていない気がする。 やっぱり巨漢と言えば酷いやられ方をしないと。
その点、除海王はわりと点数が高い。
金的を食らって空振りしまくりなのに調子に乗ったところを一発で仕留められると芸術的な負け方だった。

これを見て金竜山は合気の出る幕ではないと呟く。
結果、みっちゃんにどっちの側だと突っ込まれてしまう。
そりゃ突っ込まれる。
今の金竜山はみっちゃん以上にツッコミどころに溢れている。
とはいえ、金竜山は渋川先生がジャックのタックルを食らった瞬間を見ているのかもしれない。
片足が使えなくなっていたとはいえ、並外れたウェイトとスピードには合気でさえ対処できない……とは前に書きましたな。
それを鑑みると巨鯨は最適解を選んだとも言える。 下手に小細工するよりも防御を考えない特攻が一番効果的なのだ。
実際、Jr.もスピード一点突破をしている。
飛び抜けたパラメーターをぶつけられると対処に困るのが渋川先生の弱点かも。
そして、巨鯨は突っ込む。
ぶちかましかと思ったら張り手だ! いや、それは破られているだろ!
ぶちかましまでは良かったけど、一度破られた技をもう一度使うのは何か最高に巨漢って感じですな。
いや、最初の1回は慌てて撃ったからノーカンということか?

「まいったなァ~~~~…」

ともあれ、今の巨鯨には油断はない。
火飲を吹き飛ばした時のような本来のスタイルを引き出しているのだろう。
それに対して渋川先生はまいったなとコメントする。
まさか、最初の投げで仕留められなかったのが致命傷だったのか? いや、自分の合気がこんなフィジカルモンスターをものともしないくらいに磨き上げられていたとはまいった……みたいな自画自賛かも?

巨鯨はまさか合気に耐えた。
実際、合気に耐えた人物はほとんどいない。 投げられた後に足を掴んで態勢を崩した昂昇、投げられた後に首を絞めた柳くらいではなかろうか。
あとは隻腕のオリジナルを見つけようとしていた頃の克巳か。
まぁ、そこは渋川先生が最大トーナメント以降ほとんど戦わなくなったのも大きいのですが。

そんな巨鯨は想定外の巨漢と言えよう。
最新型の巨漢は侮れない。
まぁ、読者としては巨漢がそのまま勝ったら何も面白くないので凄惨な散り方をしてもらいたいのですが。
これで巨鯨が勝ったらただの老人虐待ですよ。

ともあれ、次回へ続く。
次週は当然休載だ!
ま、まぁ、3週掲載1週休載くらいのペースならちょうどいい感じだと思いますし……