刃牙道感想 第82話「強靱(つよ)き肉体(からだ)」



不意打ちのエア斬撃が炸裂だ!
その破壊力は幻影なれど保証済みだ。
そして、相手の緩んだ隙を狙う相変わらずの曲者っぷりである。
本部も同じように出世したいとか言ってみるか?
リアリティのありすぎる叫びでむしろ涙を流してしまうかも……
それを誰も責められまい……

「出世したい!!!」
現世このよで!」


出世したい! 部長になりたい! 給料を増やしたい!
そんな出世欲を込めた幻影刀が炸裂する。
こんな心の叫びをしていることから、どうやら武蔵の出世欲は本心のようだ。 俗だがわかりやすくもある。
そして、それだけで天下無双の域に達したのだから、武蔵の出世欲は純粋かつ大きなものなのだろう。

その幻影刀を勇次郎は何もせず受ける。
だが、驚愕はなくむしろ笑いさえ見て取れる。
だからか、武蔵も違和感を感じていた。
あとみっちゃんが地味に幻影刀に反応している。
最初は全然反応できなかったが、何度か見ていくうちに感知できるようになったらしい。
みっちゃんも成長しているのだ!
巨凶度はかなり成長していると思う。

「なんと強靱つよ肉体からだなことよ」
「生身の手応えではない」
「まるで鎧 甲冑の手応え」


そこまでわかるのかよ、エア斬撃!
実際に斬った時と同じ手応えを武蔵は得られるのだろう。
エア斬撃はただ驚かせるだけでなく相手の戦力を分析する大きな意味があるのだった。
そりゃ武蔵もエア斬撃を事あるごとにやりますわな。

一閃かつ一瞬で生死が分かれる世界で生きていくに当たって、相手の戦力を分析する能力が必要とされるのは明白だ。
そこで武蔵は限りなくノーリスクな偵察方法としてエア斬撃を編み出したのだろうか。
それに対する対処に加え、斬った時の手応えで相手の肉体がどれほどのものかわかると。
意外にも深い思惑のあるエア斬撃だった。

「刃が通らん」
「幾度も袈裟懸けに屠ってきたが」
「鎖骨を断てなかったのは初めてだ」


勇次郎の肉体の強度は武蔵をして桁違いらしい。
鎧と同程度の強度によって鎖骨さえも断てないのだ。
ちょっと固すぎるような……
いや、それが範馬勇次郎なのだろう。
その辺、刃牙はポキポキ折れるので筋肉はともかく、骨では勇次郎の域に達していないようだ。

「興醒めだ」
「実際に抜きもせぬまま」「斬れぬだの通らぬだの断てぬだの」
「剣とは言葉遊びか」


そのエア斬撃を勇次郎は完全否定した。
さすがは100kgのカマキリを否定した男だ。
如何によく出来ていようと空想の産物には価値がない。
なので、実際に斬らないエア斬撃に価値はない。
その主張はあの頃から一切変わっていない。
エア斬撃をわざと受けたのもかわすまでもないものだからか。
さらに武蔵を挑発している。
挑発は武蔵の得意技だがそれを勇次郎が返す形となった。
これを受けて武蔵は完全に無表情だ。
険悪なムードが漂う。
こりゃ誰かが守護ってやらないと……
でも、この2人に割り込むのは核爆弾の落下地点に身を置くようなものだ。
本部は今からでも遅くない。マシンガンで武装するのだ。それでも勝てないから。

勇次郎は純米酒徳川の瓶の頭を指で飛ばす。
その切り口は刀で切り落としたように鋭利だ。
そして、切り落とされた頭は武蔵の額に激突し血が出る。
毎度のことながらかわさない武蔵であった。
この人は命に危険がないとかわさない人なのか?
意外とアライJr.なんかは相性がいいかも。

空想の斬撃より現実の瓶の方がまだ痛い。 勇次郎の瓶飛ばしにはそんな意図があるように思える。
同時に剣でなくとも斬れる。
そんなものを見せつけた。
最強同士の前哨戦は互いに一歩も譲らない。
いきなりヘタれた刃牙とは大違いだ。

「爺ィ」
「持ってきてやれ」「剣が欲しいとよ」


って、ダメぇ!
勇次郎、いきなり本物を持たせろと申した。
武蔵に刀はアムロにガンダムを乗らせるようなものですよ。
とにかく危険だ。
だが、帯刀した武蔵を越えねば勝ったことにならない。
そこが武蔵の気難しいところですな。
やっぱり、本気は素手とかでどうでしょうか……
初代鬼の貌の持ち主とかで……

そんなわけで勇次郎と武蔵が庭で対峙する。
武蔵は大小を備えている。
烈戦の時は國虎だけだったので、これにて完全武装だ。
武蔵のお眼鏡に適う刀をもう1本所持していたのだな、このジジイ。
無駄に準備がいいクソジジイだ。

この大小の取り揃えに満足しながら武蔵は大刀を一文字に構える。
背景が揺らめくほどの本気だ。 守護者が逃げ出している合間に既に死合い開始だ。
あいつ、全然守護れてねえな……
それどころか煽ったからこんなことになった気もする。

「っほ~~~~!」
「豪気!」


そんな武蔵の刀を片手ハンドポケットのままで勇次郎は握る。
あまりにも唐突な行動だからか、武蔵も容易く握らせてしまったのだろうか。
かつて勇次郎は本部の刀をポキポキと折ったことがある。 それと同時に本部の心もポキポキに折った。
勇次郎の素手は日本刀を破壊することができるのだ。
今回のあの力技を見せるのか?
それで武蔵の刀を破壊すれば後続たちも安心、本部が守護らなくても安心となるのだが……

「宮本」

勇次郎は何故か名字を呼んで凄む。
武蔵ではなく宮本……彼岸島かな?
ともあれ、これから一体どんな動きを見せるのか。
ポキポキに折って素手でやるか?
でも、その隙に武蔵は脇差しで斬るくらいはやりそうな……
やはり、本部が守護らんとダメか?
本部に期待がかかりつつ次回へ続く。


何するものぞ、エア斬撃!
まったく狼狽えない勇次郎だった。
息子とは違いますな。
刃牙の狼狽え方はとんでもなかったが、あれはリアルシャドーを日課とする故の弊害か。

このまま、まさかの死合い開始だろうか。
勇次郎は強者と戦うのが生き甲斐であると同時に、強者と戦わないのも仕事である。
死刑囚の時のように! ピクルの時のように!

となるとこの矛をどうやってか収める必要がある。
このまま決着となればせっかくリーガンになったジャックはどうすればいいんだ。
この危機を救えるのは本部しかいない。
本部の双肩に全てがかかっている。

でも、本部が関わるとみんなやる気を出して武蔵に挑んじゃうんだよなー……
烈も、勇次郎も、本部が関わったおかげでテンション上げた気もするし。
そりゃ本部如きにアンタじゃ無理だ俺が変わるなんて言われれば、やる気になろうというものであるが。

つまり、むしろやる気を削ぐ人に守護ってもらえばいいかもしれない。
花田とかどうでしょうか。
本部の技を使えるし! だから、煙幕も使えるはずだし!
花田に守護るとか言われても「誰?」ってなる人も多そうだし!
今、本部流が熱い……



刃牙道(8): 少年チャンピオン・コミックス