以前の記事で面白かった面白かったと言いましたが、特に良く出来ているのが防御システム。
そんなわけで防御システムについて語ります。
前の記事はシステムの仔細の解説はあえて省きましたからね。
今回の記事はクソ3への怨嗟を省きます。もう言いたいことは言い尽くした。
さて、隻狼には大別して3つの防御システムがある。
これらの相互関係がよく出来ていてプレイの楽しさに繋がっている。
この防御システムは間違いなくソウルシリーズから明確に進化した点だ。 ゲームとしての面白さだけでなく、忍者アクションの説得力を付与することにも繋がっており見栄えが大変よろしい。
ソウルシリーズの最適解の一つが装備できる最大限の鎧を着けてゴロゴロと転がることでしたからね。
見栄え最悪である。ゲーム的にもこの単純な動きが強すぎて面白みがなかった部分もある。
・ガード
隻狼の防御の基本。 単純に相手の攻撃を受ける。
主人公の持つ刀、楔丸は不意を突かない限りは人を殺すためには何回も斬る必要のあるわりとナマクラ刀だが、こと受けることに関しては異常に優れている。
同じ刀の斬撃を受け止めても折れないのはもちろん、数倍の長さと太さを誇る大剣の一撃を受け止めても折れないし、自身を遙かに上回る体躯の化け物の攻撃を受け止めても折れない。
ディフェンスに定評のある楔丸とはこのことである。
というわけで、ガードしてもHPが削られることは基本的にない。
(ただし、一部攻撃では削られてしまう)
これだけなら安定の行動だが、リスクとしてガードを行うと画面中央下部に表示される体幹ゲージが蓄積する(体幹はダメージを受けても蓄積する)。
この体幹は隻狼の中核を担うシステムで敵味方の双方に存在する。
敵の体幹を最大まで溜めると態勢を崩して忍殺を行える。
忍殺が決まると問答無用に即死。雑魚はもちろんボスだろうが即死。 ステルスゲーは即死システムを採用しているゲームは多いけれど、雑魚どころかボスまで即死できるのが大きな特徴だ。
では、こちらの体幹も最大まで溜まると即死なのかとなるとそういうわけではなく。
このように態勢が崩れて無防備になる。
そうなると当然危険……だけど、意外と危険ではなかったりする。
というのも、崩されても攻撃が確定するわけではない。
この状態は回避でわりとすぐにキャンセルできるので、例えば敵の連続攻撃の最後に崩された場合は追撃が確定しない。
当然、連続攻撃の最中に崩されれば確定でダメージを食らうが、存外そうでない場面も多い。
そのため、ガードは非常に安定度の高い択となっている。 困ったらきちんとガードを心がけると受けるダメージが減る。
実は攻撃の初動をガードでキャンセルできるため、とっさに入力しても間に合ったりするのがミソ。
おまけでガード中に攻撃を受けずにいると体幹が回復していく。 ガードすると体幹が溜まるけど、体幹を減らすのもガードなのだ。
なので、とりあえずガードしろ。
では、ガードばかりすればいいのかとなると違うのが隻狼。
まず、隻狼はガードしても反撃が確定しない。 ソウルシリーズのようにガードを固めてから反撃するというド安定のプロセスはあまり有効ではない。
ソウルシリーズでもっとも安定していて楽な攻略法は強力な盾を構えて反撃するというチキン戦法だったので、それが通用しなくなったのは非常に大きい。
また、ガード中は移動速度が非常に遅くなる。 ここも一切移動速度が落ちなかったソウルシリーズとは違う点で、ガードしながら相手の攻撃をかわす動きができない。
もっとも、後述のステップとジャンプには問題なく移行できるので、とりあえずガードを固めて様子を見るという動きそのものは強い。
強いけれど、先述の反撃と合わせて脳死のガンガードのメリットが薄くなった。
加えて「危」と表示される攻撃はガード不能になっている。 スタミナが許す限り、ほぼ全ての攻撃をガードできたソウルシリーズと違うところであり、ガンガードという腑抜けた択を許さない隻狼の意志の体現である。
こうした攻撃には後述のガード以外の対応が必須となる。
隻狼のガードは強い。
強いが安全という強さであり攻めには繋がらない強さである。
なお、通常プレイではその強さの恩恵に無意識にあずかっているので、なかなか強いとは意識しにくい。
体幹上昇速度アップ+ガード時に削りダメージが発生するハードモードではガードがほとんど機能しなくなるので一気に難度が跳ね上がるし、ガードの強さを再認識できる。
認識した結果、ラスボスには勝てなかったよ……
・弾き
隻狼の防御システムの売りにしてソウルシリーズとの大きな相違点。 相手の攻撃の直前にガードを入力することでガードが弾きになる。
カキン!と金属音が鳴って格好いい。
それだけではなく弾きによるメリットとしては敵の体幹が溜まる。 ガード単体には直接的なメリットはなかったが、弾きにはそれが用意されているのだ。
弾きで体幹を最大値まで溜めても当然忍殺可能。
防御から攻撃どころか即死までに一気に転じることができる。
当然、ボスの体幹も弾きで溜めることができるのでボス戦でも有効だ。
次に相手に隙を生じさせることができる。 ガードすれば隙のない攻撃も弾くことでよろけさせて反撃できる。
体幹を溜めつつさらに反撃でダメージを与えることができるのでメリットが大きい。
とはいえ、全てが全てに該当するわけではなく、弾いても反撃できない攻撃はいくつかある。 これには別の対処が必要になってくる。
また、こうしたオフェンス的な効果以外にも防御面にも秀でている。
弾きはガードできない攻撃の一部を弾くことができる。 リーチとダメージに優れて対処に困る突き攻撃がその代表例。
さらに体幹が蓄積していても弾けば崩されることはない。 こうした防御的なメリットは序盤はあまり意識しないのだが、攻撃が激しくなる後半になるほど見逃せなくなる。
ガードの上位互換とも言えるメリットだらけの弾き。
それならハイリスクなんでしょ?とは存外ならないのが特徴。
相手の攻撃を受ける直前にガードとは言ってもその判定はけっこう緩くわりとお手軽に発生する。 また、弾きが失敗するにしても入力のタイミングが遅ければ攻撃を食らってしまうけれど、逆に速ければガードに切り替わるだけなので失敗のリスクは低い。
それに入力を工夫すればさらにリスクは下がる。
具体的にはガードした状態で相手の攻撃に合わせてガードボタンを離す→再び押すとやれば、タイミングが前後のどちらにズレてもガードになる。
弾きは失敗した時のリスクが少ないのだ。
そのため、判定が緩いからこそ意識せずとも弾きは出るし、ローリスクだからこそお手軽に狙っていける。
こうして自然と弾きに慣れ親しんでいきながら、やがて弾きが大きなウェイトを占める後半戦へとシフトしていく。
そして、ラスボス戦になるとついには弾きだけでは対処しきれないので、あらゆるシステムを駆使して挑むことになる。
隻狼はこの難易度の曲線が非常に良く出来ている。
ソウルシリーズにも弾きと似た防御システムとしてパリィが存在していた。
だが、両者はまったく別物である。
パリィは成功すれば大きなリターンを得られる代わりに失敗すればダメージ確定のハイリスクハイリターンのシステムだった。
だが、リスクというものは負わずに済むのなら負わないのが一番である。
そのため、パリィを狙わずとも勝てるように立ち回るのが正解になってしまう。
なので、パリィは攻略においてはいまいち活用されにくかった。
パリィできる攻撃、できない攻撃が見た目ではわかりにくいのもその傾向に拍車をかけていた。
(そもそもガードや回避がローリスクミドルリターンくらいに強かったのでわざわざパリィせんでもという事情もあった)
ブラッドボーンにおいてはパリィのリスクそのものを下げることで活用しやすいようにしたのだが、それでもやはり攻略の一部にはなれど軸を担うには至らなかった。
が、弾きは成功しても戦況を打開できるほどのチャンスを得られることは少ない代わりに、失敗した時のリスクは低い。
ローリスクミドルリターンのシステムになっている。 気軽に狙えつつ成功した時にはたしかなリターンがある。
そのリターンも積み重ねれば大きく生きてくる。
システムとしての完成度はパリィよりも大きく上がった。
格ゲーでもハイリスクハイリターン系の防御システム、ブロッキングはいまいち発展しなかったしね。
強力なシステムの弾きだが弱点もある。
まずは先述したガードも弾きもできない攻撃。
次に意外と意識しにくいのは弾いても反撃できない攻撃だ。
弾けばその場を凌げるのだが反撃の糸口を掴めず、結果としてダメージレースで不利を背負ってしまう。 弾きはローリスクでいながらメリットを狙える故に、それに固執してしまい真に有効な選択肢を選択できなくなってしまうのだ。
また、大きな弱点として弾いても体幹は溜まる。 体幹が溜まった状態でも弾くことはでき、ガードのように崩されることはない。
だが、先述の反撃できない攻撃と合わせて、弾いているはずなのにいつの間にか窮地に追い詰められることはけっこうある。
強力かつローリスクだが弾き一辺倒ではチャンスを掴めない。
また、非常に上手いシステムとして体幹の仕様もある。
体幹は溜めきれば忍殺で即死を狙える。弾くことで体幹を溜められる。
じゃあ、弾きだけ狙っていれば勝てる……ということは決してない。
体幹の回復速度はHPが多い状態ほど速くなる。
そのため、HPが減っていない状態では相手が攻撃の手を休めた時に体幹が回復してしまう。 体幹を溜めるにしても守り一辺倒ではむしろ効率が悪いのだ。
隙を見て反撃しなければダメージを取っていかなければいけない。
弾きは防御手段としては優秀だがそれ単体では守ることしかできず、やがてはじり貧になってしまう。
弾きは爽快感やメリットを用意した上で初心者でも使える間口の広さを持っているだけでなく、それだけでは勝てない奥深さが秘められている。
隻狼の軸を見事に担う完成度が非常に高いシステムだ。
・ステップ
ソウルシリーズ経験者が騙されて死ぬシステム。 短距離を素早く移動する。出始めに無敵時間があるので回避に使える。
ソウルシリーズにおいてはこのシステム(正確にはこの頃は前転)、非常に強かった。
無敵時間が長いし移動距離も長い。
延々と転がり続ける鎧騎士の姿はもはや代名詞のレベルである。
その気持ちで隻狼でステップしまくると死ぬ。
何せ無敵時間も移動距離も弱体化している。 加えるのなら相手の攻撃の銃口補正(ガンダム用語)が強く、ステップの硬直に食らうことが多い。連撃系の攻撃にも弱い。
なので、ソウルシリーズの気持ちでステップしまくるとすぐ死ぬ。死んだ。
では、ステップは使えないシステムかとなると違う。
大きなメリットとしてはすぐに反撃に移れる点だ。
弾きでは反撃できない攻撃や防げない攻撃にも対処できる。
そのため、ステップが活躍するのは弾きでは対処できず攻撃範囲が狭く大振りな攻撃となる。 当然、種類は大きく限られるのでソウルシリーズと違ってステップ一辺倒ではすぐに死ぬ。死んだ。
そのため、プレイし始めはステップしまくって死んで、慣れてくるとステップの比率が下がる。
もしかしたら一切使わなくなるかもしれない。私は使わなくなった。
だが、そこから一歩進むとステップが有効な攻撃に気付いてピンポイントで使っていくようになる。
ステップはゲームの軸を担うことはなくなったが要所を担うようになった。 それはプレイに多彩さをもたらすことになる。
また、突き攻撃に対しては前ステップを行うことで見切りが発生する。 相手の突き攻撃を無効化しつつ体幹にダメージを与え、さらには反撃のチャンスを得ることができる。
隻狼の突き攻撃は痛い、長い、弾いてもあまり得がないと強い反面、見切りという完全な解答が用意されているのがポイント。
そして、この見切り、前ステップなのが趣深い。 相手の強力な技だからこそ前に出ろ。アグレッシブ忍者。
ただ惜しいのはこの見切り、最初から使えるわけではなくスキルで習得する必要がある。
あるとなしでは突きに対する対処が全然変わってくるから初期実装で良かったと思うんですけどね……
ちょっともったいない。
・ジャンプ
隻狼からの新アクション。 ソウルシリーズでもあったといえばあったけど移動手段に過ぎなかった。
隻狼では普通に飛ぶ。忍者だから飛ぶ。
ソウルシリーズは鎧を着込むから飛べない。でも、転がる。何だお前ら。
ジャンプのメリットとしては移動距離が長い。 なので、間合いを簡単に離すことができる。
ソウルシリーズのステップのような使い方ができる。
経験者はステップをジャンプに置き換えればけっこう似たような立ち回りができる。
私も最初はそうやって立ち回った。
ただし、ステップとの相違点として無敵時間がない。 なので、攻められている時に使っても斬られて終わる。
どちらかと言うと攻撃後に相手の攻撃をかわすために用いるのが主体となる。
また、難点としてジャンプでかわした後は攻撃に転じにくい。 回避手段としては使えるのだが攻撃に転じることができないのはマイナス。
大振りな攻撃をしてくる相手ならまだしも、そうでない相手にはじり貧になりがち。
ジャンプでかわしても状況を打開しにくいのだ。
そのため、ゲームに慣れてきたら相手の攻撃を見てしっかり処理していくのが大事になる。
そんなジャンプだがピンポイントで活躍する場面がある。
下段攻撃だ。
下段攻撃はガード不可、弾き不可、攻撃範囲が広いのでステップで回避も不可。
ジャンプでしか対処できない。
それだけに下段攻撃に対するジャンプは回避以上のメリットもある。
ジャンプ中に踏み付けを行うことができるのだが、下段攻撃中の敵に行うことで態勢を崩し体幹を溜めることができる。
その後は着地して攻めるもよし、ジャンプ中に攻撃するもよし。
ただこの踏み付け、ステップの見切りほどのアドバンテージは取れない。
ジャンプは移動手段としても有用なだけにピンポイントでの使用が主体となるステップと比べるとリターンは控えめに作られている。
その辺の作り込みは細かいのが隻狼。
なお、突き攻撃と下段攻撃は地獄の二択。
この二択をやってくる敵は少ないけど見切るのは難しい。
特にラスボスの突きと下段の二択は未だに見切れない。
対処しにくい場合はダメージが高く見切りが成功した時のメリットが大きい突き攻撃に絞るのがオススメ。
下段攻撃はジャンプでしか対処できない反面、ダメージがやや低めに作られているのだ。
と、隻狼はガード(弾き)・ステップ・ジャンプの3つの回避方法から成り立っている。
ガード(弾き)を軸としつつも他の2つの回避も交える必要があり、さらに体幹の回復を防ぐために攻撃もしっかりと行う必要もある。
このバランスが絶妙で非常に完成度が高い。
なお、その上で上手いのは敵の攻撃にいくつか対処法があること。
連続攻撃には弾き連打で凌ぐのが正解だけど、自身がないなら下がってやり過ごしてもいい。
突き攻撃に対しての最適解は見切りだけど、ステップでかわして反撃するのもあり。
下段攻撃には踏み付けが一番だけど、安全を優先してバックジャンプで仕切り直してもいい。
加えるなら忍具やアイテムを使えば攻略法はさらに増える。
攻略の自由度は高く所謂イライラ棒とは違う。
隻狼は敵の行動パターンに応じた対処が必要になるけれど、決して唯一解が求められるわけではないので息苦しさはない。 その中核を担う防御システムは本当スゴいよく出来ている。
ついでに最強の防御法は走って逃げる。 わりと冗談抜きで最強。
これで隙が大きい攻撃をするまで待ってから反撃するプレイが時間はかかるけど安定する。
忍者は防御なんてしないでござる……逃げるだけでござる……