正直、メチャクチャ面白かった。
というわけで感想です。
さて、面白かった隻狼、正直、期待値は非常に低かった。 というのも、実質的な前作、ダークソウル3、以下クソ3の出来が非常に悪かった。
まぁ、言いたいことは山ほどあるけれど、不満の要点をまとめるとゲームデザインと調整の迷走に尽きる。
以下、クソ3ブン殴りタイム。隻狼のことだけ読みたいんだよ!という方はこちら。
ダクソシリーズは高難度故にそれを乗り越えた時の達成感がコンセプト……
のはずが、クソ3になると詰まったら白霊を呼んで楽ちんクリア。達成感? 白呼べば楽勝なんだから知らねえよ、そんなもん。という有様になっていた。
(白霊、他のプレイヤーのこと。呼ぶことでホストの攻略を手伝ってもらえる)
特にクソ3になる頃にはプレイヤーも慣れきっていたのでぽいぽいぽいぽいと白霊を呼んでいた。
これはユーザーが環境を形成したのもあるけれど、シリーズが進む度に任意の人とのマッチングが楽になっていったので、メーカー側からもこうした方向に推し進めていたのも大きいだろう。
一方でこうした協力プレイを妨げる公式pk、闇霊の存在もありそれによって緊張感が保たれていた。……のもシリーズ初期の話。
クソ3はよほどホストを勝たせたいのか、闇霊を徹底的に冷遇していた。 その冷遇に関しては枚挙に暇が無いしわりと真面目に悪意を感じるレベルだけど、一例を挙げるとMOB(雑魚敵)が内部的にはホストではなく闇霊を優先的に狙うようになっていたこと。
普段はMOBは闇霊を狙わないからこの仕様に意味はないのだけど、巨人樹の種というMOBが闇霊を狙うようになる
これだけならまだしも、ホストを倒すために現れるNPC闇霊までも目の前にいるホストを無視して背後にいる闇霊を優先的に狙う。
お前、ホストを倒すためにやってきたんじゃないの? 何で同胞の闇霊を狙うの? ベジータでも気取ってるの? この冷遇の結果、闇霊はエスト瓶(回復アイテム。有限なのだが闇霊を倒すと取得できる)と揶揄されることになる。
結果、みんなでプレイすれば楽勝。
緊張感を与えるはずの闇霊は冷遇により雑魚。
高難度故の達成感はクソ3に至る頃にはもはや完全に破綻していた。
じゃあ、白霊を呼ばなければいいのではないか。
……となるのだけど、そこで次の問題、調整の迷走。
クソ3では難易度を上げるためにプレイヤーのタイミングを狂わせるディレイをかけた攻撃が乱発。
ボスも隙がなくて攻撃のチャンスなかったりと強いとか難しいとかよりも理不尽な方向に調整の舵を切っていた。
相手のパターンを理解してかわして殴るよりも、大盾を構えて何も考えず受け流した方が楽ちん。
というか、もう面倒だから白霊呼んでレイプすればいいやとなってしまう。
実際、クソ3、全部ソロで攻略したんだけど、達成感より疲労感の方が大きかったんですよね……
この辺りはプレイヤー一人前提か、あるいは白霊を交えた多人数前提か、調整の方針が定まっていなかったように思える。 一人だと大変だけど白霊を呼べば楽勝になるのもその迷走の結果だと感じる。
これは(シリーズの伝統と言えば伝統だけど)白霊を呼んだからと言って敵が強化されるのような要素がないのも大きいけど。
(正確にはHPは上がる。もっとも、数が増えるという非常に大きい有利を前には微風レベル)
コンセプトは破綻。調整も雑な上に迷走。あと闇霊冷遇しすぎ。
クソ3は個人的な評価は非常に低い。
なので、隻狼にも全然期待していなかった。
アーマードコアネクサスの後にアーマードコアナインブレイカーに期待しろというのは無理があるように。
でも、隻狼、超面白かった。
これはハードルを下げたけど意外に面白かったのではなく、例えハードルを高く設定しても圧倒的な大飛翔で飛び越えていったほどに超面白かった。
ソウルシリーズとの大きな違いはいくつか、というか、いくつもありすぎて完全に別ゲー。 私はハッキリ言って騙された。騙された。
メディアのソウルシリーズっぽい先導に騙された。
その中で一番の違いはマルチプレイ非対応。
闇霊を絶対に許せない!徹底的に冷遇する!冷遇した結果、マルチプレイが過疎ろうが関係ない!お前ら絶対に排斥してやる!協力プレイの邪魔なんだよ!○ね!さっさと○ね!殺した後に全力で煽ってやる!徹底的に煽ってやる!確実に勝つために出待ちだ、出待ち!実際に煽る奴多い!殺伐としてんな、このゲームのマルチ!
そんな闇霊への剥き出しの悪意が波動砲となり、ついには闇霊、死す!
なお、この波動砲は白霊ごとブッ殺した。
死なば諸共よ!
まぁ、そんな茶番は置いておいて、隻狼は完全な一人用。
詰まったら自分で壁を乗り越えなければならない。
白霊に甘えることはできない。
それでどうなったのか。
クソ3では完全に迷走していた調整の軸がピッタリと定まり、非常に良質なアクションゲームになった。
隻狼は一人用というのもあるけど、ソウルシリーズと比べるとカスタマイズ要素が非常に薄い。
ソウルシリーズのように武器が違うとアクションが異なり、人によってキャラ性能が別物になることはない。
あとおまけで主人公も名前も外見も変えることは不可能。
多少の成長要素こそあれど基本的にはアクションゲームになっている。
ここもソウルシリーズと違うところ。ソウルシリーズはアクションゲームじゃなくてRPG。
なので、全プレイヤーに与えられた条件はほぼ同じ。同じ条件で困難に挑む必要がある。
隻狼はそのアクションの作り込み、及んで調整の完成度が極めて高い。 隻狼は難しい。ハッキリ言って難しい。
ただ難しくはあっても理不尽ではなかった。 ボスは怒濤の攻撃をしてくる。初見だとボコボコにされる。
ラスボスなんて勝てるのか、この馬鹿野郎と思わされた。
でも、何回か……いや、誇張した。
何回もやればパターンを覚えてくるわけで。
そして、そうなるとわかるのがそれぞれのパターンに明確な回答が用意されていること。 相手の連続攻撃には弾き、下段攻撃にはジャンプ、突きには見切りとピッタリと合う対処があって、それらを実行できるようになる。
メチャクチャな攻撃をしてくると思ったラスボスもしっかりとパターンを覚えてこうした対処がちゃんとできるとしっかり勝てる。
強いけど。難しいけど。
また、クソ3で難度を上げると同時に疲労感も増やしたディレイ、それに伴って見分けの付きにくいモーションは大分減らされた。
特に大ダメージを与えてくる行動は非常にモーションがわかりやすくなってる。
なので、理不尽にダメージを食らうシチュエーションは減らされている。 前述した明確な対処が用意されているのもあって、ダメージを食らう時は自分の落ち度があるとわかるようになっている。
隻狼は敗北にしっかりとした理由があるのだ。
まぁ、全部が全部というわけじゃなくて理不尽だったり面白くないシチュエーションもいくつかあるんですけどね。
使うアクションが著しく限られていて面白くない火牛戦とか、2対1を強いられる獅子猿2戦目とか。
それでもただ全体で見ればこうしたシチュエーションは少ないし、戦って楽しいボスの方が多いのであまり気にならない。
火牛とかショートカットできるしな!
……数百回挑戦して1回して成功していないけど。
加えるなら大抵のボスには抜け道、楽な攻略法もある。
アイテムや忍具、地形を使えば正攻法にチャンバラをやるよりも楽に勝てたりする。
隻狼はこうした工夫の余地があそびとして用意されているので、難しいには難しいけど懐が広いバランスになっている。 こうした自由度を持たせているのも隻狼の調整の上手いところ。
なお、ラスボスは正面から堂々と斬り合って勝つしかない。
ラスボスは忍者の卑怯な手には屈しないでござる。
それは難しいと同時に楽しい。
そう、隻狼は正攻法で戦うのが楽しいゲームなのだ。 アイテムを駆使して封殺もできるけど、相手の行動を見て的確な対処をするのが本当に楽しい。
なので、楽な勝ち方を捨てて堂々と斬り合ってしまう魅力がある。
だからこそ、ラスボスは一番強くて一番楽しいボスという理想的な調整がされていると言えよう。
隻狼を買った人はラスボスに諦めずに挑んで欲しい。そして、たくさん死ね。
ここまでボス戦だけ語ったけど道中も抜かりなく楽しい。
ダクソとは違ってメタルギアやアサクリのようなステルスゲーとなっている。
隻狼は数で襲いかかられると一気に追い詰められるので見つかるとピンチになる。
なので、見つからないように暗殺するのが大事。
じゃあ、ガチガチのステルスゲーかとなるとそうでもなく、その気になれば走り抜けることも容易。
また、見つかっても撒くことも簡単。
すぐに追いかけるのを諦めてくれるので見つかった時のストレスもあまり溜まらない。 ゲームによっては逃げ切ってもかなり長い時間、警戒モードが維持されるのでテンポが悪かったりするんですよねー。
また、雑魚敵のAIがいい意味でアホ。 よくある死体が転がっていると警戒するということもほとんどない。
忍者以外には鈍感なので死体が目の前に迫ってからやっと反応してくれる。
また、視界が日常生活に支障をきたすほどに狭い。
回り込むのが非常に簡単。
なので、わりとお手軽にステルスゲーの楽しい部分だけを味わえる。 適度なアホさと鈍感さから忍者のようにアグレッシブに動いて仕留めることができるのでこの辺の調整は非常に上手いと思う。
代わりに何をやっても見つかるシチュエーションもそこそこある。
まぁ、そこは忍者だ。そもそも忍ぶのが間違えている。
今の日本の忍者を代表するニンジャスレイヤーだってそうだ。
あいつら、忍ぶどころかオジギするしね。
というわけでゲーム性には大満足でした。
これも一貫したゲームデザインと調整の賜物に違いない。 ソウルシリーズではシリーズを経るごとに稀釈されて失われてしまった高難度を乗り越えた時の嬉しさは蘇り、あえてシチュエーションを限定することでプレイングに奥深さをもたらした。
隻狼はどんなゲームにするか、どんな遊び方をさせるかの明確なビジョンが出来上がっていて、それに従ったデザインと調整がされている。
巷にはあまりの難しさにイージーモードを用意して欲しいという声もあるけれど、あえて甘えるなと強く言いたい。
隻狼は乗り越えることが楽しいゲームだ。 イージーモードはその楽しさを薄めてしまう。
それはソウルシリーズがやった大きな失敗の一つだ。
隻狼の壁は高くはあれど決して理不尽なものではないし、甘えるよりも先にできることはある。
……獅子猿2回目以外。
ついでにストーリー、今まではフロム脳を全力で働かせる必要があった。
特にソウルシリーズなんてフロム脳が必須だった。
隻狼は基本的なストーリーラインはちゃんとわかるラインで適度に語っているので置いてけぼりにさせない。
同時にフロム脳で補う部分も上手い具合に用意していて、わかりやすさとフロムらしさと上手い具合に保っている。
また、キャラが魅力的……というか、主人公の狼がスゴいいいキャラをしている。
狼は主に仕える忠義心に満ちた忍者だ。
主に絶対服従! 敵対する人間は全員殺す! 冷徹非情の忍者の極み!
……というわけでもなく。
主の命を守ろうとすると主が死ぬとなると主従ではなく明らかに個人的な感情で死んで欲しくないとか言い出すし、練習相手になってくれた人間が殺して欲しいと言い出した時に断ると明らかに感情を込めて断ると言い出すし、あまり繋がりのない相手が体調を崩しているとナチュラルに心配するし、情に厚いキャラで自然と愛着を抱いてしまう。
いや、主を助けるために自分の国に抗って、国の零落の一端を担ってしまう困ったちゃんではあるけど。
主人公以外も他のキャラも印象に残るしいい奴も多いし、空気かと思ったストーリー部分も普通に楽しめる出来だった。
さすがに評価の大半を決めるものではないけれど、評価を後押しする要素にはなっていた。
このストーリーのわかりやすさは何か世界受けしそうですね。
実際、相当売れているみたいだし。
というわけで楽しかったです。いや、マジで。
不満点は少なからずあるけれど(獅子猿2回目とか)、それを上回るくらいに面白かった。
今からDLCが楽しみです。
この調子で是非フロムにはニンジャスレイヤーのゲームを作って欲しいですね!(台無し)