バキ道感想 第144話「全力の限界」



オリバと宿禰の全力がぶつかり合った。
オリバも宿禰もダウンしたが深刻なダウンは宿禰の方か。
だが、宿禰も急にガーゴイルになったりするかもしれないから油断はできない。
逆転方法があるとしたらガーゴイルになるくらいとも言える。


「突然でした」
「巨人が動かなくなった」


げえ! いきなり敗北が告げられた!!
一部始終を見ていた飲食店経営者松永智史は宿禰が動かなくなったと語るのだった。
いきなり結果から入りましたね。
いや、武蔵に惨殺された大塚平兵衛が何故かインタビューに答えていたからまだ油断はできないが。

オリバは吹き飛んだものの大きなダメージはないらしく既に起き上がっている。
ぶちかましに拳を破壊された前回とは異なり、今回は見事に仕留めてしてやったりだ。
だが、この事態に何故か驚愕している。
カウンターの形で合わせたのに吹き飛んだのはオリバだった。
驚くに値するかもしれない。

「いや…」「もう―――――残ってない」
「あなたの勝ちだ」


宿禰は地面に手を当て起き上がろうとする……が、うつ伏せから仰向けになるのが精一杯だった。
そして、四の五の言わず敗北を認めるのだった。
仕切り直そうとする蹴速よりも大分潔い。
いや、蹴速が見苦しいだけか?

「俺カラ売ッタケンカダ」「君ニハ備エガナカッタ」

オリバが紳士的だ!!
筋肉ムキムキジェントルメンのオリバらしい。
前回の戦いは不意打ちしたりと余裕がなかったけど、今回は完勝したからか、余裕ができている。
久し振りにオリバらしいオリバを見れた気がする。

この言葉を受けた上で宿禰は備えがあったと、備わっているから力士を名乗れると語る。
間接的にとはいえオリバの勝利を讃えるのだった。
宿禰も宿禰でいつものはぐらかす感じがなくて清々しい。
もっと早くこうした一面を見せていれば人気があったかもしれないのに……
何かとはぐらかす範馬刃牙ムーブはいかんぞ、範馬刃牙ムーブは。

「俺も愉しんだ」
「愉しむ…?」
「いいのか…? それで……」


敗北はしたものの宿禰はこの一戦に満足していた。
自分の全力をぶつけることができたからか。
一方で満足だけではいけないことも感じている。
ついにやっと宿禰にも心境の変化が訪れているのだった。

こうしてオリバと宿禰は互いに満足したのだった。
互いに憎しみがなく、互いに得られたものがある一戦であった。
ホント蹴速さんは見習って欲しいですね。

そんな中、唯一完全な敗者と言える男がいる。
飲食店経営者松永智史である。
オリバさん、そのまま立ち去りました。
壊された車の弁償を要求できません。
いや、瀕死の宿禰に要求すればいいか?
飲食店経営者松永智史の訴訟はこれからだ!

後日。
ちゃんこ鍋屋で宿禰と蹴速が共にちゃんこ鍋を食べていた。
って、あんたら、仲が良かったのかよ!?
てっきり険悪な関係だと思っていたのに……
いや、お互いに稀少な古代相撲の使い手だし、宿禰一族と蹴速一族で繋がりがあってもおかしくはないか?
それとも仲が悪いけど敗北を期に連絡を取ってみたのか?

宿禰と蹴速は互いに格闘家たちの強さを認めていた。
お互いにボロ負けしましたからね。
蹴速なんて仕切り直した上で負けましたよ。
この人、はっず!

「試してないことがある」

「…………」「試さなかった理由は…?」

「気遣った」


宿禰、まさかの本気じゃなかった宣言であった。
さ、さっきまではマシなところを見せたかと思いきや……!
こんなんだからアンタ、人気がないんだ!!

宿禰は勝ちを捨ててまで格闘家たちの強みと弱みを知りたかったらしい。
勇次郎にワンパンで負けてから格闘家の何たるかを調べることにしたのだろうか。
勇次郎は例外としても、ジャックもオリバも格闘家としてはどちらも異色だ。
片や噛み付きファイター、片やパックマンとオリジナリティがありすぎてあんま参考にならんと思います。

「2メートル超200キロ超の10秒――」
「見せつけろ」
「対戦者の「生命いのち」を気遣うときじゃないぞ」


ここで10秒の密度に立ち返った!
というか、今までは10秒の密度がなかったんかい!!
ともあれ、全力の限界を引き出すように蹴速は言うのだった。
古代相撲の権威は落ちまくっているからもう気遣っている場合ではないのだ。
……いや、肋骨をボキボキに折るのが気遣っている範囲なのか?

宿禰は全力を引き出していなかった。
そのことに蹴速は驚いている。
つまり、蹴速は既に全力を引き出していることに繋がり、やっぱりこいつはいまいちらしい。
10秒の密度以前に最初の数秒で踵砕かれたからね、この人……

「試合を」「10秒で終わらせます」

蹴速の激で宿禰の覚悟も決まったのか、みっちゃんに試合を求め10秒で決着宣言をする。
宿禰のフィジカルは間違いなく最高峰である。
その全力を様子見なしでぶつければ10秒決着は可能かもしれない。
事実としてジャックは序盤で投げられていたら負けていたと述懐していた。

だが、問題は対戦相手である。
ここで2m40cmなだけの巨漢とかムエタイとかを10秒で仕留めても何の勲章にもならない。
そんなのは花田でも勝てますよ。
然るべき強敵を相手に10秒で勝利してこそ意味がある。
そう、例えば範馬刃牙のような……

というわけで夜の町を歩いている刃牙の元へ連絡が来るのだった。
主人公、実に1年振りの登場である。
よく本編に出てこなくなる主人公だけど、今回はさすがに歴代最高記録を更新かな……

ついに本気かつ相手の命を気遣わなくなった宿禰と我らが主人公、刃牙の試合が正式に決まるのだった。
宿禰の言う通りに10秒で決着が着くのか、あるいは。
宿禰は10秒で勝つ気だが刃牙は刃牙で2秒で屠る男である。
加えるのならば敗北を経て成長したと自負していたライバルを不意打ち金的で潰したり、最終形態になった原始人を完封したり、侍相手に後ろからババアをぶつけたり、ひたすらに空気を一切読まない勝ち方をする。
うーん、いくら何でも分が悪いぞ。範馬刃牙の悪辣さは格闘家たちの中でも随一だ!

ともあれ、10秒の密度というテーマに立ち返りつつも、刃牙VS宿禰という古代相撲編最終決戦を向かえようとしている。
連敗の後に主人公と試合なんてまるで神の子編のようだ。
宿禰さんの金玉が率直に言って心配です。
次回へ続く。
なお、次回は3週間後だ。
3話掲載して2話休む――見せつけろ。読者の「生命」を気遣うときじゃないぞ。