刃牙らへん感想 第19話「父が子を誘う理由(わけ)」



範馬一族の食事がただで済むわけがない。
何せ勇次郎の血族だ。
食事してただで済んだのは範海王くらいだ。
あいつは範馬一族なのかは結局謎のままだったけど……何でもないんだろうけど……

ディナーの締めを飾るのが骨付きのラムだった。
技術の粋を尽くしてきた料理が続いた中、比較的シンプルな料理である。
だが、量がとんでもない。言葉通りの山盛り、骨付きラムの山が出来上がっている。

肉は柔らかな仕上がりになっているようだが、ジャックは構わず骨ごと食べる。
美味のラッシュにさすがに慣れたのか、あるいは肉なら食べ慣れているからか。
Jr.に挑戦をされた時はステーキを食べていたし。

そんなわけでジャックはこれまでとは違って表情を変えずに食べる。
前回の狼狽っぷりは美味に慣れていないのもあるけど、「食べたことのない美味」に慣れていないというのが大きかったのかも。
その食べたことのない美味の範囲がとんでもなく広いのがジャックなのだが。

「ゴチソウ様デシタ」

だが、嚙道に目覚めて紳士に目覚めた?ジャックはちゃんと食後の挨拶もする。お辞儀付きで礼儀正しい。
当然のように勇次郎もお辞儀する。
さすがいただきますの男である。
当然、勇次郎が頭を下げるだけで面白い。

「食ッテオイテ アレダケド…」
「何故 俺ヲ食事ニ…?」


ちょっとフランクな口調で食べ終えたジャックは問いかける。
その理由をジャックは余すことなく聞きたいと言う。
ジャックは勇次郎の愛情をまったく受けてこなかった。
であるのに、今日はいきなり食事を奢られた。
その理由が気になるのは無理からぬことだし、勇次郎が自身に抱く感情がどのようなものかも知りたいだろう。
当然の疑問であり、人生に関わるほどに重要な疑問であった。

「ソレハ普通ノ父ト子ノハナシデショ」

勇次郎は父が息子を飯に誘うことは不自然ではない、普通だと答える。
だが、勇次郎は普通じゃないし、ジャックとの親子関係も普通じゃない。
刃牙との親子喧嘩を経て普通の親子を意識するようになったかもしれないが、勇次郎もその人間関係も普通に収まらないのだ。

「フツウ………」「………か」
「考えたこともねェ……」


勇次郎は普通の親子というものを考えたこともないと遠い目をしながら語る。
刃牙がかつて勇次郎に闘争に必要なものを問いかけた時、まったく同じ答えをしている。
美味い料理を喰らうが如くとも答えており、勇次郎にとっての闘争は何も考えず楽しめるモノとなっている。
同じことが普通の親子関係にも言えるのではないか。
余計なことを考えずにただ楽しめるものが勇次郎にとっての普通の親子なのではないか。
言外にそんな意図があるようにも思える。
でなければ北極まで強者を求めて行くような勇次郎が息子を食事に誘うなんてことはしないだろう。



ジャックは勇次郎を生物として普通ではないと語る。
しかし、軽蔑ではなく尊敬と憧れとしてそうした感情を抱いているようだ。
勇次郎は人でなしとあえてであろう、(過去の所業を鑑みるに立派に人でなしでもあるけれど)曲解するとジャックは普通に慌てながら否定する。
普通ではないと言いながらもわりと普通に会話している。まるで親子みたいだぁ……

「イチバン手にしたい物の為――」「何故踏み出そうとしない」

ここまで和やかに続いていた食事だが、いきなり勇次郎は髪を逆立たせる。
ジャックの目的は勇次郎に勝つことだ。
途中から勇次郎との相互理解に傾倒した刃牙よりもその執念は強いかもしれない。

背景を歪ませるほどの闘気を漂わせる勇次郎に対しジャックも立ち上がる。
ジャックVS勇次郎の親子喧嘩が勃発か!?
独歩やピクルを無視していきなりのラスボス戦になるのか?
奇しくも刃牙が勇次郎と親子喧嘩を行った場で、もう一人の息子との親子喧嘩が始まりそうである。
いや、始まっていいのか?
ジャックで話を引っ張ることに飽きたとかないか?
少なくとも宿禰は飽きられたと思う。

序盤も序盤なのに大イベントからの大ボス戦となってしまいそうである。
次の展開がまだ読めない。
次回へ続く。
次週は休載! 合併号と合わせて続きは3週間後!!