か、勝つのはいいがもうちょっと勝ち方というものを……
このままじゃ範馬刃牙になってしまうぞ?
けっこうな不名誉だぞ、範馬刃牙は……
勝負ありを待たずにジャックは勝利宣言した。
勝負ありと同時な気はしたがジャックの方が先だったらしい。
普通なら死亡フラグっぽいがジャックの勝利でいいようだ。
まぁ、遅れたけど勝負ありの声がかかったしね。
観客はジャックの強さを讃え、それに相変わらず喜びを感じるジャックだった。
最大トーナメントの時のストイックさはすっかり失われてしまったようだ。
今のジャックはドーピングを健康サプリ程度に使っているし、いい方向に考えれば悪い方向のストイックさが抜けたとも言えそうだ。
ピクルに何だかんだで負けた範馬刃牙は視線を落とし表情が見えない。
全てを出さずに負けてしまったピクルにちょっとガッカリしているのかも。
いや、これは責められない。もうちょっと頑張ってほしかった。
もう一人の観戦者、花山は姿が見えない。
次は花山の番と予告されたからトレーニングのために早めの帰宅でもしたか?
普通に考えればピクルの後に戦わされるのはキツい。
属性もけっこう被っているし逃げ出してもおかしくはない。というかみっちゃん、標的にしないでくれ。
勝利の喜びに震えるジャックだったが、何かを感じ振り返る。
ピクルが立ち上がっていた。
3連ジャーマンで一時的に失神したかもしれないが、身体の奥深くまでダメージは刻まれなかったようだ。
すっかり出血は止まっているしさすがのタフネスは健在であった。
ダメージそのものはやっぱりなかったんだな……
いや、今までの描写的にそれは納得できるのだけど……
野性の勝負は食うか食われるか。起き上がった以上はラウンド2……
と思いきやピクルは笑った。
顔面の左半分の皮が剥がされているからちょっとキモいけど笑った。
「完全に笑っているッッ」
「我身を傷付けッッ」「命をも奪いかけた怨敵にッッ」
「白亜スマイルを向けているッッ」
自身を傷付けた相手にスマイリーに笑うのはピクルとしては珍しい。
刃牙にティラノサウルス肉を奢ったように日常ではけっこうフレンドリーだが、いざ戦いとなれば白亜紀の価値観的に殺るか殺られるかなので容赦がないのがピクルだ。
特に顕著なのがジャックに耳を噛み切られた時で完全にブチ切れて猛ラッシュを放っている。
あのラッシュを今回やらなかったのが不思議なくらいだ。やれよ。
ピクルはジャックに手を向け、これを受けてジャックもスマイルを浮かべ、お互いがスマイルと共に手を握り合う。
殺るか殺られるか、食うか食われるかの戦いをしてきたピクルの戦いはどうしても血生臭くなる。
烈も克巳もジャックも死の可能性があった。
ジャックもジャックで血生臭いことになりがちだ。
だが、今回の戦いは二人にたしかな友情が生まれた。
ジャックとしてもピクルとしても珍しいことである。
この美しい友情に観客たちは拍手する。
元戦った相手と友情を育んだ男、刃牙も満足げな笑みだ。
最近の刃牙さんは、まぁ、友情を育みようがないというか……
「ジャ…」「ク……」「カ…チ…」
さらにピクルはジャックの勝ちを喋って認めた。
って、喋ったよ!
しかも、今度はオウム返しじゃなく自分から喋った!?
刃牙に喋った時よりもはるかに難度が高いぞ、それは!
「喋った…ッッ」
これにはジャックも冷や汗と共に驚く。
何なら試合中よりも動揺している。
いや、そりゃそうですよ。刃牙だって驚いたんだからジャックだって驚くよ。
こうしてピクルは闘技場を立ち去って行った。
試合という観点では負けたものの上腕動脈を噛み切られ打撃に投げを幾度も喰らったわりにはまったく平気そうだ。
つまり、生存という点ではピクルの勝ちでもあると言えよう。
いや、ダメですか。そうですね。
ピクルが喋って勝ちを認めたというよりも、勝ちという概念を語ったのが意外だ。
ピクルにとって闘争とは食うか食われるか、食事のために行う生存競争でもある。
そこに勝った負けたは介入する余地はないだろう。食ったか食われたかだけだ。
であるのに、勝ちを認め大人しく引き下がった。
現代における試合の概念と価値観を理解してしまっている。
一体、何があったんだ、ピクルよ。
同時にそれがピクルの弱さになったのかもしれない。
命の食べ合いがピクルの闘争でありそれ故に苛烈な攻撃を行っていた。
しかし、現代に慣れきった結果、そこにブレーキがかかるようになってしまったのだろうか。
現代に来た直後は白亜紀の価値観で戦えていたので強かったし、武蔵戦も相手が殺しに来てたから対抗して生きるために逃げ出した。
が、ジャックはあくまで競技者として試合で勝ちに来たので鈍った……のかも。
いや、試合前はしっかりジャックを骨になるまで食べる気だったし、実際、ジャックの攻撃は殺しかねない危険度の高さだったし……
現代に染まった白亜紀の価値観は難しい!
ともあれ、これでジャックVSピクル、完全決着である。
イロイロとツッコみたいところはあったけど、オチは綺麗であった。
これでピクルさんがピクルタックルとか最終形態を使っていたら映えたのだが……致し方あるまい。
ピクルさんにも食欲がない時があるさ。
これで次のジャックの相手は花山……なのか?
斬撃耐性は噛み付き耐性に繋がるのか?
というか、そろそろ本部さんにリベンジしてみてはいかがか。
あと花田はどこ行った。あいつ、タフシリーズ並みの異界送りにされて安否が心配だぞ。
ともあれ、次回へ続く。
次号は休載なしだ!
合併号を挟んで新年早々に刃牙らへんを読める! ……多分。