今の格闘漫画界は喧嘩稼業と本部に支えられていると言っても過言ではない。
文学は初手で裕章の鼓膜を破ることに成功する。
これには十兵衛もガッツポーズ。
さらにそこから耳を掴むのが富田流の喧嘩である。
そういえば、十兵衛と再会した時にチンジャブ、イヤーカップ、耳を掴んだ頭を打ち付けて目を潰すコンビネーションをやっていた。
同じことをやるつもりなのだろう。
さすがは陰側の格闘家であった。
が、裕章は本来なら右肘が邪魔をして文学の耳掴みを外せなかったはずだが、突如として外れる。
自分の肩を叩いて身体を回転させて文学の邪魔をしていた。
さらにその反動で腕がしなり文学の顔面を殴りつける。
実に合理的かつ器用な反撃であった。
明日から使える耳掴みの対処法ですな。
さらに頭を掴んでの膝蹴りに繋げる。
文学の攻めを潰した上で、軽い反撃から重い反撃へとスムーズに連携させていく。
S級格闘士は伊達ではない。
この見事な反撃には文学の強さをよく知る十兵衛も驚く。
お前の師匠糞弱じゃねーかよ!
「詠春拳系の拳法はリードパンチという最速の突きを有している」「――と同時に最速の連打も有している」
「その最速の連打はチェーンソーのように」「腕を回しながら打つ事からこう呼ばれる」
「チェーンパンチ」
態勢が崩れたところに裕章は超高速の連打、チェーンパンチを繰り出す。
ポコポコと殴っているので一発一発は軽そうだが、ヘヴィ級のウェイトでやれば相当な打撃になるのだろう。
そして、チェーンパンチを呟く里見であった。
アンタ、すっかり解説的な立ち位置だな。
この後に空君に敬語で解説したんだろ? ん?
全弾被弾しつつも一発が軽いことに変わりはないのか、文学は反撃をしようと腕に力を込める。
それを見逃さない裕章は1度は不発した猿臂、肘打ちでダウンを奪う。
裕章は連打の中でもちゃんと相手の動きを見ている。
かなり丁寧な戦い方をしている。
ダウンを奪った裕章だがすぐには攻めない。
指を鳴らし鼓膜のダメージを確認すると同時に、平衡感覚にダメージがないことも確認するのだった。
チャンスを捨ててでも慎重に行動した方が勝率が高いと考えているだろう裕章の思考に対して文学は怒る。
いや、裕章は慎重に戦わないと殺される環境で戦って来たので、癖みたいなものだと思うが……
S級格闘士の鼓膜を破った文学をヨシフは普通と称する。
おう、アンタ、とことん節穴だな。
一番無能なセコンドかも。
でも、無能セコンドは吉田に川上ドラゴンとけっこういる。
なら、マシな……いや、やっぱりヨシフが一番無能かも……
裕章はリードパンチの構えを取る。
ジャブと並ぶ最速の打撃である。
文学は父の無一に教えてもらったことを思い出す。
突きには一拍子と二拍子のものがある。
二拍子のもの、ボクシングのジャブは後ろ脚が床を押す抗力で力を伝えて殴り、一拍子のものは突進する推力で突く。
というわけで、一拍子の刻み突きでリードパンチの先手を取る。
前に出ながら打つため、細かい連打はできないかもしれないが、踏み込むと同時に裕章の足を踏みつける。
十兵衛も上手いと喝采する。
……アンタ、観戦するとかなり熱くなるタイプだな。
そんな人が20分置きに嫌がらせをしているからたまりませんね。
「本物の連打を見せてやる」
のけぞった裕章に肘で上からの金剛を放つ。
金剛は受け止められてしまうが、それは囮でそこから左鉤突きに繋げて煉獄を狙う。
連打は連打で返すつもりであった。
が、それを読み切った裕章は肘で鉤突きを受け止める。
今のところ、文学に先手を取られてもその後の本命の攻めに全て対応している裕章であった。
凄まじい対応力であった。
「
「後の先をとるには技の選択肢が多い事 その多くの選択肢の中から素早く最善手を見つける事ができる能力が必要になる」
裕章は僅かに残っている中学生の頃の記憶を思い出す。
どうやら御殿手と戦うことを前提に鍛錬していたようだ。
例の名護であろうか。
あと空手を教えている爺さん、何か威厳あるけど誰よ。
裕章は反撃の頭突きで今度は文学の態勢を崩す。
そして、再びチェーンパンチを浴びせるのであった。
文学は先手こそ取れど次に続かず反撃を受けるパターンが続いている。
鼓膜を破った時は輝いていたのに……
ピンチのまま、次回へ続くのだった。
そして、次回は2週間後……
まぁ、隔週掲載なんて馬鹿なことを考えるのは止めておくんだな。
出来らぁ!
隔週で喧嘩稼業を連載してやるって言ってんだよ!
では、隔週で連載してもらおう。
え!? 隔週で連載を!?