まぁ、いつも通りに正々堂々と戦えるかと思ったら、相手は刀で武装して襲いかかってきましたからな。
普通なら文句を言うし戦わない。
それを黙って戦って死ぬほど斬られてなお生きているだけで十分凄い。
頑張れ、ピクル。本部のところまで逃げろ!
ピクルが背を向けて武蔵から離れようとする。
これにはギャラリーの格闘家たちも困惑する。
烈を初めとしてグラップラーは良くも悪くも命知らずだ。
だが、ピクルは怖い物からは遠慮なく逃げる。 なので、武蔵からも逃げ出そうとしているのだろう。
「もう
ここで刃牙はちょっとエラそうなコメントをする。
うむ、刃牙と言えばエラそうなコメントだな。
試合開始前の自信満々のコメントは何だったのか。
やはり、コイツに乗ってはいけない。
今乗るならやはりこの本部!
「帰すか………」
当然、武蔵としては不服である。
何度斬れるかさえわからない最高の巻き藁が目の前にあるのに逃げようとしている。
斬殺中毒者としては見逃せない。
そんな武蔵を眼前にしたピクルは全力で震える。
元々、恐がりなのがピクルである。
まして今回は精神だけでなく肉体的にも追い詰められている。
誇りだけではどうしようもない恐怖を前に史上最強も震えるしかなかった。
生死にシビアな野性だからこそ、死の恐怖を誤魔化さず恐れるのだろう。
「敵前堂々と
「震えて動けぬ者は斬りたくないのぉ……」
ビビりまくるピクルを見てさすがの武蔵も萎える。
斬殺欲求を持ってはいても、無差別に斬り殺す殺人鬼ではないのだった。
誇り高き侍なのだから自分に立ち向かってくる者しか斬らない。
こう書くとピクルに似ている。
なので、斬らないことをどうにかして学べませんでしょうか……
その時、ピクルの震えが唐突に収まる。
そして、背後に何かを感じ取るのであった。
何だ? 本部か?
アイツ、頼れないようで頼れる……のか?
どうも本部は出不精だから烈もピクルも酷い目に遭っている気がする。 ジャックの無謀を止めたのはファインプレイではあったが……
「ヒャンッ」
ピクル、気配を感じた方向へ四つ足で逃げる!
恥も外聞もない全力逃走であった。
プライドが邪魔する現代の戦士には決してできないことであろう。
情けないが情けない故に帯刀した武蔵と戦って生き延びることに成功した。 勝てないのなら、危険なのなら逃げる。
ピクルは野性の真骨頂を見せたのであった。
逆に言えば全力逃走するだけの余力はあった。
ピクルが意地を張ればまだまだ戦えたということだろう。
戦っていたら結果はどうなっていたのかはわからない。
とはいえ、このまま続けていれば例え勝つにせよ深手を負うことに違いはない。
矜持や勝利よりも生存を優先した。
無様でありながらも見事なまでの野性の生き様であった。
ピクルは現代の格闘家たちとの戦いを通して、戦うことへの誇りを手にした。 1度は逃げたジャックに立ち向かい、未知の妖怪だった刃牙にも逃げ出さず立ち向かった。
フィジカル最強のピクルは精神的に成長を果たしたのだ。
が、今回は華麗に心が折れた。
戦士としては情けないが、生物としては正しい反応である。
ちょっと烈は意地を張りすぎた。ピクルくらい柔軟な方が生きやすいかも。
この逃走劇を見て現代の格闘家たちは困惑する。
例え勝機がなくとも挑む命を大事にしないジャック兄さんはちょっと不満そうだ。
でも、ジャックは本部に負けた以上は発言はないぞ。
花田と互角なんだよ、アンタは!
それに対して寂は笑う。
試合中なのに相手に背中を向けて自身を護身を開眼させた男は一味違う。
寂的には意地を張って死ぬよりなら心を折って逃げて生き延びる方が偉いか?
ピクルを参考に寂海王の真護身、背中を向けて逃げるが完成するかも。 ……試合にならないかも。
「
武蔵はピクルを最後にこう評価するのであった。
ピクルは金重の直撃を幾度も受けてなお死なないという桁違いのタフネスを見せた。
勇次郎でさえ刀はもちろん、素手斬撃でも肉体が斬れたのだから、ピクルのタフネスは間違いなく作中最高峰である。
その一方で恐怖を感じた相手には迷わず逃走した。
ピクルのフィジカルは間違いなく最強だが、刃牙道になってから強調されている本物の武に生きる者の精神性では数段劣っている。 そして、勝負を分けたのは体力や技術以上にそこだったのだろう。
何せ武蔵は斬り殺すという明確な目的の元に鍛錬を重ね、その凶刃を躊躇なく奮った。
強者との戦いを望み楽しんでいたピクルとは一線を画す。
素手同士の戦いなら結果はわからなかったのだが……
せめてピクルが刀のことを持って知っていれば良かったのに。
あまりにも未知の武器すぎて爪や牙と同質のものだと思えなかったようだ。
さて、ピクルは逃げた。
逃げ込んだ先には……本部がいた。
あのピクルが! 本部に! 史上最強の男が公園最強の男にすがりついている!!
……えーと、コラ画像ですか?
コラ画像じゃないですか。マジですか。
「ばかやろう……………」
「もっと早く
本部は早く逃げなかったことを𠮟りつつも、逃げたことは一切責めない。
むぅ、何という包容力だ。
いい奴かもしれないぞ、このおっさん。
せっかく毒手を身に付けたのにセックスしただけでやたらと強くなった理不尽な男にまったく通用せず、やさぐれていたらかつての強敵に挑まれたので公園へ行ったら慰めてもらえるかもしれない。
だが、本部よ。
アンタ、もっと早く避難たらいいものをと言ったな。
つまり、最初からスタンバっていたな?
守護るのはどうしたんだよ!
たしかにピクルはアンタに逃げ込んだけど、結局アンタがいなくてもどうにかなったじゃねーか!
守護れよ! やっぱり全然守護っていねえじゃんかよ!!
でも、お腹ぺこぺこのピクルを守護ろうとしても、ボコボコにされるのが関の山か。
守護ろうとしても守護れないのなら逃げ出すのを待つしかない。
本部、苦汁の待機であった。
……多分な。
でも、斬られた辺りで邪魔くらいはしてやればいいのに……
「あとは任せな」
ともあれ、今の本部は史上最強の男が認める守護者。
本当にいろいろな意味の期待を背負う。
本部はピクルの顔をその両手で包むのだった。
……そういえば、刃牙はこんなことをやって怒られたな。
今のピクルが傷心中で良かったな。
やる気あれば死んでたぞ、お前。
「野性が
「野性が
「どっちが上だ!!?」
「見せろ本部!!!」
刃牙の犠牲! ジャックの犠牲! そして、ピクルの犠牲!
数々の強者を犠牲にして今、本部が武蔵の前に立つ!
……まぁ、うん。
みんな、本部賛美のためにわりと悲惨な目にあったな。
刃牙はともかくジャックとピクルは今後まともな見せ場が与えられる気がしない。
今の本部は数々の格闘家を生け贄に……
いや、バキシリーズの歴史そのものを生け贄にして立っている。
せめて金竜山に勝っていればこんな無茶なドーピングをせずに済んだのだが……
ワガママを言えば金竜山に勝って猪狩に勝って刃牙に勝って烈に勝ってジャックに勝っていれば何の文句もなかったのだが……
だが、それだけに今の本部は輝いている。……よね?
いやぁ、小生、迂闊にも今回の本部、カッコイイと思っちゃったし。
線香花火のように輝いているよ。
すぐに尽きそう。
誰かを斬り殺すための武蔵の武と、何故か誰かを守護るための本部の武が激突しようとしている。
破壊者と救世主の戦いなんてまるで主人公と魔王の関係みたいだ。 今の本部はまさに主人公の器だ。
……だよね、そうだよね、そうしてくれ。
次回へ続く。
ピクル、逃げる!
そして、本部、ついに武蔵と相まみえる!
でも、すぐに戦うのだろうか。
今じゃダメージが全然ない感じだけど武蔵は肩の肉を食いちぎられている。
手負いに襲いかかるようでは主人公失格ですよ。
本部の戦い方は主人公とは思えないくらいクッソ卑怯だけど。
本部は酒瓶を手に試合場に入場しようとしている。
まずは酒盛りだろうか。
強者との酒盛りは勇次郎の得意技である。
それを本部がやろうとしているのだろうか。
これで俺は勇次郎と五分!
酒瓶の中身が濃硫酸でそれをいきなり投げつけたらちょっとシビれる。
同時に軽蔑もする。
まぁ、ここまで来たらなるべく早く守護って欲しいですな。
ギャラリーもいることだしもう襲いかかっちゃえ。
その時の台詞が「死ねぇー!」とかなら悪行即瞬殺。
本部がもし武蔵と五分に渡り合ったらどうなるのだろうか。
みんなが本部になろうと本部流の鍛錬をするようになるのだろうか。
いや、本部にできるなら俺にもできるとなるかも。
そうなると本部は大いなる勘違いをさせることになる。
こりゃちゃんと守護らんといかんな。
こうなれば本部に激勝した金竜山にもスポットライトを浴びせて欲しい。 金竜山を出した瞬間にいろいろと説得力がなくなりそうだけど。
本部が相撲部屋で鍛錬に勤しむ金竜山に襲いかかるかも。
もちろん、300点のフルアーマー本部で。
……やべえ、応援したくなくなってきた……