「勝った」と言うより「勝ってしまった」である。
うーむ、大丈夫なのか、本部よ……
「勝負あり!!!」
こういうことって……大抵夢……
そんなこともなく本部は本当に勝っていた。
なかったことにはできないようだ。
今本部がなかったことにしたいのはやっぱり1回戦負けだな。
あれをなかったことにしないとどうしても説得力が伴わない。
本部流なら時くらいは越えられませんかね?
「文句なしじゃッッ!!!」
みっちゃんも認めちゃった!?
たしかにこれは議論の余地がまったくない勝負ありだ。
生殺与奪は本部の手にあるし覆らない。
しかし、おめでとうと言いにくい。
やっぱり、本部だからか……
これが克巳なら大いに喜べたのだが。
ところで克巳は何をやっているんだ?
本部流を学んでいるとかは止めてくれよ。
「どーする………?」「
刃牙曰く、これも守護らしい。
いや、武蔵は観客に襲いかかったわけでもないし、守護るとは少し違うような……
二度と凶刃が振るえぬよう武蔵を殺したのならまだしも、あくまで失神させたくらいだ。
いや、これをきっかけに素手での戦いを志せば守護ったことになるか?
うーむ、守護道は難しい。
ともあれ、祝福だ。
皆が拍手で本部の勝利を祝う!
あの気難しいジャックでさえ拍手をしている辺り、本部の勝利は本物だ。
そして、観客の皆は守護られた実感が甘みと苦みの双方であるようだ。
観客たちは命を賭けてここに来たのか?
本部が守護ったのは何なのか。
それは直接的な危機ではなく時代かもしれない。 戦国から訪れた武蔵に現代の格闘家たちは次々に敗北した。
烈なんて斬殺に至っている。
現代は戦国に負けたのだ。
だが、本部が戦国から伝わる技術で立ち向かえど、最後の最後は現代の技術で挑み勝った。
本部の勝因は現代に生きるからこそのものなのだ。
現代に生きる者たちにとってはとても心強い実績だろう。
時代を守護ったのだ。
そして、それは格闘家たちの誇りを守護ったことにも繋がるのだ。
だから、ピクルに期待していたのは俺たちが束になってもかかっても勝てなかったピクルだから負けるはずがないというものかも。
敗者だからこその期待があったのだ。
その期待を本部が叶えることになろうとは……
何にせよめでたい。
めでたいから早く本部を守護って差し上げろ。
この人、両手両脚がダメになったし肺まで達しているらしいですよ?
そのうち、死にますよ?
この拍手の音で武蔵は目覚め、あっさりと負けを認める。
死刑囚とは違って潔い。
だが、本部の胸中は完全勝利とは行かないようだ。
「ならば」「幾度”手心”を加えられたことか………」
「「敵」ではあっても「強敵」と見なされてない……」
武蔵は本部を金重で斬った。
斬ったが全ては防具の上からだった。
やろうと思えば首や手を直接斬って殺すこともできた。
本部は全力だったが武蔵は全力ではなかったのだ。
……というか、平気そうだな、本部。肺は大丈夫なようだ。
ここで本部は五輪書を持ち出す。
独歩が読んでいるのだ。そりゃ本部だって読む。
そこにあったのは鍛錬の心構えだった。
「千日(3年)の修行をもって「鍛」となし」「万日(10年)の修行をもって「錬」となす」
「そんなあなたのこと
「この練習試合の間もず~~~っと!」
練習試合だったのかよ!?
烈や勇次郎、ピクルの時は斬殺を躊躇していなかったし、死合いであったのは間違いない。
だが、今回の相手は50点もやれない金竜山に負け男のへっぽこ本部だ。
だから、練習として付き合ったのか?
うーむ、本部が強いのか弱いのかよくわからなくなってきた。
守護られたのはグラップラーや武蔵じゃなくて、むしろ本部だったのかも。
「この勝負はあなたにとり」「「生還」を前提とした勝負だ」
「その甘みに乗じただけ」
勝った本部であったが実力による勝利、全力の武蔵に勝ったとは思っていないようだ。
本部は武蔵を死合いの領域に持ち込めなかった。
だが、死合いの領域に持ち込めばピクルでさえ敵わない。
しかし、練習試合ならばその隙を突ける。
本部は自分の弱さを武器として一矢報いた。 これはたしかに1回戦負け男の本部にしか守護れないことだ。
見方を変えれば本部は練習試合なのに毒や爆薬を使った男になる。
何というか……卑怯だ。
大金星を上げるためには卑怯にならざるをえないとはいえ……
だが、本部は練習試合に勝って喜ぶ男ではない。
さらに続けるかを問いかける。 無論、続ければ本部は死ぬ。
だが、ここで武蔵が続けたら不覚を取った上で相手の情けに甘えて斬り殺す最低の卑怯者になる。
武蔵の目指す名声を完全に穢すことになってしまう。
本部は試合とは別のベクトルで武蔵を追い詰めている。 本部の駆け引き力が活かされている。
それに対して武蔵は……本部に刺さった金重を手に取る。
そして、振り上げて本部の肩を斬ることで抜いた。
これはその気になればアラミド繊維と鎖帷子を斬れたということだろう。 例え防具越しだろうが真っ二つにできたのだ。
「ありがとう……それでもおまえは勝っている」
だが、武蔵は本部の勝利を認めながら立ち去る。
こうして死闘ならぬ試闘は終わるのだった。
本部の勝利を認める武蔵は潔い。
潔い故にこれからどうするのだろうか。
現代の戦士に合わせて刀を捨ててもらえれば助かるのだが……
ともあれ、大きな転機点を迎えるのだった。
次回へ続く。
本部の勝利は武蔵が本気でなかったことに起因するのだった。
そういえば、油断しまくりでしたからな。
明らかにピクルの時とは殺る気が違った。
ピクルを斬りまくって斬殺欲求を満たせたのもデカいかも。
今回で一番名誉を保てたのは武蔵でも本部でもなくピクルかもしれない。
武蔵はピクルを間違いなく殺す気だった。
生身に対して金重で斬りまくった大人げのなさだ。
それでも最後までトドメを刺せず逃がしてしまっている。
本気の武蔵に勝てずとも耐えられる肉体というのはピクルにしか持ち合わせていないものだ。
そんなわけでピクルには何とか名誉を復活させて欲しいところだ。
生身部門では堂々の最強クラスなんだし、今度は素手で戦ってもらおう。
というか、皆、もうちょっと心配してやれ。
肉食って寝れば1週間くらいで完治しそうだけど。
この守護を受けて刃牙はどうするのだろうか。
練習試合なら武蔵に勝てると思って練習試合を挑むか?
無論、以前に敗北したことはすっかり忘れる。
それが刃牙道!
……敗北をすっかり忘れて再戦を挑めば何故か勝っちゃうんだよなー、刃牙。