ここにはネウロのシックスに匹敵する純粋悪が蔓延る地である。
倒せ、宿禰! その時、君は英雄になれる!
その徳川邸が揺れている。
徳川邸に住まうみっちゃんのみならず、その周りを歩く人々も気付くレベルだ。
それは宿禰の四股によって発生していたものだった。
だが、四股と呼ぶには足を大きく掲げて過ぎている。股を180度開いているほどだ。
宿禰はこんな体勢でもバランスを崩さずに力強い四股を踏める。 宿禰は大地を揺らす筋力のみならず柔軟性とバランス感覚に優れている。
古今最強の力士はただ力持ちなだけではないのだ。
この四股を加納秀明は驚きながら見ていた。
アンタ、けっこう出番あるな。
宿禰の四股は通常の四股とはまるで異なるものだが、加納秀明はあれが本物の四股だったのではと恒例の謎インタビューに答える。
宿禰はマワシで四股を踏んでいた。
その肉体はとにかく太い。力士らしく肉が乗っている。
2mという巨体にこの肉だから体重はとんでもなさそうだ。
数値だけなら間違いなく強者であるが、強者を語る上で数値の頼りなさはリーガンが証明している。
その辺、ぼやかしたのは正解ですな。
数値にこだわったジャックなんかむしろ弱体化した気さえするし。
「醜にはもう一つの意味もあり」「「力強さ」や「頑丈さ」を表す言葉でもあります」
「故に――――力強く大地を蹴る 踏む」「この動作を「醜足」と称する」
宿禰曰く、四股ではなく醜足と言う。
実際に四股の語源は醜足にあり宿禰の言う通りの意味が込められているとか。
現代では失われた本来の四股……
石炭のダイヤモンド化は謎めいた儀式みたいだし、宿禰はかなり古流な一族の生まれなのかも。
「土地を清め土地を鎮める」
「踏むことで土地に棲む邪気を払い――――――魂を土中深く沈め込む」
さらに宿禰はちょっと信心深い。
醜足にこんな考えを巡らせるなんて神を信じず筋肉を信じる格闘家の中ではかなり珍しい。
その出自が特殊であることが窺える。
また、これはみっちゃんの世話になっている礼とのことなので礼儀正しいこともわかる。
その辺も珍しい性格をしている。
一方で闘争心はないわけではない。
それどころかむしろ滾っていた。
宿禰は取り組みの相手を、力比べの相手を求めている!
秘境に住んでいたようだし、それだけに自分の力を試したいのかも。
一体、誰が宿禰と戦うのか。
5本目に続く!