な、何でマッハ効かないのん……?
世界三大七不思議の一つですよ。
みっちゃんに遺伝子改造されたモンスターたちが大相撲力士なのでは……?
「知らねぇよ こんな「拳」」
克巳は人差し指一本拳を握って獅子丸のアゴを貫いた。
が、この形の拳を克巳は知らなかった。
克巳は豊富な技を持つ。
それだけにぶっつけ本番よりも積み重ねた鍛錬で戦うタイプなのだろう。
なので、普段は使わない技をとっさの判断で放ったことに驚いているのだった。
まぁ、人差し指一本拳はイスタスの右目を潰す時に使っているんですけどね!
とはいえ、握り方は若干異なる。
この若干の差に克巳は驚いているのかも。
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「烈さん!!?」
「近い…ッッ」
「近いぞ…! すぐ近くにいる!!」
その時、克巳は烈の存在を間近に感じる。
まずは背後に感じ次に腕の中にいることを感じるのだった。
友の危機に駆け付けるのは胸が熱い……のだが、烈の表情は何とも言い難い渋さだ。
やっぱり、大相撲に遅れを取ったのがいけなかったか?
烈が健在だったら大相撲のいる場所など3000年前に通過している!くらいは吠えたかもしれない。
克巳の身長は186cm。対して烈は176cm。
烈の方が10cmも小さいのに、霊体の身長は同じどころか大きく描かれている。
克巳にとって烈は自分よりも大きな尊敬すべき存在ということだろうか。 克巳は烈自身に認められるくらいには同格になったのだが、それでもどこか烈を尊敬する気持ちが強い。
烈に敗北したことの大きさとその意味がわかる。
先ほどの人差し指一本拳を刃牙は中国拳法だと見切る。
空手とは違う打ち込みをしたのが冒頭の克巳の困惑に繋がっているのかもしれない。
それよりもマッハが効かないことへの違和感を覚えて欲しいのですが。
……いや、ホント何でマッハ効かなかったのでしょうね?
まぁ、マッハのことはマッハで忘れよう。
鞭化したマッハは初披露なので完成度が低いのだ。
困惑している間に獅子丸は立ち上がり突っ張りのラッシュを放つ。
どうやら力士と言えど既にダウンすれば負けではない。
いつの間にやら何でもありのバーリトゥードである。
倒れたら負けの空気で戦って互角以上に渡り合った巨鯨と猛剣の評価が上がった気がする。 地下闘技場戦士がその気になればダウンくらいは簡単に奪えるということなのかも。
渋川先生も独歩も相撲の土俵で戦った感はあるし。
獅子丸の突っ張りを克巳は右腕だけで凌いでいく。 特筆すべきは無意識の中で捌いたことだろうか。
目隠しした状態でマウント斗羽の攻撃も捌いていたし、それと似た技術だろうか。
烈の右腕はオフェンスのみならずディフェンスも一流であった。
呆けている克巳に対して獅子丸は声を荒げる。
半ば無視されつつも捌かれている事実はプライドが許さないのか。
でも、君はマッハに普通に耐えたという偉業を果たしたので自信を持って欲しい。
ピクルだってダウンしたんだぞ。
ガイアがこの場にいたら何故死なん!と怒っているところだ。
克巳は
さらにここからは二人がかりと言うが獅子丸は状況を掴めていない。
克巳に劇的な変化が起きたのに肝心の対戦相手がついて行けていないのが残念だ。
けっこう煽り上手な烈と比べると口の方はいまいちな克巳だった。 烈は相手の闘争心に火を点けるのが上手かったから、その辺のプロレスの才能も受け継いで欲しかったですね。
「この…ッッ」「いかにもな特徴的な構えッッ」「間違いありませんッッ」
「拳友烈 海王ッッ」「かの達人が見せたあの構えだッッ」
友と共にあることを克巳は実感した。
その友に応えるべく烈の構えを見せた!
腰を大きく落とす独特の構えは烈ならではの構えだ。
同じ中国拳法家にも同様の構えを取る人物はいなかった。
烈は小柄な部類(176cm)なので、自分を大きく見せるよりも姿勢を低くして対応しにくくする狙いがあるのかも。 同時に一気に上段を跳ね上げるような攻撃も多いし、小柄であることの利を見出そうとしていることが窺える。
この構えを見た獅子丸は改めて立ち合いを開始する。
かちあげから掴もうとラッシュを繰り出すが、その全てが克巳の両腕に捌かれてしまう。 組ませず掴ませずの烈の右腕のみに頼らない見事なディフェンスであった。
今までは無意識の中で烈の右腕が攻守を行ったのだが、現在は克巳本人が意識的に行っている。
本来の克巳ならこれくらいはやれる技量があるのだろう。
片腕の個性を追求していた時には腕一本で行えるディフェンスも研究していただろうし、それを両腕で使えるとなれば力士程度捌くのは苦ではない。
烈の右腕はきっかけに過ぎないのだ。
また、ポイントはこの試合で初めて右腕を自発的に使用したことだろうか。
練習では右腕を使っていたのに試合に入るとちっとも使わなかった。
だが、この現象をきっかけに右腕に全幅の信頼を置いても構わないと判断したのか。
そういう意味ではこれまでの克巳は本調子ではなかったとも言える。
それならマッハが効かないのも納得だ!
納得か?
自分の間合いで完全に捌く克巳を前に獅子丸は狼狽する。
組めば有利。組める間合いに詰めれば有利。
そう思っていたであろう獅子丸が困惑するのも無理はない。
その動揺を突くように克巳は飛ぶ!
よし、見せろ! 烈の右腕からのダイナミックな正拳を!
空手と中国拳法が融合した令和ならではの正拳を!
「はいいいいッッ!!!」
そして、克巳は両足で蹴った!
結局、蹴るのかよ!?
いや、殴ろうよ。ディフェンスだけでなくオフェンスに使おうよ。
烈の右腕を用いた攻撃は極力避けている克巳であった。
ともあれ、烈の力を借りたというよりも、本来のノリに戻った感じの克巳だ。
普段はそこまでマッハ一辺倒じゃないというか、マッハ一辺倒の時はわりとしっぺ返しを受けている。
烈にワンパンで負けたり、ピクルとは壮絶なチキンレースをすることになったり。
天才の才能によって到達した高度な技術を用いた攻防が克巳の本来の持ち味だろう。
マッハはその一端に過ぎないのだ。
こうなると獅子丸は勝てる要素が一切見当たらない。 一度は勝ちそうになったのが奇跡というかどうかしている。
せめて一花くらいは咲かせて欲しいものだがどうなるのだろうか。
背中から巨鯨や猛剣から奪った腕を生やして阿修羅モード!とかやらないとダメっぽい。
そろそろ力士は改造生物ネタで盛り上げてもいい気がする。 それならマッハが効かなかったことにも納得できるから……
次回へ続く。