勝利への餓えが強みだったが失っていないか?
試しに刃牙をブン殴っておくか?
さて、異様な姿で都心を歩く男がいた。
素足で、パンツ一丁で、ボロボロのコートを着ている。
現代に蘇った原人、ピクルである。
メチャクチャな格好だが原人が服を着るようになっただけでも大進歩である。
衣服は身体の保護のために着るものだが、ピクルは全裸でチンポ丸出しでもまったく問題ない。
だって原人だもの。服を着ている方がおかしい。
衣服を着るようになったのは現代社会に溶け込む、というよりも馴染むためだろうか。
全裸で出歩けばトラブルがさすがに起こる。
剣持武の服を奪って擬態したようにピクルは知識はないが知恵を持つのだ。
もっとも、素足パンツ一丁ボロボロコートでは裸と同じくらい怪しまれるけど。
力が都心に姿を現したのは食事のためだった。
ゴミを漁っているカラス3匹を捉え食べる!
さらに生ゴミから出たであろう汁を飲む!
カ、カラスはわかるがゴミの汁を飲む必要はあるのか……?
ピクルにとって美味だったりするのか……?
ちょっと悲しいがピクルさん、けっこう落ちぶれてしまっている。
襲いかかる者しか食べない誇り高き戦士は、狩りを覚えた結果、生物的弱者を食べるようになり、さらにはゴミさえ貪るようになった。
本人としても現状に満足していないのか、情けないという自覚があるのか、表情には力がない。
ピクルは強敵と戦って勝って食べることに誇りを覚えていた。
だからこそ、涙するほどに強敵との戦いに感情を揺れ動かしていた。
だが、今は戦わず無感情に食べており、人生に張りがすっかりなくなっていそうだ。
まさかの原人、野性のニート化である。
ストライダムかペイン博士、強敵を用意してあげてほしい。
宿禰とは蹴速なんかは雑に贄と捧げても問題ないぞ!
そんなピクルの行く先にジャックとみっちゃんが立っていた。
かつての戦友を見たピクルは目を見開く。
だが、以前のようにいきなり戦意をMAXにすることはなかった。
腹が膨れていれば戦意が湧かないのがピクルではあるが、強敵を前にしてもこれといった反応を見せないのはちょっと寂しい。
さすがのみっちゃんもジャックに路上の真ん中で戦うことは禁じていた。
ピクルなら構わずに戦いそうなものだが、その気もなさそうである。
加えるなら最近のジャックならみっちゃんの忠言も大人しく聞きそうである。
お互いに牙が抜けた感がちょっとある。
いや、ジャックは礼節を覚えただけで戦えば相変わらず容赦ないデンジャラスファイターなのですが。
「ずっと―――――」
「ずっと――」
「ずっと君を想い続けていた……」
落ちぶれて悪臭を振りまくピクルをジャックは抱き締める。
まるで失意の主人公、あるいはライバルを抱き締めるようだ。
絵としては美しいのですが、ジャックさん、わりと無様に負けたんですけどね。
かつての勝者が落ちぶれ、かつての敗者が復権している構図である。
本部に守護ってもらわなかったのがダメだったか?
本部は一流を育てる! ……いや、花田と加藤は微妙か。
ジャックはピクルに対して重い感情を抱いていた。
完膚なきまでに負けたから憎しみのようなネガティブな感情を抱いていてもおかしくないが、そうした感情は一切ないらしい。
ピクルに最初負けた時も謝っていた。
この感情、まさしく愛だ! ……愛か?
二人の激突は予告されていたが、ジャックはピクルに対して敵意を越えた感情を抱いていることが判明した。
対してピクルはどうなのか。
ジャックのこと、忘れちゃったりして。
ジャックは勇次郎に認められたことでメンタル面はほぼベストの状態だ。
でも、ピクルの方は落ちぶれた感が強い。
楽な狩猟ばかりで強敵との戦いをしてなさそうだし、今のピクルは正直弱そうだ。
どうせ戦うのならお互いにベストの状態で戦ってほしいので、ピクルの立て直しも必要な気がしてくる。
ピクルに挑もうとして挑まなかった格闘家は多い。
この機会に改めて挑んでみるか?
オメエの出番だ、寂海王!
……何か今のピクル相手なら寂海王でも勝てるとはいかずともけっこう翻弄できそう。
一方で刃牙らへんで話題になっている美意識という点ではピクルはまったくない。
生きるためなら戦士としての誇りを捨て、楽な相手を貪るしゴミさえも食べる。恥も外聞もない。
美意識のなさではジャックとピクルは共通している……ようで、ジャックは嚙道へのこだわりがある。
ピクルもピクルでかつては襲いかかる者しか食べないという立派な美意識を持っていた。
美意識を持っていなそうでいて、自分に矜持を抱いているという点でも共通している二人と言えよう。
ピクルの方はこうした誇りを失っている感がある。
なので、取り戻した時がピクル復活の時であり、リベンジマッチの始まり……なのか?
ちょっとピクルさんの株が下がっている感はあるので取り戻してほしいところだ。
とりあえず、宿禰食っとくか?
誰も止めないぞ!!
次回へ続く。