バキ道感想 第84話「小さな巨人」



こと盛り上げないことに関しては刃牙は超一流である。
期待を煽った春成やJr.を瞬殺している。おまけで柳とシコルスキー。
同時に千春のような明らかな格下相手にも手こずったりする。
今日の刃牙はどっちだ! 宿禰はどこだ!

刃牙(168cm76kg)と炎(165cm97kg)が並ぶ。
珍しく刃牙の方が背が高い。
今まで戦って来た相手で刃牙以下の身長は柳くらいだから稀な相手だ。
だから、戦い慣れていない……ということもなく、柳は足腰立たなくなるまでぶっ叩いた。
結局、範馬刃牙は馬鹿みたいに強いから相手がデカかろうが小さかろうが関係ないのだ。
身長で刃牙が勝る反面、体重では炎が20kgも上と圧倒している。
炎は痩せ形の力士ではなく、小さいなれど肉が詰まった力士だ。 体格では刃牙の不利……なのだが、オリバに真っ向から殴り勝てる異常な筋肉を持っている。
20kgなどハンデにさえならないだろう。
ダメだ、この時点で炎に楽観視できる要素がない。
いや、巨鯨でも無理なんですけどね、範馬刃牙は……むしろ、巨鯨の方が無理。

刃牙は笑う。炎も笑う。
どうやら気圧されてはいないようだ。
これなら期待できる……と思わせておいて、一瞬でやられる可能性も全然ある。
範馬刃牙は空気を読まないのだ。
……瞬殺に注意しなければならないのは異常な状況だな。

ともあれ、試合が開始はじまる。
お互いに真っ直ぐに歩いていく。
刃牙ならやりそうなことだが、力士の炎としては異質だ。
何せぶちかましから始まらない。
10秒の密度が武器の力士が得意とする初手全力ではないのだった。

炎はレスリングのような両腕を上げた構えを見せて刃牙と対峙する。
初手全力どころか、じっくりと見合うことを選んだ。
最初の10秒に全てを賭けない戦い方だ。 数々の力士が敗れ去ったことに起因してか、炎は相撲の立ち回りにこだわらなくなったのだろうか。
力士たちもじょじょに相撲ルールから離れて行っているけど、立ち回りから変えたのは炎が初めてだ。
力士たちも敗北から学んでいるのだ。
……なので、その辺の機微にも触れて欲しいんですけどね。

対して刃牙も同じ構えで対抗する。
刃牙は相手の土俵で戦うことが多い。 今回も力士らしからぬスタイルを見せた炎に合わせたのだろう。
相手に合わせるならせっかくだから相撲で戦ってあげればいいのに。
うーん、サービス精神が足りないな、チャンピオンよ。

でも、刃牙は独歩相手に相撲をしたら何故か負けていた。 それを踏まえると相撲エキスパートの力士に相撲で挑むのは愚策と考慮したのかも。
何も考えていないようでいて、何も考えていないのが範馬刃牙である。
こいつの動きや心情はどう読めばいいんだ?

二人の手がゆっくりと引き寄せ合い、触れたと同時に掴んで手四つになる。
だが、それと同時に炎は握っていた手を離して背後に回り込んでいた。 これには観客や実況だけでなく刃牙も冷や汗を流し驚愕する。
百戦錬磨の刃牙が驚くほどの異常事態であった。
本来なら刃牙も炎を掴んでいたからこのような状況にはならない。 回り込もうとしても回り込めないはずだ。

炎は小兵とは思えない力を持つとはいえ、本来なら対峙する力士と真っ向力比べをする展開は避けたいはずだ。
「小兵のわりに力持ち」でも、「体格相応の力持ち」相手に勝てる道理はない。
小結という力士軍団の中でももっとも低い番付に甘んじているのもだからか。
だからこそ、捕まれた状態から逃れる技術を身に付けているのかも。 真に驚くべきは炎の速さではなく技術かもしれない。

「ホントに小兵か!!?」

だが、刃牙は炎の速さでも技でもなく、純然たる力に驚愕する。
お前が言うな、お前が!
アンタのパワーも十分以上におかしいがな!
宿禰と戦った時にはいつも通りに体格以上のパワーを見せて互角に渡り合ったのだが……
油断か?
やっぱり油断なのか?

「小さな…」
「巨人!!!」


刃牙は大きな腕に胴体を鷲掴みにされる感覚を感じながら投げられる。
前座試合で見せたようなワンハンドスローだ。
レスリングのような構えといい、炎は純然たる力士ではないのだろうか。
実はガーレンの弟子だったりしたらワンチャン……ないか。

範馬刃牙はこれ以上の超常と戦い続けてきた男。
投げられはすれど空中で姿勢を整えて問題なく着地する。
炎に驚きはすれど問題にしていないのが実情だ。 刃牙にとって炎はそうしたレベルの相手ということか。
でも、アクビをしなくなったから礼儀はわきまえるようになった、のか?

「なんて…ッッ」
「なんてデッカい……!!!」
「アリガトウ小結ッッ!!!」


投げられた刃牙は炎に感謝する。
何で感謝するのかはよくわからないが、炎が刃牙の期待通りかそれ以上だったということか。
強さそのものは刃牙が圧倒的かもしれないが、強さの質は刃牙が持っていないもの、かも。
……多分、刃牙も同じことができるけど。
何せトリケラトプスと同じパワーを持っているのが範馬刃牙だ。 小兵以上のパワーなんて握り潰せますよ。

炎は刃牙を驚愕させるほどの速さ、技術、そして力を見せた。
でも、その全部を超一流の領域で持ち合わせているのが範馬刃牙である。 なので、真っ向勝負になれば炎は無惨にも敗れ去るだろう。
これで炎が真っ向勝負で刃牙と渡り合ったら解釈違いである。

そこで炎には強さ以外のアピールポイントが欲しいですね。
バキ世界には珍しい美形ということで梢江を既に寝取っているとかどうでしょうか。
動揺して隙が生まれた刃牙を炎が投げる!
炎が猪狩以上の卑怯者なら先の展開も読めなくなって盛り上がる、かも。

でも、梢江を寝取るためにはバキSAGA以上のことをしなければダメなんだよな。
うーむ、見たいような見たくないような……
いや、普通に見たくないよ、それ。
次回へ続く。