勇次郎でもダウンまでは取れなかった。
一撃で気絶はさせたけど。
うーん、気絶の方がデカいか。拳がめり込んでいたし。
そんなわけで宿禰がダウンする。
後頭部を先に地面に着けた後、さらにそこを基点に回転。
頭を前にする形でうつ伏せに倒れた。
200kg以上の巨体が回転するほどの打撃であった。
200kgのピクルをアッパーで吹っ飛ばしたことがあるし、これくらいは楽勝の範疇だろうか。
「打撃が」「まるで錆びちゃいない」
「ホントに」
この打撃に克巳と刃牙も驚く……って、克巳さん。
アンタ、ジャックの打撃が錆び付いていたとでも思っていたのか?
たしかに妙に噛み付いていたし、敬語を使うし、本部に負けてるし、大丈夫なのかと思っても不思議じゃない。
「噛み付く
本部も知ったような口をきく。
そう、これだ! これが本部以蔵だ!
何か知らんけどデカい口を叩く男、それが本部以蔵である。
独歩を1分以内殺せると豪語したり、勇次郎でさえ守護ると言い出したり!
ただ刃牙道の大躍進から条件さえ揃えば可能になってしまったんですよね、このビッグマウス。
本部はジャックの噛み付きに対処し打撃にも耐えた。
だから、俺ならこうはならないぜみたいな余裕が感じ取れる。
いや、余裕ぶるのもいいけど解説しなさいよ。
今、読者からの本部への期待は守護ると言い出した時くらいはありそうなんだ。
解説すれば英雄になれるぞ!
僧帽筋を噛み切られた。
倒れないはずの力士がダウンを奪われた。
バキ道で急に始まった力士神話が終わりそうな勢いでピンチである。
「ホントは」
「ここからだナ」
だが、それでも本部と渋川先生の二人の実力者は力士の強さに可能性を見出していた。
この二人が並んでいるのは未だに違和感があるが最大トーナメントの頃からの付き合いなので許そう。
いや、あの時って完全に本部が格下ポジションで並び立つレベルじゃなかったけど。
それどころか最初は実力を訝しんでいたくらいだし。
実力が証明された後半になってやっとセコンドみたいなポジションに立ったし。
ともあれ、宿禰は立ち上がる。
その宿禰にジャックは容赦なくハイキックを顔面に打ち込む。
先ほどはこの蹴りで吹き飛んでダウンした……のだが、今回は倒れない。
それどころか、打ち込んだジャックが冷や汗を流し歯ぎしりするくらいの痺れが足元に来ていた。
「コンビネーションでちらせば――――」「ダウンくらいは取れる」
「――とは言え」「見える打撃なら やはり受けきると」
さっきダウンを取れたのはコンビネーションだからこそ。
そして、覚悟できてさえいれば破壊力最高峰のハイキックにさえ耐える!
克巳と刃牙はそう見るのだった。
覚悟さえできていればジャックの打撃に耐えうるのは異次元だ。
ダイヤモンドを作る異常性はタフネスにも表れているのだった。
「古代相撲……」
「やっぱハンパねェ…!」
実力者たちは古代相撲の凄まじさを改めて知るのだった。
相撲スゲェをやろうとしたけどその大相撲力士がいまいちだったから、今度は古代相撲スゲェにシフトした気がする。
ここまで来ると古代相撲というよりも宿禰自体がスゴいんだと思うのですが。
古代相撲の使い手が宿禰だけだから比較もできないな。
宿禰はこれほどの強敵を初めてではないと語る。
そう、宿禰は勇次郎という強者と相まみえている。
ならばジャックがどれほどの強者であろうと強者は初めてではないのだ。
あの時の顔面めり込み一発気絶と比べたら、ジャックの打撃は耐えられないレベルではない!
「出雲……」
「本山………」
「一日とて欠かさず向き合ってきた……」
「身長――――2メートル超」
「体重―――250キロ」
「それも――――」
「全方向への250キロの重量――という……」
そっちかよ!? 勇次郎じゃないのかよ!?
ここでまさかの250キロのリアルシャドーを持ち出してきた。
すっかり忘れたところに持ち出すというジャックの噛み付きからの打撃みたいなコンビネーションだ。
強敵を想定したトレーニングをしてきたから大丈夫は範馬刃牙に通じるものがある。
あいつもピクルの打撃を勇次郎を想定していたからだけでかわしやがった。
強敵を想定して鍛錬することは大事だが、本番一発で実行されると納得しがたいのが実情だ。
これだからお前らは人気が出ないんだよ……!
しかし、その上で不覚だと宿禰は感じる。
ジャックは想像を越えた強敵なのだった。
いや、想像だけで対応されると困るのだ。
想像通りに叩き潰された零鵬はダメでしたね。
「2500キロで―――――――噛み付かせるンだった!!!」
何か10倍になった!?
250キロではなく2500キロというのに現在のジャックの評価がわかる……のか?
2500キロの噛み付きに対応できればジャックの噛み付きはものともしないのはわかる……のか?
ともあれ、巨頭二人が真っ向から殴り合う。
バキ史上最大級の殴り合いである。
って、殴り合うのか。
ジャックとしては得意の打撃に耐えられてプライドが傷付いた。
宿禰としては僧帽筋を噛み切られ投げが使えなくなった。
お互いに殴り合いに応じる理由はあるのであった。
奇しくも古代相撲の起源、初代宿禰と蹴速の戦いに立ち返った。
ジャック兄さんは負傷がないからもうちょっとゆっくりやってもいいと思うんですけどね。
宿禰は出血し続けるわけだから時間をかければかけるほど有利になる。
いっそ噛み付きに立ち返ってもいい。
打撃があると見せかけての噛み付きはより効果的だろう。
しかし、実益よりもプライドを優先した形か。
賢くはなりきれないのがジャックであった。
「決着――」
「近いような…!」
お互いに全力で殴り合う展開になったので決着は近い……のか?
現状、宿禰は耐えてはいるがやっていること全部が返されている。
ここで勝てば大逆転だがそうやって唐突に勝たれたらさすがに困る。
ジャックはフィジカルお化けだし、勝つなら何らかの工夫が欲しいですね。
宿禰はピンチに回想で回復した。
バトル漫画のお約束ですね。
ここで思い出すのが一人でのトレーニングなのがぼっちというか何というか。
あと使い回しなのが心情的にマイナスだ。
だが、ジャックにも回想のストックはある。
嚙道が目覚めた台湾の回想だ!
って台湾で何があったのかは普通に気になるところだ。
本部の解説を交えながら語って欲しい。
次回へ続く。