バキ道感想 第117話「獣の構え」



ジャック範馬はリスクを恐れない無鉄砲なファイターだ。
ドーピングを躊躇わずに行うし攻撃を受ける時は全部ノーガードだ。
なので、宿禰の必殺技、肋骨掴みにもノーガードで向かう!
うーん、本部からクレバーさを学んで欲しかったのだが、そっち方面の進化は望めないのか……


ジャックは宿禰の肩を噛み、宿禰はジャックのアバラを掴む。
お互いにまだ決まってはいないものの既に激痛間違いなしだ。
噛み付かれるのも痛いし、筋肉越しに骨を掴まれるのも痛い。
攻撃力だけでなく精神力も試されるキツい状況だ。

「アバラ投げが炸裂ゥーーーーッッ!!!」

ここで先に動いたのは宿禰だった。
オリバと零鵬を砕いたアバラ投げが決ま……らない!
投げの途中で両者が静止する!
ジャックは転蓮華に耐える首と足腰の強さを持つが……これもそうなのか?

「僧帽を切られた」

「投げられんゾありゃ……」


ここで百戦錬磨の刃牙と独歩がこの事態を見切る。
僧帽筋……重量物を持ち上げる時に稼働する部位であり、ジャックが最初に噛み切った部位である。
宿禰がジャックを投げる時にも僧帽筋が動く。
既に噛み切られた左僧帽筋は使えないからか、無傷、それでいてジャックに現在進行形で噛み付かれている右側で投げようとしている。

投げの途中で宿禰は間合いを離す。
必殺の距離を自ら拒否したのだった。
宿禰は左に続いて右僧帽筋も噛み切られていた。
これには余裕の表情を見せていた宿禰も冷や汗ダラダラで余裕のない表情だ。
必殺技対決はジャックに軍配が上がったのだった。

ジャックは噛み切った僧帽筋を吐き捨てる。
肉片が飛び交う血生臭い展開に観客も引き気味だ。
人目の中で戦いたいと言いながら目に悪い戦い方をするのがジャックだ。
これでは嚙道を学びたいという人間もいなそうだ。
基礎トレーニングとしてドーピングを要求されそうだから、何であろうと広まりようはないか?

「客が引いてるぜ」

「僧帽筋が関与しない投げはない」「それを噛み取られちゃあナ…」


ここでついに解説界の重鎮、本部が発言する!
豊富な知識のみならず状況を的確に見切る洞察力が本部の最大の武器なのだ。
本部の発言は客が引いていることについてだけどな!
あ、僧帽筋については独歩が喋ってます。

本部以蔵、一世一代の大チャンスに一世一代の大ポカである。
ここで華麗に解説すれば好感度鰻登りだったんですけどね。
一連の僧帽筋の解説もしてあげれば良かったのに。
うーむ、もったいない。
いや、ある意味では本部らしいんだけど。

ともあれ、ジャックは宿禰の武器である投げを潰した。
無理に噛み付いていると思ったが意外にも的確に強みを潰していたのだった。
向こう見ずファイターがジャックだが、意外にも今回は頭脳プレイ?だ。
これは宿禰の情報も集めていそうだ。
何せ人前で戦ったオリバと零鵬、あとの大関との戦いはどちらも骨を掴んでの投げで勝っているし、警戒するのも当たり前か。

優位に立ったジャックはさらに新たな構えを披露する。
巨体に手をつくレベルで姿勢を大きく下げた構えだ!
かつて渋川先生に使ったクラウチングスタート、あるいはピクルタックルのようだ。
噛み付きファイターならピクルの存在は欠かせないから、嚙道のモデルとしてピクルを選んでいそうではある。
ピクルは基本的に殴る蹴るで弱らせてから噛むから、いきなり噛み付くことはあまりないんですけどね……

この構えに対して宿禰は僧帽筋を噛み切られた動揺を引きずったままだった。
何があっても常に動じず、何を考えているのかわからず、それ故に感情移入もしにくい宿禰らしからぬ姿である。
すっかり呑まれていますね。
ついにやっと見れた宿禰が焦る姿である。
勇次郎は……まぁ、あれは桁違いということで。

ジャックは姿が消えて見えるほどの神速の踏み込みをする。
一瞬で肉薄ししゃがんだ状態で宿禰の顔面を蹴った!
通常の格闘技にはほぼありえない姿勢での蹴りだけに対応しにくい。
噛み付きの恐怖を押し付けられ続けたからなおさらだ。

一瞬で近寄る身体能力もさることながら、超低空から蹴り上げるという高いバランス感覚と技量が窺える。
噛み付きのインパクトに薄れがちだが、これでけっこうテクニシャンな部分もあるのがジャックだ。
そうした技巧派な一面が表れた一撃だ。
動揺した宿禰に搦め手という心理戦も制している。

これで止まるジャックではなく立ち上がって左ジャブを三連打、全弾命中する。
ヘヴィ級のジャブは階級が下のボクサーのストレート並みの威力を誇る!
当たるのが当たり前であると同時に、ジャブよりも速い打撃もありつつも、それでも刃牙クラスが使えば十分に必殺になりうるのがジャブだ。
故に小さくも文句なしに強烈な一撃である。

さらにジャックはハイキックを顔面にブチ込む。
巨体でバランスが取りにくくなっただろうに、低空からの蹴りといい見事な技量である。
この予想外かつ強烈な打撃の雨あられを受けて宿禰はついにダウンする。
打たれる覚悟を決めた力士を倒す脅威の打撃である。

「そもそもジャックは」「「打撃系」出身だったーッッ!!!」

噛み付きのインパクトが強いジャックだが、何だかんだで主体となるのは打撃だ。
それだけに超一流の打撃であった。
ここまで無理に噛み付いていたのがそもそも不自然なくらいだった。

もっとも噛み付きに固執したのも宿禰の強みを奪うためだったとしたら納得ではある。
余力のあるうちにハイリスクな噛み付きでアドバンテージを奪う。
その後はローリスクな打撃で仕留めるスタイルだろうか。
理に適っている……のか?
顔面を蹴られた時に普通なら歯茎ごと歯が吹っ飛んでいるから、何かジャックにのみ許された立ち回りな感はある。

新生ジャックは真っ当に強い。
本部と戦った時のポンコツっぷりはどこへやらだ。
ジャックはその凋落が悲しかっただけにまともに強い姿は嬉しいですね。
とりあえず、不慣れな敬語は忘れてあげても良さそうだ。

一方で宿禰はボコボコだ。
必殺技の投げも両方の僧帽筋を噛み切られて使えなくなってしまった。
活路を開くために必要なのは……蹴りか?
打撃戦はジャックの十八番だしアドバンテージは取れなさそうだ。
いや、ジャックはノーガードで受けるから全然可能性はありそうだが。

大ピンチの宿禰はどうするのか。
このまま、負けてしまうのか?
それとも初代野見宿禰を召喚してみるか?
そう、サリバンを召喚したアイアン・マイケルのように!
アニメ範馬刃牙で久し振りにアイアン・マイケルが出てきたしイケるイケる。
アニメでも何一ついいところなかったけど……
そんなわけで一蹴休んでの次回へ続く。