刃牙らへん感想 第29話「近代格闘技」



バキ世界では珍しいリベンジマッチだ。
小手調べみたいな戦いの後にちゃんとしたバトルをするのはよくあるけど、本格的なバトルの後にまた再度戦うことは滅多にない。
長期連載だからこそ実現したリベンジマッチだ!
そして、長期連載の間にピクルさん、ちょっと弱くなってない……?

左ストレート、カウンターの右ストレート、ハイキックをモロに受けてピクルは笑っている。
このタフネスの秘密は白亜紀に圧倒的なサイズの恐竜と戦ってきたからだ!
久し振りにピクルの白亜紀回想防御が発動した。
これが白亜紀のスカラですよ。防御力が一気に上がるぞ!

でも、その白亜紀の防御力は刃牙によって無力化されている。
現代格闘技は白亜紀の急所を抉るのだ。
真マッハ突きを頂点とする力押しが通用しなかった中、刃牙の現代格闘技は確実にダメージを重ねたので弱点とさえ言えるかもしれない。
あるいは妖術の一つ、ディスペルで防御効果を打ち消したとも言える。
近代格闘技の攻撃力がってよりもやっぱディスペルな気がしてきたな……

猛打に耐えたピクルに対しジャックは相変わらず格闘技の構えを崩さない。
白亜紀の牙にも爪にも角にも耐えてきたピクル相手に格闘技は通じるのか?
いや、刃牙さんのは通じちゃいましたがジャックの格闘技は通じるのか?

「対人間用の武器じゃない」

恐竜たちの牙、爪、角は強力だが人間用の武器ではない。
というわけで、ジャックは右ストレートと見せかけてピクルの髪を掴む。
これは恐竜たちにはなかった搦め手であろう。
ピクルも想定していた攻撃ではなかったからか、あっさりと掴まれてしまうのだった。

ジャックは髪を引っ張り顔面に膝蹴りを打ち込む。
さらに髪を引っ張ってピクルの体勢を反転させる。
ジャックは髪というある種の急所を用いてピクルの体勢を操っている。
あのジャックが力任せに殴るだけではなく技術を使っている。
ピクル相手に真っ向勝負は無理があるとは悟っているらしい。



後ろを取ったジャックはピクルの腰に腕を回すとピクルも冷や汗を流し戦慄するのであった。
戦いの中で姿勢を意識して崩し、背中を取るという行動を取る恐竜はいなかったのだろう。
ピクルが戦慄するのも無理はない……のか?

ここからジャックはジャーマンスープレックスで投げる。
全身を用いたダイナミックな投げである。
って、噛み付きじゃないんかい。
背中を取るという格好のチャンスに噛み付かないのはもったいないぞ、ジャックよ。
昂昇の時はちゃんと背中から噛み付いたのに……!

ともあれ、ジャーマンスープレックスはピクルの脳天を揺らしたようだ。
四足獣並みの頸椎を持つとはいえ、全身を叩き付ける一撃はけっこう効果があるようだ。
ここからさらにジャックはマウントポジションを取る。
近代格闘技における必勝の型である。

「ピクル」
「現代格闘技どう捌く…」


この体勢の強力さは刃牙も知っている。
刃牙本人はかつてマウントポジションを取られた時にフィジカルでどうにかしちゃったけど、一般常識的には大きなアドバンテージを取れることを知っている。多分。
それだけにどうピクルがマウントポジションを捌くのか、気になるのであった。

でも、刃牙さん、あなた、現代格闘技でピクルを封殺したやん。
現代格闘技の攻撃と防御でピクルの急所を突いたのはまだしも、白亜紀闘法にまで着いていったのはどうかと思うぞ。
何か値踏みする態度も勝者の余裕なのか?
これくらいどうにかしてもらわないと困るみたいな……

「手技打撃」
「最大最強と云われる――」「鉄槌…」


マウントを取ったジャックは拳をピクルの顔面に振り下ろす。
シンプルながらも極めて強力な一撃であった。
さらにマウントポジションを維持する限りこの一撃は続く。
打撃での決着は無理とアナウンサーに言われたが、打撃でもやれる方法があると言わんばかりだ。

ジャックの方が有利ではあるがピクルのフィジカルは崩せるのか?
これでピクルが本格的なダメージを負ったらちょっと残念になる。
真マッハ突きや妖術や真剣でやっとダメージを与えられる相手がピクルだし、マウントポジションを取られるだけで不利になるようだと困る。
いや、でも、刃牙の打撃でダメージ受けまくったからなぁ……
アレは刃牙がおかしいと言えばそこまでですが。

非常に有利な状況を作れるのがマウントポジションだが、それだけにバキ世界では破られるのが通例である。
巨漢とムエタイと金玉が砕かれるようにマウントポジションも砕かれるのだ。
というわけで過去の例を見てみたい。

その1 刃牙VSズール
作中初めてのマウントポジションである。
それだけにその強力さは語られたのだが、前述通りに範馬刃牙の圧倒的フィジカルであっさり崩された。
ズール、それなりに強かったはずなのだが……
マウントポジション敗北伝説の始まりと言えよう。

その2 刃牙VSジャック
ゲロって細くなったジャックが刃牙の背中に乗りかかる形でラッシュをしている。
バックマウントというものですね。
刃牙が見せた何か、おそらく鬼の貌に気を取られた瞬間に投げで崩されている。
ジャックの初のマウントポジションは敗北で終わっている。
また、圧倒的に有利なポジションなのに、刃牙の技術や策というより動揺がきっかけとなり敗れているのはジャックの精神面の甘さが出ている。
甘さがなくなった今ならケツの穴を晒そうとも構わずに殴り続けるのか……?

その3 花山VSスペック
膝を撃ち抜かれ脚を使えなくなった花山が逆転策に選んだのがマウントポジションだった。
この時は如何に脱出しにくいかよりも、地面に叩き付けるので打撃が強力になることが語られた。
攻撃力も増すのがマウントポジションなのだ。
そんなマウントポジションは閃光手榴弾により抜け出された。
実力が逼迫しているのならこのような搦め手を使わないと脱出不可能とも言える。

その4 武蔵VSピクル
研究施設での前哨戦で武蔵が馬乗りになった。
ここからの攻防は特にしてはいないが、ピクルは腰の力のみで武蔵を打ち上げて状況を打開している。
つまりはフィジカルである。
やはり、フィジカル……フィジカルは全てを解決する!

その5 本部VS武蔵
本部は武蔵の気が逸れた隙に押し倒してマウントポジションを作っている。
そこからの打撃を幾度も加えた上で裸締めに移行して本部は武蔵に勝利した。
珍しく破られず、それでいて決定打へと繋げたマウントポジションである。
これはさすが本部以蔵と言えよう。
武器を使いまくった本部が最後の最後で格闘技を用いたのも熱いところだ。
武器に頼った上で最終手段に素手を選んだのはスペックと一緒なのは無視しておこう。

その6 克巳VS獅子丸
相撲において本来は選択肢にならないマウントポジションを獅子丸が敢行している。
克巳を追い詰めた……かと思いきや不得手な状態だからか、獅子丸の打撃は空振り、克巳の金的で崩されている。
両者のマウントポジションにおける攻防の熟練度、心構えの差が如実に表れ結果に反映されている。
それ故に一番まともなマウントポジションの崩し方をしたと言える。

というわけで、1勝5敗がマウントポジションの歴史だ。
さすがに必勝には遠い。
だが、その1勝が本部さんなのが何とも印象的ではある。
最弱の札である歩も使い方次第で戦局を揺るがす一手となる。本部の一手はまさにそういうことだろう。
いや、それだとマウントポジションが最弱の札みたいだな……

一方で長い連載の歴史で6回しか出番がない辺り、ある意味ではその強力さが窺える。
あまりにも強すぎて空中マウントポジションなんて技を生み出した漫画だってあるんですよ。
空中マウントポジションってなんじゃい……

もっとも、ピクル自身、武蔵が本気ではなかったといえフィジカルで破っている。
まぁ、今回もあっさり破られるでしょうな……
次回へ続く。
なお、休載を2回挟むので3週間後だ! 休載がどんどん増えて延びているぅ!