バカか、テメエ!
自分から地雷を踏みに行く阿呆がいるか!
でも、この命知らずが本部らしさか。
本部の最期、刮目せよ!
「ハーディ・ドス・ノール…」
「コニャックだ」
「
とりあえず、高級ブランデーを奢ることで圧倒的な格上だと見せつける勇次郎であった。
コニャックと言えば高級の代名詞のようなものである。
おそらく本部は生涯に1度も口にしない。 この機会がなければ安酒しか体験できぬまま、骨を埋めていたことだろう。
そのコニャックを勇次郎は1ページに渡って味わう。
コニャックを頬の中で踊らせ、噛んで、飲み込む。
料理漫画でも火山を爆発させたりすることはあれど、ここまで濃密な表現はなかなかあるまい。
料理描写には定評のあるバキらしい。
「いい葡萄だ………」
「樽もいい………」
ここで勇次郎はコニャックの葡萄だけでなく樽も評価する。
酒において樽は重要な個性となっている。
だからとて樽を褒める辺り、実にグルメだ。
さらに安物のキャンディを勇次郎は食べる。
コニャックに良く合うそうな。
実際にどうなのかは美味しんぼにないシチュエーションなので小生は知りません。
美味しんぼ自体が信用に足るかどうかは、まぁ、うん。
こうして本部にとってはまったくの未知の世界を勇次郎は展開した。 既に本部を圧倒する気を見せている勇次郎だった。
今までの本部なら萎縮してもおかしくない。
この時点で冷や汗をだらだら流す。
失禁だってしかねない。
格闘家が失禁することは存外ないのだが。刃牙くらい。
「飴玉を口にする範馬勇次郎」
「とんだ「お宝映像」を見せてもらった」
だが、今の本部は一歩も退かず勇次郎に対抗してみせた。
バカな! あの本部が!?
刃牙が相手ならまだしも――いや、刃牙が相手でも相当なのだが、勇次郎にも退かないとなると本物だ。
本物の武芸者か本物の命知らずだ。
武道家は特攻隊じゃないんですよ。
そろそろ逃げてみてはいかが?
「浮かれてる………」
「”宮本武蔵”という絶対ブランド」
「逢いてぇ…」
そんな本部にキレない勇次郎であった。
相当に浮かれていることは認めているのだった。
花山の犠牲は何だったのか……
そんなわけで武蔵が蘇ったから動向が不明な勇次郎であったが普通に浮かれていた。
それでもすぐに行動に移らなかったのは即殺し合いに発展すると知ってか。
この言葉を聞いて本部はコニャックを「カッ」と一気飲みする。
一気飲みの王道擬音ですな、「カッ」は。
勇次郎と違って味わわない。
一生に1度のコニャックだぞ! 味わえ!
「悪いことは言わん」「止めておけ」
本部が勇次郎を止めた!
まるで暴走するダンプカーに突っ込むかのような無謀である。
もとい自殺行為である。
死ぬぞ、死ぬぞ本部……
少年誌では描けないほどの惨たらしい死体になるぞ……
この言葉は予想外にもほどがあったのか、勇次郎は9コマに渡って無表情になる。 コピーに見えるが微妙に作画は異なる。
最近はこういう演出が増えましたね。
楽そう。
「なんで?」
思わず勇次郎は聞き返してしまう。
本部は最初期から勇次郎を知る人物である。
勇次郎の人格も実力も知り尽くしているはずだ。
そんな本部が勇次郎を止めるとは正気なのか……?
しかし、実力を知り尽くしている人物が人食い愚地は分が悪いと言うはずがない。
本部の実力を見誤っていたのは認めざるをえないが、あの頃から見通しが壮絶に甘かった。
今もそんな気がする。
「アンタの手に負える相手じゃない」
勇次郎は武蔵に勝てないと言った!?
言ったというか、言っちゃったというか……
これには勇次郎、1ページに渡り10コマの沈黙を見せる。
そして、血管を浮き立たせ立ち上がる。
そりゃ怒る。
誰に言われても怒るが本部ならなおさらだ。
「残暑奮わぬ今夏」「頭をヤラれる日射しでもあるまい」
「本部以蔵」
「誰だったら手に負えるんだい………?」
キレてる! 勇次郎がキレてる!
怒りが勇次郎の感情の主成分である。
本部はそのことを知らんでもあるまい。
今すぐ誤りを謝らなければ不味い。
いや、謝ってどうしようもない相手なのは事実だが。
こうなったらピクルの時の米軍兵士のように本部は自分で自分を殴っておくか?
あれ、数少ない勇次郎からの自衛策だし……
「範馬勇次郎」
「安心していいんだ」
「君らの身は俺が
言ったァァァァアァアアァアアア! 勇次郎にも守護ると言ったァアアアァアアアア!!
勇次郎さえも守護る!
本部の守護者としての覚悟は本物だ。
どうしてそこまで守護る気でいるのかはわからんが本物だ。 今のところ、全然守護れていないが本物だ。
やる気だけでなく行動に移して欲しいのですが……
これには勇次郎は完全にキレる。
怒髪天を衝くどころではなく、髪が四方八方に尖り壮絶な怒りを表している。 かつてここまで勇次郎がキレたことがあっただろうか。
いや、ない。
「殺゛し゛て゛や゛る゛~~!!!」
勇次郎が泣くほどにキレている!
本部に守護ってもらうとは落涙するほどの悔しさであった。
まぁ、わからんでもない。
だって、本部ですよ、本部。
遙か格下ですよ。金竜山に負けるような雑魚虫ですよ。
そんな男に地上最強が守護ってもらうなんて泣くほどの屈辱に違いない。
ちゅどッ
こうして本部の死は確定した。
リアル鬼哭拳で即死!
だが、ここで刃牙を欺いた煙幕だ!
煙幕はスモークグレネードとして戦場でも使われる武器だ。
その脅威を勇次郎も知っているのか、素早く後ろに下がる。
困惑するだけの刃牙とは違うのであった。
「~~~~~~~~!!!」
だが、その隙に本部は逃走!
これには勇次郎も怒りも涙も忘れて呆然とする。
あの勇次郎が本部に一本取られてしまった。
今の本部は本物かもしれない……
戦場なら勇次郎に匹敵するのか……?
いや、全然守護れていないので本末転倒なのですがね。
次回へ続く。
本部、勇次郎を翻弄す!
何かもう死んでも悔いはない感じですね。
よし、死のう!
ここまで守護ると大言を吐いたのだから、そろそろ守護って欲しいところだ。
これじゃ口だけの男ですよ。
まぁ、今までも口だけの男なので何も評価は変わらないのですが。
本部の言葉の真意はどこにあるのか。
勇次郎に敵わないとは、そして、安心していいとは。
実は勇次郎がここまで姿を見せなかったのは、武蔵と戦うことに不安を覚えていたのか?
だから、本部に武蔵のことを聞こうと思っていたのか?
本心を見切られて思わず涙したのかもしれない。
そういえば、勇次郎の聞きたいことは煙に巻かれてなかったことになっている。
うーむ、本部に武蔵の何を聞きたかったのか……
というか、そもそもが何で本部に目を付けたのか……
今の世界は武蔵以上に本部を中心に動いている。
故に本部が世界を守護る!
……いや、本当に守護って欲しいんですけどねぇ。
刃牙道 7 (少年チャンピオンコミックス)