克巳と烈の合体という最強コンビである。
これは力士に勝てる!
……力士が相手なんだよなぁ。
手術が無事終わり退院した克巳は道場に立っていた。
鍛錬……というよりも試運転と言ったところか。
新しい右腕で克巳はゆっくりと拳を握る。
その拳の真ん中には武蔵に斬られた傷がちゃんと残っていた。 なかったことになったのかと思ったけど、ただ単に描かれていなかっただけのようだ。
……タフじゃないし忘れていたとかはないよね?
「これは………ッッ」
克巳は拳を握ると冷や汗を流す。
その脳裏に巡るのは梅沢の言葉である。
同じ人間とはいえ他人の身体。違和感にてこずらされるというものだった。
そもそも、動いているというか繋がったのが奇跡だ。 その奇跡を成し遂げたことに梅沢の技量と紅葉が一目を理由を置く理由がわかる。
「手首まで割れた傷も治療しておいた」
お前かい! そこを治療したのはお前かい!
腕を繋ぐだけでなく再起不能レベルまで割れた手も治した。
梅沢の技量の凄まじさはとんでもない。
というか、そこはノータッチだったみっちゃんだった。
烈の腕をただ切り取って放っておいたらしい。
何て野郎だ……
「あるハズの―――――――あると聞いていた違和感が――――――」
「ない………………今のところは……」
そんな神業の持ち主の梅沢でさえ違和感があると読んでいたのだが……克巳にはそれがなかった。
冷や汗を流すほどの僥倖であった。
とりあえず、今回は試運転。右正拳突きを中空に放つ。
何の問題もなく綺麗に正拳突きが決まる。
克巳の試運転は続く。
瓦割り! 瓶割り! サンドバッグ打ち! 加減しろ、莫迦!
てっきり負担をかけないように慣らし運転のような気持ちで素振りで済ますのかと思っていたら、全力でアクセルを踏み込みやがった。
君、病み上がりなんだから無理しない方がいいぞ。
だが、瓦は砕け瓶は斬れサンドバッグに無数の打撃を打ち込んでも違和感なし。 この核心があったからこそ克巳はいきなりフルアクセルで走り出したのかも。
サンドバッグに打ち込んだのはピクルとの戦いで用いたオール急所五連撃のような型だ。
速さのみならず的確に狙い撃つ精妙さが必要なのだが、その打撃を完璧にこなしてみせた。 それは烈の腕が克巳に完全に馴染んでいる証左であった。
失った右腕に負い目を覚えるほどの一体感である。
自分以上に完璧な腕が烈の腕だった。
そんな克巳の肩に今は亡き朋友が手を当てる。
克巳は思わず振り返るのだが……そこには誰もいなかった。
幻影であった。
だが、完全復活した克巳の今を烈が喜ばないはずがない。
こうして初めて烈の死が回収されたのだった。 随分、長かったですね。
その死はただ忘れられるだけでなく、それを受け継ぐ人間が出てきたのがせめてもの救いか。
でも、クソジジイは反省しろ。殺したことに加えて腕を斬ったことを反省しろ。
さて、寄るの繁華街を花山と千春は歩く。
千春が大物ぶっているのがちょっと笑えますね。
お前は微妙キャラということを忘れるなよ。
そんな千春の耳にも大相撲と戦うことは情報は入っていた。
それを花山は気まぐれと答える。
気まぐれとは言うものの……相撲には何らかの想いがあってもおかしくはない、……のかも。
なお、相変わらず花山の左目には色がない。
失明したのか、気になるところである。
失明しているとしたら烈の左目を埋めてみるか? でも、克巳は烈との繋がりが濃いし、だからこそ納得もあったけど、花山と烈は関係が薄い。
いや、刃牙VSピクルの時に一緒に観戦している! イケる! こうして烈の身体をお裾分けするプロジェクトが始動したら……みっちゃんはいよいよもって討たれねばなるまい。
次回へ続く。