バキ道感想 第94話「何者なのか…!!?」



横綱零鵬の過去が語られた。
ここから相撲部屋に入り、土俵入りし、横綱となる。
そんな過去は語られない。 語られないのかよ!?
スカウトされて終わりかよ!?

さて、横綱は置いておいて宿禰だ。
控え室で宿禰が立っていた。
宿禰が出てきた!?
最後に喋ったのは渋川先生の試合前、出てきただけなら独歩の試合後だ。
沈黙どころか消失の域にまで達した宿禰が蘇った!
何か出てきただけで笑いを取れるなんて稀有な素材ですね。
主要キャラとして大事な何かを失いましたが。

「わたしをあの―――」
「”宿禰の杜”から」
「光まばゆい」
闘技場ここへと導いてくれた」


久し振りの宿禰は金竜山に感謝した。
金竜山は田舎者である自身を都会のど真ん中に引っ張り出した。
ある意味では功労者と言えよう。

でも、光まばゆいと言ってもアンダーグラウンドでアンオフィシャルな地下闘技場だ。 その台詞は素直に大相撲にデビューさせてもらった時に言うべきなのでは。
というか、素直に大相撲デビューさせた方が話が早そうだ。
宿禰が身に付けた古代相撲からは道が逸れてしまうが、表と裏でやっていることが違う格闘家はごまんといるし、ちょっと我慢してもらいましょう。

力士になる条件は義務教育を修了している、一定の身長と体重をクリア、23歳以下である。
宿禰は全て満たしているだろう。
……いや、もしかして義務教育を修了していないのか?
こんな荒っぽいことをしないと大相撲と関われなかったのが正解なのか?

「「相撲」本来の姿への原点回帰」
「権威の復元」
「その悲願に絶望していた」


金竜山は度々口にする相撲の権威を取り戻すことについて触れる。
こちらとしてはその権威を失っていることがけっこう疑問なんですけどね。
大相撲力士たちは不利な条件での勝負を迷わず受ける強さへの自負心、地下闘技場戦士を苦戦させるだけの実力を持っている。
バキシリーズを読み続けてきた一読者としては、その強さに納得がいかないのが本音なのですが、まぁ、強いのなら仕方がない。

また、大相撲の代表の横綱は立派な日本人だ。
角界で賛否を分けている外人力士ではない。
大相撲はしっかりと強さを示している。 そこまで絶望視せんでも。

むしろ、権威を失ったとすれば猪狩に負けた某元横綱に原因があるのではないでしょうか。
その元横綱が猪狩を倒して刃牙との試合までこぎ着けていれば、間違いなく権威は失われなかった。
バキシリーズの強さの矛盾、本部パラドックスが起こることもなかっただろう。
お前だ! お前が悪いんだよ、金竜山!
なお、権威とは別にして本来の姿への原点回帰が挙げられている。
何でもありルールの古代相撲に回帰すべきというのが金竜山の望みなのか?
でも、ノールールによるあまりにも凄惨な試合は観客を遠ざけ、興行に大事な収益を衰えさせてしまう。
選手も何でもありのルールで戦えば重大な怪我をする可能性が高くなるし、試合を成立させるのに必要な選手が減ってしまい先細りの一方だ。
格闘技にルールが設けられているのは選手と観客の双方を確保するためだ。 そんな戦いを表ですれば相撲の権威がより失われてしまう。
地下闘技場でこっそりやる程度がちょうどいいのだ。

やっぱり、金竜山は相撲協会での自分の権威を取り戻すために宿禰や地下闘技場戦士を使っているのではないだろうか。
そう考えればいろいろな部分に納得が行くわけですよ。
引退後の金竜山は老獪なキャラとして描かれているし、そうした企てを抱いていても自然だ。

そんな金竜山はある日、おとぎ話を聞いたと語る。
それが野見宿禰が現在も存在する、世襲制で270代以上続いているという噂だった。
そして、宿禰を名乗ることを許されたのは二人だけで初代と現代の二代目だけ。

あまりにも突飛な話だが金竜山は信じて、宿禰の元へと出向いたらしい。
何という行動力か。
そこで宿禰と出逢ったことで悲願が悲願ではなくなったようだ。
いろいろとその思惑が怪しまれる金竜山だが、相撲に対する情熱は本物らしい。
それならそれで本当に普通に大相撲デビューさせてあげればいいのに。 力士の条件を満たしているし、ダメならダメでねじ込めるくらいの権力はあるだろう。
やっぱ古代相撲じゃないとダメなのか? スマホよりガラケーの方がいいのか?

「知りたかったのです」
「宿禰とは何者なのか…!?」


宿禰の才能に惚れた金竜山が意志とは関係なく連れ出した……と思ったのだが、宿禰自身の意志で表の世界(裏)に来たようだ。
宿禰とは何者なのかを知りたかったからだった。
何言ってんだとなるが、宿禰一族は表の光を浴びることなく田舎でずっと鍛え伝統を守っていた。 自分たちは一体何のために鍛錬しているのか、稀代の才能を示したから宿禰の名を継いで何の意味があるのか。
宿禰が疑問に思うことはある意味当然だろう。
少なくとも宿禰の杜にいたままではその才能に意味らしい意味を持たせることをできなかった。
バキ世界では強きことは尊いことだし、強ければそれだけで目立つし賛美を集める。
が、宿禰はそうではなく強くても目立たない人生を歩んでいた。
ある意味、宿禰は異端とも言える人物だ。
ライバルキャラなのに全然出張っていないのも異端である。
もうちょっと解説とか驚愕とかして欲しいんですけど。

ともあれ、二人の力士が地下闘技場で見える。
片や最古の後継者、片や最新の最高傑作である。
零鵬さんは最新ということでジャックに習ってドーピングをするとかどうですかね?
ダメですかね?
ゲロ吐いて痩せ細ってパワーアップとかやればインパクトあるぞ。

零鵬は四股を踏む。
横綱だけありTHE相撲の儀礼は欠かさない。
その四股を見て宿禰は小さく笑う。
この人、横綱に対して四股が足りないと言っていた。
その言葉を裏付けるように想像上の横綱には楽勝している。想像上の。

そう言うだけあり宿禰は四股に対して醜足で返礼する。
大きく脚を掲げる宿禰流の四股である。
古代と現代の違いを見せつけた。

宿禰はかつてのリアルシャドーと言葉通りに零鵬を圧倒するのか。
あるいは零鵬が近代相撲の最高傑作として反旗を翻すのか。
とりあえず、オリバのことは忘れた方が良さそう。 アレは、まぁ、なんだ。
宿禰がオリバイベントの特攻キャラだったということで一つ。

ともあれ、次回には何とか試合が始まりそうである。
だが、次回は休載! しかも合併号!
宿禰と零鵬の戦いは3週間後に始まるかもしれないぞ!
……久し振りに主役になれたと思ったらオチを付けていくのが宿禰流らしい。
次回へ続く。