バキ道感想 第141話「「マスキュラー」ポーズ」



オリバが何故か宿禰を圧倒している!
オリバが強くて何が悪いって勢いだ。
いや、悪くはないんだが前回の惨敗が脳裏を領空侵犯しまして……


前回の引きのまま、握力勝負でオリバが宿禰を押している!
ダイヤモンドを作れる宿禰を押している!
握力比べのシチュエーションが多々あるように握力というパラメーターはバキ世界では重要視される。
その握力で負けるとそのまま敗北に繋がりかねない。
孫海王なんて握力だけで負けてしまった。

「小指ダ」
「失ッタ小指ガソノママハンデニナッタ」


このオリバの圧倒の秘訣は小指!
って、わかった上で仕掛けたのか!?
筋力任せに見えて頭脳プレイというか、相手の弱味を突く嫌らしい手だ。
加えて宿禰が小指を失った情報をちゃんと仕入れていることもわかる。
前回は惨敗したからこそ今のオリバには油断がない。
けっこうな勝算を持って挑んでいるんですね。

宿禰も迂闊に応じず突っ込めば良かったのに。
普段の不遜な態度がそのまま落とし穴になってしまったのかも。
突っ込んだら突っ込んだでオリバに煽られていたか?

不利を悟ったのか、宿禰は右の張り手で手四つを崩す。
宿禰の膂力を持って放たれる利き手の張り手……破壊力がとんでもないはずだが、オリバにダメージらしいダメージはない。鼻血さえない。
不利な状態から打った張り手なので威力を込められなかったのか。
殴られて一発で吹っ飛んで出血した宿禰とは真逆だ。
だからか、オリバにも余裕があるのだった。

「アンタハ決シテ弱カネェ」
「小指ガ欠ケテチャ」
「ダイヤモンドハ製造つくレネェ」


オリバが痛いところを突いた!
宿禰のダイヤモンドを作れる握力は他に類を見ないアイデンティティだった。
宿禰にとって誇りであり自信であるに違いない。
その握力を失ったと指摘するのはキツい。
宿禰自身、何となく目を逸らしていた事実かもしれない。

でも、ダイヤモンドを作れるのなら小指を失っても人外の握力は維持できているんじゃないか?
ヤクザが小指を切り落とすのはドスを握る握力を失わせるため……とは言うけれど、ダイヤモンドを作れる握力は桁違いだし、小指一本のハンデくらいどうとでもできそうだが。
小指は力士の命だから握力の9割くらい担っているのか?
いや、1割くらいになっても人外レベルの握力なのですが。

ともあれ、宿禰にとって触れて欲しくない現実だったようだ。
いきり立って突っかかるがそこにカウンターの右ストレートを合わされる。
完全にペースを握られている。
フィジカルだけでなく心理戦でも圧倒しているのだった。
犯罪者相手に死闘を繰り広げてきた百戦錬磨のオリバらしい。ただの筋肉だけの男ではないのだ。
……いや、ホント、なんで前回惨敗したの?



「な」
「なに…?」「これ…」


宿禰は大きくのけぞりつつも今回は耐えきる。
そこから反撃と思いきや呆然とする。
オリバが取った次の手は懐かしの筋肉を固めて球体になる技?、筋肉ボール!!
バキシリーズに出てきた数々の必殺技の中でも特に見た目のインパクトが強い筋肉ボールだが、そのインパクトは宿禰が呆気に取られるほどであり健在だ!

バキシリーズにおいて必殺技が再利用されることはほとんどない。
主人公の刃牙でさえこれという必殺技がない。
トリケラトプス拳とゴキブリダッシュくらいだ。……どうなんだ、そのセレクションは。
そんな中で剛体術という懐かしの技を破った筋肉ボールが懐かしの技として再登場!
もう16年前だよ、筋肉ボール……

「来ナサイ」
「降参カイ?」


逆三角形どころか、文字通りの肉球となったオリバは宿禰を誘う。
ここまでオリバが仕掛けてアドバンテージを得ていたが、ここで主導権を宿禰に渡したのだった。
もっとも宿禰が自分から仕掛けざるを得ない状況を作ったわけで、本当の意味での主導権はオリバにあるか。
いずれにせよ宿禰が呑まれていることだけはたしかである。

このやり取りは烈VS寂海王の時と似ている。
丸まって固まった上で挑発、烈の迂闊な攻めを誘ってカウンターを喰らわせている。
こうした寂海王の駆け引きをオリバはファンタスティックと評価していた。
この一手は寂に習ったのかも。

「世界は広い」
「こんな男もいる」


ここで初めて宿禰がオリバに対して心から感嘆する。
痩躯と侮り圧倒した過去のオリバとは別人とやっと認めたらしい。
何か筋肉ボールに驚いた直後に減らず口を叩いた刃牙よりも素直ですね。

「とんでもない――ミスターミートボール」
「あなたのその筋量こそが」
「嬉しい」


宿禰は笑う。
そして、歓喜と共に飛び上がって両脚で踏み付ける!
何か古代相撲にさえなさそうな大振りな飛び技だ。
重力と体重と筋力を総動員した宿禰にとって最大級の打撃であることは間違いない。
そして、宿禰にとっては相手の今後を考慮しない全力の一撃を放った初めての経験かもしれない。
全力を惜しまずに出せる歓喜が込められていそうだ。

「まるで――――――巨大なスプリングを踏みつけたような……」
「あの――――球体まるい物体のどこにそんな弾力が…??」


そんな宿禰の全身全霊を込めた一撃だがオリバはあっさりと跳ね返す。
宿禰は冷や汗と共に驚愕せざるをえない。
剛体術だって無力化できるほどに防御力が高いのがこの形態の特徴だが宿禰の一撃をモノともしないとは桁が外れている。
筋肉ボールを選択したことでオリバは宿禰の自信を完全に打ち砕いたのだった。

「ビスケット・オリバ 一体……どんな力士だ……ッッ!!?」

宿禰はオリバの筋肉を改めて恐れ、宿禰の基準においても力士と認める。
これで実はさっきの一撃でオリバが死んでいたら笑うんですけどね。
繰り返すけど前回の惨敗っぷりからはそうなっていてもおかしくない。
今圧倒しているのはホント何ででしょうね。
持ち味をイカしたか?

オリバの筋力は宿禰を圧倒している。
相撲の技術を使わせなければ、ということだろうか。
相撲をさせないのがオリバの基本戦略かもしれない。
……いや、根本的なステータスの差がデカい気はするけど。

ともあれ、お互いの全力をぶつけ合う展開は熱くて嬉しい。
前回はオリバが完全な噛ませ犬になっていて消化不良にもほどがあった。
次回も楽しみである。
だが、次号休載! 再開は3/2発売号から!!
い、板垣先生~~~~~~~ッッッ!!!?