刃牙らへん感想 第11話「久方ぶりの闘技場」



ジャックVS昂昇の試合が秒読みだ。
昂昇のセコンドは(何故か)花田だ。
ジャックのセコンドは……いなそうですね。
今までに一人もいない。ぼっちちゃんである。
……交友関係がないんだよなぁ、ジャック。

昂昇と花田は並んで通路を歩く。
本当に花田がセコンドを務める気だ。
直前で俺が守護るみたいなことを言う気はないらしい。

「あのジャック範馬」
「噛みつきに特化しただけの――単純なファイターじゃない」


花田は語る。知ったように語る。
ジャックと一度も相まみえたことのないのに語る。
こういうところが本部流を感じさせますな。
本部も知ったかぶりなら超一流だったし。

ともあれ、花田の評価は的確でもある。
かつてのジャックは噛み付きの攻撃力に頼るばかりで無理に噛み付こうとする悪癖があった。
が、宿禰との戦いでは戦略的に噛み付きを用いるようになっている。
スピードでかきまわせばイケるみたいな考えはないようで安心した。
何で本部は免許皆伝を圧倒した相手にスピードでイケると思ったんだ?

「後楽園地下闘技場」「ここに単純なファイターなどいない」
「自然界に噛みつくだけの猛獣など存在しないように」


昂昇は地下闘技場に単純なファイターはいない、つまりは猛者揃いだと語る。
でも、ロブ・ロビンソンとか李猛虎とかマイク・クインあたりはけっこう単純なファイターだった気もする。
まぁ、あの辺りの格闘家は地下闘技場戦士というよりも外部の実力者を招聘した感じだし単純でもおかしくはないが。
……花田が一蹴した地下闘技場戦士たちもけっこう単純な気はするな。
中国拳法の張君なんてその辺の海王よりも弱そうだったし。

それにしても仲良いな、君たち。
古くからの戦友感があるが戦うどころか話したのもつい先日が初めてだ。
ここまで馴染んでいるのは違和感しかないがやり取りだけみればけっこう格好いいのが困る。
花田の今後は試合中の驚愕や解説に懸かっているだけに期待したいところだ。

ともあれ、昂昇が入場する。
ナレーターには久々なんて言われている。
最後に地下闘技場で試合したのが渋川先生戦、1997年に掲載されているからおおよそ27年前である。
余談ながら私が初めて読んだバキはその試合だったんですよね。
ううむ、27年か……

「おおおッッ」「なんという柔軟性ッ」「なんというバランスッ」「なんという足腰だッッ」

昂昇はウォームアップとばかりに右脚を大きく上げる。
見事なI字開脚でありナレーターは絶賛だ。
高い柔軟性ではあるけど烈や龍書文は同じレベルの柔軟性が要求されるであろう垂直蹴りを得意としている。
決してこの柔軟性は昂昇だけのオリジナルではない。
一方で技術の宝庫、中国拳法の使い手の中でも有数の実力者でなければこのレベルの柔軟性に達していないとも捉えられる。
この柔軟性を活かした技に期待したいところだけどちゃんと考えているか?

そして、ジャックも入場し二人は相まみえるのだった。
昂昇が177cm84kgに対しジャックは243cm211kgである。
ジャックは宿禰戦の時と比べると身長は変化がないが、体重は当時201kgだったので10kgも増量している。
みっちゃんの世話になってから食生活は相当に贅沢になっただろうし、それが増量に繋がっているのか?

バキ世界ではデカければデカいほどパワーは下がる傾向にある。
巨漢は噛ませ犬の法則である。
が、デカくて強いピクルが登場してからは巨漢なれど強者のファイターが増えておりその法則は崩れつつある。
覆せるのは範馬刃牙くらいだ。範馬刃牙はその辺強いというかズルい。
そんなわけで70cm近くの身長差、100kg以上の体重差はそのままハンデとなるのは間違いない。

ジャックは腰を落として昂昇と目を合わせる。
大人が子供に対して視線を合わせる所作であり、二人の体格差は大人と子供レベルであることを証明している。
ジャックは明らかに見下しており挑発的だが、昂昇は微笑みで返している。
試合開始前はメンタルが乱れがちな昂昇らしからぬ平常心だ。頼れるセコンドのおかげか?



こうしてついに試合開始だ。
昂昇は試合開始と同時に飛びかかり斬撃拳のラッシュを放つ。
いきなり大胆な行動にジャックは思わずガードする。
ほとんどノーガードのジャックがガードを選んだ!

この初手によりジャックはいきなり出血する。
現在の昂昇の斬撃拳はナイフ並みの切れ味に至っているのだった。
ジャックらしからぬガードであったが、もしガードしていなければ急所まで斬られていた可能性がある。
ジャックは九死に一生を得た形か?

初手から出血で幕を開けることとなった。
昂昇としてはダメージ以上にジャックに斬撃拳が通じるという確証を得られたのが大きいだろう。
この人、最大トーナメントの時はまったくダメージを受けていなかった。
刃牙に口を開けたところを殴られてダウンを奪われたけど、そんな理屈でダメージを受けるのが不思議なくらいのタフネスを持っていた。
よほどのことがない限りは不死身な印象があるだけに出血を奪えたことは大きい。
昂昇は攻撃し続ける限り、出血というアドバンテージを得られ続けるのだ。

無造作に殴る蹴るだけで出血を奪えるのだから、紐切りをやればどうなるかは気になるところだ。
神経を切るどころか筋肉を引き裂く威力があってもおかしくはない。
睾丸を引きちぎる真・紐切りなんてやれば痛そうだ。
痛すぎてあまりやってほしくないな……

報われず恵まれない実力者が昂昇のイメージだったけど、今回の初手は手応えありだ。
いや、ドイル戦でも手応えありの出だしだったけど負けちゃったから初手からは何もわからないけど。
ジャックは宿禰の張り手にカウンターで小指を噛み切ったことがある。
フィジカルだけなら最強格の宿禰の小指を一瞬で噛み切るのだから、昂昇の指も同じように噛み切られるとちょっと困る。
噛み切られても紅葉にくっつけてもらえればいいのだけど。

昂昇は刃物並みの切れ味を誇り、ジャックは噛み付きで致命傷を与えてくる。
お互いに危険な武器を持っている。
既に出血しているし血生臭い展開になりそうだ。
でも、昂昇がけっこう強い部分を見せてくれて嬉しいぞ。
今までは割を食う展開が多かっただけに株を大きく上げてほしい心持ちである。
次回へ続く。
次号、休載!