……まぁ、刃牙にもビビったしな。
殺傷力は最大級の武装武蔵にビビるのは仕方あるまい。
それにしてもいいところがない最終形態ですな。
最終形態になって正面衝突すれば誰も勝てないからだろうか。
凄まじい強さを持つと同時にその全てをぶつけ切れていないピクルであった。
「斬るのが好きでたまらぬ」
「斬る機会を得ると――」
「つい余計に斬っちまう」
「悪い癖だ」
武蔵は斬ることについて語る。
斬ることが大好きって随分とサイコですな。
名誉大好き賞賛大好きならば普通だが、斬るのが大好きとなると並みではない。
名誉と賞賛が大好きだからこそ、それに繋がる斬ることが大好きになったのだろうか。
それとも逆なのか。
いずれにせよそんな念でピクルをたくさん斬ったらしい。
口ぶりからすると殺そうと思えばすぐにでも殺せた感もする。
たしかに首を狙えばその時点で勝負ありだ。
武蔵はなかなか恐ろしい性根の持ち主であった。
この発言に刃牙もみっちゃんも引く。
さらに加藤と末堂と佐部も引く。
あ、そこで顔を出すんだ、加藤と末堂。
何というかさすがだ。
本部がいないのは寂しいがこの2人は必死に責務を果たしている。
斬殺症候群を患った武蔵の一方で本部は守護症候群を患っている。
斬り殺したい男と守護りたい男が激突するのは必然!
……なのか?
いや、激突するなら今すぐにでもしていただきたい。
ピクル、死ぬぞ?
「何処まで斬らせてくれるのか!!!」
武蔵はかつての時代では一刀で倒れた相手をもう1度斬りたいと願っていた。
そりゃ無茶なことを……
だが、ピクルは幾度も斬撃を受けれど死なず立ったままである。
そんなピクルを前に武蔵の斬殺欲求は高みに登るばかりである。
ピクルはとばっちりにもほどがあるな。
しかし、それなら何故無刀に目覚めたのだろうか。
無刀なら何度でも斬れるからか? あるいは老体になって斬殺欲求が収まったからだろうか。
武蔵は精神的には老体を経ているのだが、肉体が若くなったことで精神も若くなったのかも。
ジジイのクソジジイ(罵倒)にやたらと失礼だし。
いや、自分もジジイだからクソジジイ(訂正なし)に失礼なのか?
「ワルくて…………」
「速くて……」
「痛くって……」
その時、ピクルはかつてのライバルを思い起こす。
恐竜たちはもちろん、武蔵は現代の戦士たちとも異なる。
って、武蔵は悪いのか。
……まぁ、現状は死刑囚と並びかねないヒールではあるが。
烈を斬り殺したのは合意の上の結果だから恨みはないが、素手のピクルを相手に刀を持って斬りまくるのは……普通に引く。
ピクル自身は食い殺す気でいるとはいえ、刀を所持しているのはマイナスイメージですよ。
現代の戦士たちは相手が野性であろうと正々堂々と素手で戦ったわけだし……
「痛……」
「あッ」
この時、ピクルは痛いというキーワードから閃く。
そして、ついにピクルが雄叫び以外の言葉をあげた。
普通に驚くんですな、こやつ。
ピクルの秘密はまだまだある。
そりゃ驚きだってしますよ。
「こ………ッッッ」「こいつかァ~~~!!?」
その時、ピクルが思いついたもの!
等身大のサイズのハチ! さらに両手に毒針装備! 加えて蝶の羽!
かつてピクルが手こずったハチと蝶の合成生物が武蔵なのだ!
……なのか?
武蔵は刀で毒のような致命傷を与えてくる。
さらに蝶のすり抜け能力を持ってくる。
形容としては最適、なのかも。
ピクルにしてみれば恐竜とも現代の戦士とも違う妖怪が目の前にいたのだった。
この事実?に行き着くとピクルからティラノサウルスの噛み傷が消える。
それはつまり、最終形態が解けたことである。
伴って筋肉の緊張も解けて、再び出血を始める。
ピクル、再び出血死の危機である。
そして、ピクルは……武蔵から背中を向けた。
「もう……食べたくない」
ピクル、まさかの食事拒否!
戦っても痛いだけ、食べてもハチのように毒が出るかもしれない。
そうなると食事が目的のピクルとすれば無理に戦う必要も食べる必要もない。 自分に挑んでくる敵は食えど、過度の危険に付き合う必要はなく、ならば逃げるのも道理!
……野性だからこそ許される試合放棄であった。
「…おい」
戦意喪失したピクルに武蔵は普通に突っ込むことしかできない。
武蔵としてもやる気のない相手を斬るのならまだしも、やる気のない相手を斬るのは躊躇われよう。
それとも隙ありとばかりに斬るのか?
だとしたらこここそが本部が守護りチャンスである。
次回へ続く。
ピクル、ついに試合放棄!
いや、責めまい……
やっぱり、日本刀を相手にするのは無理ですよ。
ピクルなら何とかなるかと思ったが、耐えることはできてもそれ以上はできないのが結果だった。
だが、せめて折って欲しかった……
ピクルが乱雑に扱っても金重が折れなかったことから、折るのは相当に骨のようだが。
フィジカル最強のピクルでさえ、刀で武装した武蔵には敵わなかった。
相性が悪かったとはいえ何とも悲しい結果である。
ピクルパンチも効いていないし、ピクルはいいところほとんどなしでやられ損ですな。
うーむ、金重を受け止めた時にはかなりドキドキしたのだが……
これ以上、ピクルに期待するのは厳しいだろう。
情けないという感情より可哀想という感情が強いのは救いかもしれない。
武蔵が素手ならいい勝負になったと思うのだが……
だが、これで本部の出番が来た。
本部よ! 守護れ! 克巳はピクルを避難れ!
いや、ここで本部が動かなければ嘘だろう。
逆にここで動けば惚れる。
何というか、不良が人助けをするような感じで……
そして、刃牙はどうするのだろうか。
助けることはあまり期待していないが、ピクルでさえ敵わなかった武蔵にどう戦う気なのか。
主人公だからラスボスを倒さねばならぬ。
これが主人公の、刃牙の宿命なのだ。
でも、刃牙ってラスボスに勝ったことがあまりない。
初期の地下闘技場編はラスボスがいない感じなので除外するとして、幼年編はラスボスに勝つどころか負けている。
最大トーナメント編では勝って有終の美を迎えたが、続く死刑囚編ではいつの間にか死刑囚が全滅し激やせしていた。
擂台賽編ではそもそもラスボスと絡まなかった。
Jr.編は……あれを勝ったと言っていいのか。
オリバ刑務所編は無事に勝ったが、ピクル編では微妙な感じに終わった。
そして、親子喧嘩編でも白黒がハッキリしない感じ、刃牙曰く負けで終わっている。
つまり、刃牙はラスボスにほとんど勝っていないと言える。
なので、武蔵に無理に勝つ必要ないんじゃなイカ?
日本刀持っている相手に勝てるわけないじゃんと一時期のやる気ない感じに言っても許される。
いや、主人公としてどうかと思うが。
ともあれ、本部の動向次第というか、もう本部しか弾がないですな。
とはいえ、刃牙の頑張りにもちょっとは期待というか、すがりたい気持ちはあるのだが。
何せ攻略不可能と思われたピクルを何となく攻略したのだ。
だから、武蔵も何となく攻略するかも……
いや、何となく攻略されると読者としては腑に落ちないのだが。
ともあれ、刃牙も頑張れ。何となくでも頑張れ。
でも、リアルシャドーで今回のハチバタフライと戦うのは勘弁してもらいたい。
……戦いそうだなぁ、体重100kgのハチバタフライ。