刃牙道感想 第84話「感性(センス)」



武蔵が勇次郎を釣り上げた!
100kgを越える勇次郎を釣り上げるだけの力を持つ武蔵が凄いのか。
あるいは片腕で体重の全てを支えている勇次郎が凄いのか。
はたまた勇次郎の体重に耐えきる國虎の強度が凄いのか。
どれがどれだ!


勇次郎を釣り上げた武蔵はそのまま投げつける。
これは烈にトドメを刺す際に使った技術と同系統のものだろうか。
単に刀で斬るのが長けているだけでなく、刀を用いた技術に長けるのが武蔵だ。 なので、刀で投げるという曲芸紛いのこともできるのであった。
……何でこんな技術を身に付けたんだろう。
曲芸のひとつやふたつあった方が人気を得られるからか?

これには勇次郎の態勢も崩れる。
宙に浮かべば勇次郎とて如何ともし難いらしい。
もっとも、普通なら腕が上がるだけで済むのに、力みすぎて自重を支えてしまったのが原因の気もするが。
範馬勇次郎、力み主義を貫いてしまったが故にピンチになってしまった。

武蔵は峰で振り下ろしている。
これが刃だったら遠心力が働いて勇次郎の手もすっぱり斬れたかもしれない。
でも、武蔵の一閃に耐える握力を持っていたから平気かもしれない。
何にせよこのダイナミックな技?を受けて、勇次郎とて手を離さざるをえなかった。
さすがの武蔵も勇次郎に刀を押さえられたままでは分が悪いと見たか。

「もうかい!!?」

武蔵、二刀流解禁!
大小を構えて当方に斬殺の用意あり。
烈でさえ引き出せなかった代名詞の二刀流を解放した。
遊び玉一切なしの間違いなしの本気である。
勇次郎だからこそ引き出せた本気であろう。
本部は多分無理。守護れん。

「出し惜しみを拒む」「その感性センス
「嬉しいぞ」


「こんな漢もいる」
「出し惜しむ事態ときじゃない」


何かもう漫画の展開的にも出し惜しまないことになっている。
そんな状況に勇次郎は笑う。
武蔵も勇次郎の強さを前には出し惜しめないと感じていた。
下手に出し惜しめば刀を折るのが勇次郎だ。 躊躇なく二刀流を解放したのは正解だろう。

出し惜しまないのは勇次郎も同様だ。
勇次郎も二刀流を前に鬼の貌を解放する。
今回の鬼の貌はややおとなしめで上着を破っていない。
上着を破るのが鬼の貌の定例行事なのだが。
目の前に超危険人物がいるから無闇に力まず必要最低限の力みで臨戦態勢に入ったのだろうか。
普段、出し惜しむ勇次郎がいきなり鬼の貌を出そうとする辺りに武蔵の脅威がどれほどのものかがわかる。

互いに最大の武器を引き出した。
まさに最強と最強の激突に相応しい。
戦闘開始数週間の光景とは思えないくらいだ。 板垣先生、まったく出し惜しみなし。
そして、この核爆弾の落下点のような惨状を本部はどうやって守護るのか。
……無理だ。無理すぎる。
アンタは一応鬼の貌を解放させたが無理だ。

なお、この最強の激突を前に徳川光成は僥倖しあわせを感じていた。
おい、ジジイ、少しは反省していろ。
勇次郎が殺されかねない状況なのに強い者同士の戦いを見られる方がずっと嬉しいらしい。
烈の犠牲は一体何だったのか。
いや、このために武蔵を蘇らせたようなものだし、幸せを感じるのはおかしくはないのだが。
何にせよ戦争発起人のみっちゃんも満足だ。
本部はみっちゃんを暗殺することが一番の守護に繋がるのでは?
「受け止めきれん!!!」

金貨の山を前に武蔵は先に仕掛ける。
まずは身体全体が溶けるように脱力だ。
これはゴキブリダッシュか!?
消力初出時にその説明に武蔵が引用されていたように、武蔵には脱力の要素が存在する。
ゴキブリダッシュも脱力によるものだし、これも同系統の技術なのだろうか。

これで勇次郎の上着が破けなかった理由も判明だ。
武蔵は鬼の貌を出そうとした瞬間に襲いかかったのだ。
力んでいる途中だから服も破けないのだ。
「受け止めきれん」とは鬼の貌の脅威を感じたために奇襲を仕掛けたということかもしれない。
もっとも、この辺の解釈はいろいろと分かれそうですが。
だが、武蔵の卑怯っぷりを考えるに自分は武器を構えるが相手は武器を構えることを許さないことくらいはしでかしそうだ。
そのうち、煙幕を投げつけて後ろから短刀で襲いかかるかもしれん。

脱力から武蔵は地面すれすれから勇次郎に水平に斬りかかる。
力もうとした矢先を狙われた上に変化球である。
これは姿勢的にも心情的にも対応しにくい。
駆け引きに長ける武蔵らしい奇襲であった。
武蔵はまずは左の脇差しで斬りかかる。
が、勇次郎は足で出掛かりを押さえる。 かなり対応しにくい姿勢からの斬撃かつ鬼の貌をキャンセルされたというのに勇次郎は見事に対応した。
0.5秒の先読みを使えるのは勇次郎も同様だ。
故に先の先を読み合う古の剣豪レベルの駆け引きにも対応できるのだ!

武蔵の一閃は封じられた。
だが、そこで右の太刀を垂直に振り下ろす。
一刀を封じられたもう一刀。
これぞ二刀流の真骨頂である。
その狙いは壱の太刀を封じた脚狙いか。

さて、勇次郎は刀を相手にどう対処するのか。
勇次郎はその圧倒的なタフネスも武器である。
そのタフネスの高さは刃牙を相手に一切のダメージを見せなかったほどだ。
さらに鬼の筋力もある。
刀なんて斬られても大丈夫。そう考えていた時期が俺にもありました。

で、実際に斬りかかられた。
勇次郎、全身で全力でかわす!
致命傷は避けたものの僅かに太腿が斬れ血が出る。
勇次郎も刀に斬られたら斬れるのだ!
当たり前の事実でありながら驚愕の事実だ。
そっかぁ……勇次郎って斬れるんだ……
いや、本部が斬っても斬れなさそうだから、刀を使えば斬れるというより武蔵だから斬れると見るべきか。
刀を使えば斬れるなら柳だってドイルを斬首できてましたよ。

ともあれ、勇次郎、斬られて出血す。
かつてない危機である。
だが、笑う。鬼の笑みだ。
そんな勇次郎に構わず武蔵は第三の斬撃を放つ。 左右左と怒濤の連撃である。
まさに二刀流ならではの三段斬りだ。

これを勇次郎は跳躍で回避だ。
勇次郎は武蔵の攻撃を見切っている。
見切ってはいるが回避に専念せざるをえない。
近代兵器を上回る武士の脅威である。

[身を躱したのはいつ以来か………]

かわされたとはいえ怒濤の連撃であった。
これを前に勇次郎、冷や汗!
表情もやべえ殺されるんじゃないかといった風情だ。
さすがの勇次郎も二刀流には焦るのか?
勇次郎とて斬られれば死ぬことがわかった。
このままでは鬼の貌があったとしても、いや鬼の貌があっても関係なくヤバそうだ。

勇次郎は斬られるのか、あるいは日本刀をブチ折るのか。
武蔵は二刀流が全力なのか、あるいは素手という刀さえ不要な領域があるのか。
本当に本部は守護ってくれるのか、今もガクガクブルブルしているのか。
いつの間にやら土壇場である。
次回へ続く。


勇次郎大ピンチ!
かつてここまで勇次郎が生命の危機に晒されたことがあろうか。
勇次郎が相手の攻撃に脅威を感じたのは郭海皇の消力パンチ以来である。
消力パンチもおかしな攻撃力だったがあくまで打撃なので耐えられるレベルだった。

だが、今回は防御無視の斬撃ですよ。
勇次郎とて斬られれば死ぬ。
それが今回判明してしまった。
斬ろうとしても斬られなさそうだったのだが……
鬼も人の子であった。
勇次郎が自分の意志関係なくかわさざるをえない状況となったのはこれが初めてである。

こうなると勇次郎も殺す気にならざるをえまい。
最初から鬼を出しているしそれが哭くのもすぐにか。
そうなればますます本部はどうしようもなくなる。
まだ勇一郎乱入の方が現実性がある。
本部にできることは勇次郎の盾となって斬られることくらいかな……

ん? それって自分の身を犠牲にして戦いの空しさを教えるヒロインポジションではないか?
ヒロインの涙と血で両者矛を収めるのはよくある展開である。
武蔵も人を斬ることの重さを知って素手で戦うようになるかも。
うむ、隙がない。
自らの命と引き替えに守護る辺りも守護者として完璧だ。
よし、本部! 命令する! 死ね!



刃牙道(8): 少年チャンピオン・コミックス