刃牙道感想 第198話「野見宿禰」



刃牙道最終回!
最終回直前に二代目宿禰という新キャラを投げつけられた。
宿禰が本部をジャガって新シリーズへと続くのか?

そう考えていた時期が俺にもありました。
最終回だが刃牙の出番も宿禰の出番もなし!
刃牙の出番がないのはいつものことだが、宿禰の出番もなしかよ!
刃牙道最終回にして道が外れた感ですな。
いや、道が外れたから最終回なのか?

「力士ってどんくらい強ぇえんだ?」

さて、今回は力士説明回である。
まずはいきなり確信に触れようとする。
達人は保護されていると叫んだアナウンサー並みである。

実績としてはとりあえず素手ならば本部よりも強い。 刃牙道において本部の株は上がりまくって人気はあまり上がらなかった。
むしろ、下がった気さえする。
あまり美人じゃないけど気立てが良くてクラスの人気者だった女の子が、大人になると凄い美人になったけど性格も悪くなった感じだ。
今の本部は強いけど愛せない人になってしまった。
ともあれ、武蔵に勝利した本部に勝利しているのが力士である。
ん? つまり、もしかして間接的な本部ageなのか、これは?

「惨憺たる結果だった」

ここで一つの例が示される。
彼のマケボノで有名な曙VSボブサップ(と思しき一戦)である。
そのマケボノのカットを再現している。
今回の話の価値はここにあると言っても過言ではない。
「彼らは力士じゃない」
力士だ」


だが、これで力士=格闘技全体で見れば弱いと決めつけられるわけではないようだ。
現役の力士ではなく引退した元力士だから仕方がない、ということらしい。
宿禰は明らかに個の力が異常なのだが、意外にも力士という方面から掘り下げようとしているようだ。
いや、力士は石炭をダイヤモンドにできんて。

なお、このマケボノだがある意味仕方のない敗北とも言える。
曙の力士引退の原因は膝の故障によるものである。
この時点でかなりもはや相撲以外の競技も絶望視される。
その後は親方になる、つまりは現役から完全に遠ざかり、その後に相撲協会を引退、K-1に参戦、マケボノを晒すこととなる。
しかし、相撲協会引退からK-1参戦まで2ヶ月ほどしかなく、たった2ヶ月で膝を故障した人間が勝てるようになるのはかなり無理がある。
その後の格闘技人生も負け続けだが、それはやはり膝の故障が大きいのだろう。
それでも出場し続けていたのはデカくて太いというわかりやすい身体的特徴からの噛ませ犬に期待してか。

なので、元力士だから~という理由には一応の正当性はある。
全盛期の曙が東郷格闘技の場で戦っていたらマケボノを晒すことはなかったのかもしれない。
……いや、どうだろう。どうなんだろう。

「相撲の勝負は短い……」
「ほぼほぼ10秒前後?」


ここで相撲の勝負の短さについて触れられる。
他の格闘技がフルラウンドでは10分を越えることも珍しくない中で、相撲は1分を越えることさえ珍しい。
破格の短さである。
そして、人間が全力を出せる時間は10~20秒が限界である。
力士の10秒には人間の全力が込められている。
なお、人間の能力としてはむしろ瞬発力よりも持久力の方が優れている。 例えばフルマラソンの距離、40kmほどを2~3時間を走破できる動物はほとんどいない。
人間の類い希なる能力と年月が積み重ねた進化があってこそできることなのだ。
力士は人間の進化と真逆を行っているとも捉えられる。
その点でピクルが驚異的な瞬発力を見せるのは人間ではない証拠なのかも。
それに普通について行った刃牙も人間じゃない?

総合格闘技のチャンピオンと力士が退治したとする。
真夜中の町にトランクス一丁とフンドシ一丁の姿が笑いを誘うが、そうなったとする。
ローキックは、カウンターは、タックルは力士を止められるのか?
多くの格闘技と相撲は試合時間からわかるようにルールが違いすぎる。
結果がどうなるのかはわからない。
相撲ルールで戦えば相撲が、統合格闘技ルールで戦えば統合格闘技が勝つというのが夢のない結果なのだろうが。

「謎多き「強者」力士を丸裸にする」
「「10秒」の密度に切り込みたい」


だが、バキシリーズは純粋な強さ比べである。
そこにルールのフィルターを通さないのだ。
力士は強いのか、真の強さはどうなのか、本部よりも強いのか。
前述したが二代目宿禰の強さは力士としての強さではなく個としての強さな気がするが、力士の強さに踏み込むのがバキシリーズ第5部となるのだ!
刃牙道完!!
終わっちゃったよ!?
そんなわけで第5部はそのうち始まるようなのでそれまでしばしのお別れとなります。


力士は強いのか!?
バキ世界はまだ力士にファンタジーを求められるようだ。
国技ながらあまり掘り下げられていませんからな。
もっとも、幾度か繰り返しましたが力士のインパクトより宿禰のインパクトの方が強いのですがね……

バキシリーズにおける力士の立ち位置は……その評価は本部に勝ったに尽きる。
逆に言えば本部の評価は力士に負けたに尽きる。
出番の少なさもあって力士の評価は安定していない。
まぁ、出番の多さのわりに評価が安定していないボクシングもありますが。
評価の安定化は定着するレギュラーがいるかどうかが大事ですな。

バキシリーズに出てきた力士(元を含む)は4人いる。
1人目はグラップラー刃牙時代に出てきた現役横綱の龍金剛である。
記念すべき本編初の地下闘技場の試合を務めている。
結果としてはプロレスラーの久隅公平に勝利している。
久隅のラリアットに耐えるタフネスと金的を行うダーティさを見せて、おそらく10秒以内に決着を付けた。
なかなか上々な活躍と言える。

だが、龍金剛の出番はこれでお終いである。
一方で敗者の久隅は最大トーナメントで猪狩のセコンドとして登場していた。
この微妙な扱いの悪さが力士の扱いの悪さなのかも。
2人目は彼の有名な金竜山である。
本部に勝つという大手柄を成し遂げ、本部は力士に負けるという大失態をしでかした。
試合内容としては勇次郎対策にあらゆる打撃対策をした本部にいきなり張り手のクリーンヒットを浴びせる。
さらに指折りに対して小指一本で持ち応え、本部の反撃の後蹴りを直撃するも動じずに耐え抜いた。
そして、本部の打撃を捌ききり、本部の起死回生の急所狙い(と思われる)一撃にも動じずに耐え切って投げて勝負を決めた。
トドメの際には四股で踏みつけるというダーティさを見せつけている。

総じて金隆山の強さが強調された一戦であり、本部が失態ばかりやらかしている一戦でもある。
本部の失態として有名なのが小指を捕ったことだが、それ以外にもいきなり張り手を食らったり、打撃のほとんどが捌かれたりと不甲斐なさ過ぎる。
こんな大失態を犯せば以後20年に渡り解説役扱いされても文句は言えない。

これで刃牙の試合まで上り詰めれば金竜山の実力は本物、本部が失態をやらかしたわけじゃなかった。
そうなるのだが残念ながらと言うべきか、猪狩に負けてしまう。
猪狩の打撃に耐えきるタフネスを見せながらも、猪狩を押し切れない惜しさも見せてしまった。
もっとも、覚悟を決めた猪狩は刃牙の打撃にも怯まない。 なので、金竜山が実力不足とは一概には言い切れない。

この試合の金竜山は猪狩に翻弄されていた。
なので、実力を出し切れなかったのかも。
それでも最終的には勝ちをモノにできるところまで追い詰めながらも、相撲にこだわったが故に負けるのだった。
あの猪狩もこの勝利にはあまり納得していないようだった。
あの勝てば良かろうなのだの猪狩が、である。
猪狩としてはラッキーで掴んだ勝利であり、同時に金竜山の大きさを認めた一戦でもあるのだろう。

これで終われば金竜山は本部以上に隠れた実力者という評価で終わったかもしれない。
でも、勇次郎にみんなで挑戦、ぶちかましてあっさりと逆転されているんですよね。
猪狩に惜敗したのは許容範囲内かもしれないが、勇次郎に完敗したのが不味かった。 やっぱダメじゃん、力士!
でも、刃牙に負けた猪狩に親指を立てたシーンは良かったと思います。

3人目は柳に空掌を受けて意識不明になった元関脇の北嵐。
まぁ、ちょい役ですな。
常人の3倍はあろうかと圧倒的な体躯を誇るのだが、低酸素の毒には敵わなかったようだ。
ま、まぁ、この人は元力士だし……
なお、刑務所内で柳とやり合ったようだ。
つまり、何らかの罪を犯している。
力士の価値を下げた男と言えよう。

4人目は相撲にトドメを刺した男である。
オリバ刑務所編に出てきたゲバルに挑んだ男、自称ファーストである。
大相撲出身かつ統合格闘技に転向してから僅か数試合で王座に登り詰めた超一流である。
だが、オリバ刑務所的にはまったく期待されていなかった。
つまり、オリバ刑務所内での力士の評価はそういうものである。
ゲバルの評価の高さを鑑みてもあんまりな評価だ。

ファーストはやられっぷりも酷い。
ゲバルに銃を渡されて、それに意識が行っているうちに金的を食らってしまう大失態から始まる。
それで勝負ありだというのに追い打ちとして相撲ルールでゲバルと勝負、自慢のパワーがまったく通用しなかった。
その後、ゲバルの得意技である髪を使った三半規管八つ裂きで完全決着。
文字通りのトドメとして看守に脳天を撃ち抜かれて死んだ。 あんまりにもあんまり過ぎて救いゼロなやられ方である。

ファースト自体も「相撲で俺が負けた」とゲバルの三半規管八つ裂きを相撲扱いする頭の悪さを披露したのもマイナスだ。
やたら相撲を引き合いに出していたし、ファーストは力士キャラとして描かれていたのは間違いない。
相撲、お前大好きだったんだな……

だが、そんなファーストも元力士である。
柳にやられた北嵐も元力士。
そして、元力士は別に強くないのが今回触れられた内容である。
では、現役力士の龍金剛と金竜山で考えてみると戦績はまぁ悪くない。
良くもないけど。
力士の評価は安定していない。
そんな中で宿禰という人間が現れた。
宿禰が力士としてバキ世界にどんな一石を投じるのか。
それに本部はどう対抗するのか。
興味は尽きない。

しかし、何か刃牙道は本部ばっかりの内容でしたな……
本部が訓練をしていることに始まって、守護るネタで場を持たせ続けた。
そして、最後に本部関係者の力士で締めた。 刃牙道と言うよりも本部道だった。
ぶっちゃけ刃牙道の本部はあまり好かれていないと思うが、中心人物として物語に存在し続けたのは間違いない。

そして、力士オチですよ。
一時期、当感想で金竜山ネタを使いすぎてクドいと突っ込まれたものですが、何か結局力士に収束しちゃったので先見の明があるということで一つ。
本部VS金竜山はバキ世界の特異点だったんだなぁ……