刃牙道感想 第95話「有資格者」



ジャックの必殺技、噛み付きが炸裂した!
ジャック最大の個性とも言える大技である。
同じく噛み付きを武器とするピクルの登場に加え、ピクルに噛み合いで敗北したことで印象が薄くなったけど。
その代替品として身長を選んだのならどうかと思うゾ……?

幾度も砕けたジャックの歯(不吉な言い回し)が本部の肩に食い込む。
ジャックはバーベルを持ち上げるほどの咬筋力を持つ。
肩という肉厚な部位だろうがすぐに噛みちぎるはずだ。
だが、なかなか動かない。
あれか? 本部肉は不味いのか?

「おかしいな兄ちゃん」
「本来のジャックなら一瞬で骨ごと噛みちぎるハズだぜ」


って、何だその余裕は!
だから、違うって!
こういう時にアンタが言うべき台詞は「人間じゃねえ……」だって!
ジャックが本部の肩を噛みちぎることができないのは何か仕掛けがあるのか?
本部の余裕がそこにあるのか?

本部は短刀を鞘に収める。
あ、それ、使わないんだ。
一瞬で噛みちぎるのだから、例え短刀を使おうとしても無駄なのかもしれないが。
そういえば、短刀を持っているのは右手で、それに対しジャックが噛み付いたのは左肩だ。
どうせなら右肩を狙った方が……
ちょっと頭に血が上りすぎなジャックであった。
本部程度に手間取れば冷静さが失われても仕方ないが。
「この噛みつきはよォ……」
「強力っちゃ強力だが」
「武ではないんだよなァ………」


肩にジャックの歯が噛み付いた状態で、本部は上体を引く。
衣類の上から噛む際には布を吟味すべし。急激に引き抜かれ前歯を根こそぎ持って行かれる例は珍しくない――
これはかつての勇次郎の言葉である。
その言葉通りにジャックの前歯が根こそぎ本部の上着に持って行かれた。

痛い。すさまじく痛い。
だが、ジャックは苦痛に歪む前に呆然とする。
よほど本部の前歯抜きが予想外だったようだ。
勇次郎にかつて噛み付きの指導を受けたが、これは布の上から噛むなというものではなく吟味しろというものだ。

本部の上着はさほど厚手ではないからこそ、ジャックは噛み付きを敢行したのだろう。
しかし、今こうして本部はジャックの歯を破壊した。
何かからくりがあるのか?

「フツウの上着を」「着るワケにもいかんだろ」

本部が着ていたのはアラミド繊維の上着だった!
懐かしの単語、アラミド繊維ですな。
かつてはドリアンが用いたものだが、巡り巡って本部が武器として、いや防具として運用した。
何でも持ってるわ~このおっさん……
「防弾及び防刃用で作らせた」「チョット高かったけどな……」

本部の普段着はただの普段着ではない。
アーマード普段着だった!
このアーマード普段着を着ていたからこそ、武蔵の素手斬撃に耐えられたのだろう。
本部なんて生身なら真っ二つのチョッキンチョキンですよ。

ジャックの噛み付きが効果を発揮しなかったのもこのアーマード普段着の恩恵か。
ジャックの打撃を受けてもダメージを受けなかったのもそういうことか。
……いや、後者はおかしいな。
防弾チョッキの類で防げるのは銃弾や刃物の貫通であり、当然ながら受けた衝撃は緩和しきれない。
噛み付きを破ったメカニズムには納得できるが、打撃に耐えたメカニズムには納得できない。
読者を納得させないことには定評のある本部であった。

本部は硫酸入りカプセルをガイアに伝授したのように、古流武術の伝統を守るだけではなく現代の戦法も開拓している。 このアーマード普段着もその一環なのだろう。
伝統に甘んじず時代に積極的に対応しようとしている点に、本部の強みが表れているか。

本部はフィジカルでは弱い。武蔵とは比べものにならないだろう。
だが、工夫によってその差を埋めようとしている。
その工夫は武蔵とは文字通り時代の違う工夫だ。
決して埋められない差となるだろう。
ある意味、本部はもっとも真摯に武蔵に勝つことを考えているかもしれない。 同時に守護ることに関してはあまり考えていない気がしてきた。

余談ながら防弾チョッキの価格は自衛隊のもので10万円ほどらしい。
あくまで量産品だからその価格に抑えられているのであって、本部のアーマード普段着は一品物だろう。
その価格は数倍に跳ね上がることは間違いない。
なので、本部の言う通り、高く付く一品だ。
お前はどこにそんな金を持っているんだ……?
全然道場は儲かってなさそうなのに……

それでも数百kgの咬筋力で噛まれればただでは済まない。
それなりにダメージを受けているようだった。
だが、ジャックのダメージの方が上なのは明らかだ。
着実に押している本部だった。
本部のくせに……

「ここまでだ」
「左足は無いも同然」
「顎に備えた武器も失われた」
「もはや」「せっかく手にした身長の意味もない」
「潮どきだ」


優位に立った本部は停戦勧告をする。
左足のアキレス腱は断裂して機動力も攻撃力は失われただろう。
歯が失われた噛みしめる力がなくなって、攻撃力と防御力は下がったに違いない。
そうなると身長の意味も……待て、身長は関係ないだろ!
身長が特別意味がなくなったわけではないと思うのですが……

これはジャックの自慢の身長は無意味になったとレッテルを付けて精神的に優位に立とうという算段だろうか。 柳と戦った時の技量では上を行くとか武器に頼っているとか、その辺に通じる口プレイだ。
本部は様々な武術に通じる聡明な知識を持っている。
その知識を実戦ではあまり行かせないから知能はないと思っていたが、今の本部はその辺も抜かりなしだ。
足りんのは肉体だけだ!
武器を封じられた挙げ句に情けをかけられた。
ジャックは悔しがってない歯で噛みしめる。
歯がないから顔が縮んで見える!
顔芸するほどの激怒と屈辱がジャックの心中にはあった。
まるでクシャおじさんですな。器用なことをしやがって。

この顔芸に公園にいた一般人は感心する。
感心するんだ!?
というか、警察を呼んであげよう。
こうなったら本部が逮捕されて臭い飯を食うことがせめてもの救い……

ジャックは策も何もないのか、ノーガードで本部に殴りかかる。
どうしようもなく追い詰められたら破れかぶれに移るのがジャックだ。
ピクルの時と一緒である。
その辺に精神的な脆さが見えるジャックだった。
本部はその脆さを的確について優位に立っているのは見事というか、卑怯というか。

だが、この破れかぶれのパンチラッシュで本部は追い詰められていく。 片足は使えないから上半身と腰だけでしか撃てないパンチだ。
普通なら力が入らず威力は低い。
それでも本部を追い詰めるには十分以上の破壊力を秘めているのだった。
期せずして本部が否定した身長をフルに活かした打撃の連打である。
優勢に立っている本部であったが、こと運動能力に限ればその差は圧倒的なハンデを背負ってもジャックの方が上であった。

本部はジャックの高い攻撃力を逆手に取ってカウンターでダメージを与えている。
ならば、攻撃力を下げてでも手数を多くすれば対応しきれない。
せっかく身長を伸ばしてリーチが増しているんだし、こうした削るような戦い方が正解である。
もっとも、それはいつものジャックの流儀とは異なるのだが。

「さすがジャック…」
肉体勝負フィジカルじゃとてもかなわねェ…」


本部はガードを固めて堪え忍ぶ。
アーマード普段着とはいえ打撃にはあまり関係ないぞ?
そう思っているとちュどった!
範馬一族を翻弄し続けた本部の必殺技、ちュどである。
今回は煙幕か、それともいっそのこと爆薬による直接攻撃なのか。

ともあれ、圧倒的な肉体で削られ続けるという最悪の事態への準備をしていた本部だった。
範馬一族、3人共、ちュどでやられてしまうのか?
それとも意地を見せつけて世界観を守護るのか?
次回へ続く。


本部の絶好調が止まらない!
まぁ、概ね道具頼りなのですが。
道具の使い方が巧みであることは認めるが……
死刑囚より死刑囚らしい奴め。

ジャックは自分の力を発揮することだけを考えて、相手の弱点を突くことを考えてこなかったのだろうか。
それが競技者という立ち位置に表れているのかもしれない。
相手が自分より下ならば圧倒できるが、本部のように卑怯卑劣外道解説家な相手には足下を掬われてしまう。
ほぼ全てが上のピクル相手にも真正面から戦うしかなかったし、ジャックは強者故の驕りが大きな弱点となった感がする。
その辺を踏まえて刃牙はファイターとして終わりと言ったのかもしれない。

バキ世界において爆発物はけっこうな武器だ。
独歩も克巳も昂昇も爆発物には不覚を取っている。
範馬一族も翻弄された。
ジャックはどうなるのか。
勇次郎でも刀で斬られれば切れることが判明したし、ジャックも爆発物を食らえば吹っ飛ぶと証明されちゃうか?
ちょっとこのままだとジャックに救いがなさすぎるので、本部にアッパー一発くらいはぶち込んで欲しいのですが。

さて、ジャックの歯は幾度も砕けている。
ピクルの時なんて丸ごと吹っ飛んだ上に顎まで砕けた。
そして、当たり前のことだが永久歯は二度も生えない。
生えないのだが、バキ世界には刃牙・ジャック・花山と歯が砕けても時間が経てば復活している人物が多い。
つまり、バキ世界において永久歯は何度も生える!
サメのように!

と思っていたらジャックの歯はインプラントしていたものだと今回発覚した。
当たり前だがさすがに永久歯は生えないようだ。
……と思っていたらピクルに破壊された時は永久歯であった。
生えるのか、生えないのか、どっちなんだ!
総天然素材のピクルに勝てなかったから、総人工素材で対抗しようと思ってインプラントしたりして。

なお、本部の歯は総入れ歯だ。
何せいろいろな格闘家と戦いましたからな。
最初からいろいろなアイテムで戦っていたら総入れ歯にならなかったのかもしれないのに。
そう、今でこそ手段を一切選ばなくなったが、昔の本部は素手で戦うことにこだわっていた男なのだ。

そんな本部がどうしてこんなことになったのか……
本部の心の闇が芽生えた発端はどこにあるのか、それが明らかになる時は来るのか。
山ごもりで一体何があったのか。
武蔵のことを置いておいて本部が山ごもりに行った山の調査を行うべきではなかろうか。
そこには魔界のデーモンがいて、本部はそれに魂を売ったりして……
魔界のデーモン相手なら武器を使うのも道理。武蔵が蘇るのも道理。
武蔵編第2部魔界のデーモン編に期待だ!