何か教えてもらったっけ?
というか、あの人、何のためにやってきたの?
機関銃持たせておけとか言っておきながら機関銃でも無理とか何なの?
本部とは一体。
観客たちは困惑していた。
闘技場の中央には砂山があり、そこには刀や槍などの多種多様が武器が突き刺さっていた。 今日の試合は武器解禁なのだ。
何か烈がノリで言っちゃったことが通ってしまった感がする。
この武器も使って言いということだろうか。
戦場に武器が落ちているのはごく当たり前のことだ。
試合というよりも合戦を意識しているのかもしれない。
こうした状況になると強いのは間違いなく武蔵だろう。
何せ合戦経験者だ。対応力が違いますよ。
だが、突き刺さっている武器には分銅がある。
本部流の秘中の秘だ。 烈が本部流の極意を教えてもらっていれば結果はわからぬ。
本部の教えを胸に戦え、烈!
なお、メッチャ弱くなりそう。
この大一番には観客に格闘家たちも並んでいる。
渋川先輩、紅葉、ジャックと名立たる格闘家たちがいる。
って、紅葉がいるんかい。
この人、戦ってはいないけどちまちまと出番を稼いで存在感を出していた。
今回も例に漏れずだ。
試合が悲惨なことになった時には医術に期待したいところでもある。
その意味では最後の切り札だ。正直、本部よりずっと守護ってくれそうだ。
ジャックはサングラスを付けている。
まるで父のようだ。
父と比べれば知名度は段違いだが、何せ身長243cmだ。
何をどうやっても目立ってしまう。
サングラスも致し方あるまい。
そんな観客には本部がいない。 地下闘技場での試合と言えば本部なのに本部がいない。
なお、言うまでもなく本部の居場所は試合場ではなく観客席です。
本部は守護ってるよりも解説(かた)ってる方が持ち味を活かせる。
烈のミスは武蔵に武器有りで喧嘩を売ったことかもしれないが、本部のミスは自分のキャラクターを理解していなかったことだな。
本部が頑張ったのは嬉しかったのは解説している方が嬉しいのだ。
さて、烈は控え室で準備体操をせずに試合開始を待っていた。
そんな烈にエールを送りに来たのか、我らが範馬刃牙が現れる。
あ、いたんだ、お前!
ついすっかり存在を忘れていた。
刃牙道という作品に必要なのは刃牙よりも本部のようだ。
準備体操をしない烈を武術家だと刃牙は言う。
これは最大トーナメントの渋川先生VS独歩でも語られていたことだ。
準備体操をするようでは武術家失格なのだ。
なお、本部は刃牙VS紅葉で準備体操をしてこなかった刃牙に対して「このアホウッウォームアップもせんで」と発言したので武術家ではなくスポーツマンだ。
刃牙は烈の上着が重そうだと言う。
手裏剣を大量搭載しているのだろう。
もしかしたら防刃ジャケットかもしれない。
鎖を仕込むのは決闘とあらば当然の仕儀。士道不覚悟には当たるまい。(byシグルイ)
烈が試合に上着を着て挑むのはこれが初めてだ。
地味だが今回の試合はいつもとは違うことがわかる。
刃牙は烈の精神性を評価する。
侍である宮本武蔵には武器を認めてこそ対等。
烈らしい精神性だ。刃牙は烈のそうした一面をよく理解している。
だから、止めない。
これでも烈の友人なのだ。
しかし、刃牙は妙に垂れ目で妙にムカつく。 偉そうに現れた本部よりもムカつくというのは本物だ。
ところでそろそろ今何しているかを教えて欲しいのですが……
留年しているのか、進学しているのか、プー太郎なのか、はっきりしてくれ。
「侍なんだから刀剣(かたな)使用(つか)ったらいいじゃん」
「その一言が」「俺には言えなかった」
そんな刃牙だが自分にはなかった覚悟に嫉妬を覚えるのだった。
刃牙はガイアとの戦いで本物の殺し合いを経験している。
勇次郎との戦いも下手に武器を使うよりずっと危険だ。
それでも武蔵に刀を持たせられなかった。
人生の目標を果たして日和ったのかもしれないがさすがに責められまい。
「剣を手にしていない宮本武蔵」
「その時点でわたしと五分と五分」「或いは――――」
「わたしを上回るのかも………」
烈の見立てでは素手でも互角かそれ以上だった。
だというのに、さらに武器を持たせる……
本部がやるべきことは守護ることでも超越ることでもなく、「勝算のない喧嘩をする武道家はいない」という心構えを教えることではないだろうか。 なお、本人はそんなことを言った直後に勝算のない喧嘩をしました。
だが、相手が格上でも、危険でも、挑まずにはいられない。
それが烈海王である。
なまじ強いからか、中国武術への誇りを持っているから、引くに引けない生き方をしてしまっている。
その矜持は本部の守護力よりも重いのだ。
なお、この引くに引けないに巻き込まれたのが刃牙だ。
毒手の毒で死を間近に迎えている中で大擂台賽へ出場。
偶然、陽手の毒手持ちの李海王と試合が組まれることに期待しながら、これまで偶然、毒が裏返ることを期待された。
あまりにも引くに引けなすぎる。FXを絶対にやらせてはいけない。
結果としては命こそ助かったもののこんな目に遭えば刃牙は烈がどんな人間なのか、嫌というほど知ってしまうわけだ。
ともあれ、烈は入場する。
結局、本部は現れなかった。代打をしてくれない。
いや、武器が刺さった砂山に小便をしているかもしれん。
ここは俺の土地だ!
じゃけん武蔵と一緒にボコりましょうねー。
一方、武蔵はたすきを巻いていた。
作務衣はいつもより短く半袖のものだ。
さすが生の侍か、こうした服が実に似合っている。
本部が同じことをやれば狂ったとしか思えぬ。
力王山を初めとした歴代チャンピオンの見届け人をしていたおじさん(たしか名称不明。松尾さんは運転手の方なので混同なさらぬよう)が武蔵を見て頃試合へ赴くようには見えないと感想を漏らす。
わくわくしているようだと。
たしかに表情が硬い烈とは対照的に武蔵は笑っている。
それを武蔵は未熟と答えるのだった。
さて、このおじさん、勇次郎VS独歩で刃牙を殴っているシーンが印象深いが、Jr.の案内をする時にも登場している。
ちゃんとしたキャラなのだ。
その上でのポイントは歴代チャンピオンの見届け人をしていたということか。
以前書いたのだが、小生は武蔵が地下闘技場初代チャンピオン説を掲げている。
武蔵も地下闘技場に関して何らかの感じるものがあった。(第20話)
そして、歴代チャンピオンの見届け人のおじさんが今、武蔵を見届けている……
これはもはや偶然ではない。必然――とキバヤシのような顔になる小生であったとさ。
本部の本当の名前が宮本部なのも必然。
「明鏡止水とは程遠い……ッッ」
「こみ上げる昂りを止められぬ」
「斬り結ぶ歓喜(よろこ)びに一点の曇りなし!!!」
殺し合いを前にしてもむしろ喜ぶ!
現代人とは一線を画すメンタリティだ。
ピクルとは違いしっかりと言葉がある分、むしろ恐ろしい。
何でも義務感より楽しんだ方が上達するものだ。
そうなると殺し合いにおいて武蔵が圧倒的に有利か。
こうして本部は両者共にあっさりと超越えさせて入場させてしまった。 な、何やってんだ。少しくらいは波乱を起こせ。
いや、いつも通りの解説でも文句は言いませんが。
ここで解説をしなければ本当の意味で本部は守護れない。
自分(の仕事)を守護れない男が誰かを守護ろうなんておこがましいとは思わないかね……?
次回へ続く。
本部の奮闘も意味なく選手入場!
あと本部の出番と言えば武蔵と烈にサンドイッチにされるか、観客席で解説するくらいであろう。
無論、クラシックな本部の味わいを知る我々としては後者に期待したい。
思えば解説役がすっかり出なくなったんですよね。
花山VSスペックから始まったモブのナレーションも悪くはないんだけど、それに傾倒しすぎる感があってちと食傷気味なのも事実である。
だからこそ、なおさら本部の解説に期待したいのだよ、小生は。(倒置法)
しかし、友の出番は試合開始前だけじゃない。
ピンチを救うのも友の仕事だ。
なので、烈のピンチに割り込むことも期待したい。
「大丈夫か、烈つぁん!」
「えと、誰だったけ……あ、本部(ほんぶ)さん!」
「どうしてあなたをクソ雑魚ナメクジとしか思っていなかったわたしを助けるのです!」
「友を守護(たす)けるのに理由はいらぬ」
「思い出してみるがいい、烈つぁん……友との日々を……」
「でも、それって1話分しかないっすよ」
「しかもアンタ、難癖ばっかり付けて友って感じじゃ……」
「~~~~~~~~ッッ」
……ダメだ、本部との間に絆がなさすぎる。
本部の敗因は烈との間の絆不足だな。
ここで地味に濃い絆のある深町コーチが「勝てよ、烈」と言ってくれたら多分俺、泣くよ……
本部に言われても笑って終わるがね。
刃牙道(5): 少年チャンピオン・コミックス