バキ道感想 第120話「標高」



ジャックの顔面が地面に刺さった。
絵面はギャグだがギャグだけにダメージは少なそうだ。
対して宿禰は頸動脈を噛み切られてシリアスに致命傷である。
ギャグとシリアスの勝負!……なのか?


ジャックは身体が一直線になり頭から地面に刺さっていた。
マジで刺さってるよ!?
いや、243cmが頭から地面に刺さるとここまで面白い絵とは思わなかった。
超弩級の突き刺さりである。

かつて範馬勇一郎はアイオワの甲板に人間を突き刺した。
同じように突き刺した宿禰の投げの破壊力は勇一郎並みの威力ということか?
パワー最強格のオリバを圧倒したし宿禰のパワーはバキ世界屈指なのは間違いない。

地面に突き刺さったジャックは力なく倒れる。
さすがに突き刺さりっぱなしとはならないようだ。
明らかな決着にみっちゃんは勝負ありの宣言をしようとする……が、ここで宿禰も膝を付く。
目には力がなく表情は虚ろだ。

「ここにきて―――」
「大量出血が効いてきた―――ッッ」


出血が効いていた!
ピクルは全身切り刻まれて大量出血してもわりと平気だったけど、現代人の宿禰はそうもいかないらしい。
決定打となったのはやはり頸動脈か。
宿禰は傷口を押さえているけど、それで応急処置が完了するわけでもなく。

この展開を見てみっちゃんは言いかけた勝負ありを取り下げる。
そして、表情がなくなった宿禰に対して、地面に突き刺さったジャックは笑みを浮かべている。
壮絶な絵面でダメージを受けたジャックだが、確実なダメージを受けていたのは宿禰だったのだ。

倒れたまま、ジャックはより高い標高の者が勝者という勇次郎の勝敗論を語る。
これ、勇次郎本人から聞いたのではなく、本部から聞いているんですけどね。
本部は置いておいて、今は倒れたままのジャックよりも膝を付いている宿禰の方が標高が高い。
だが、明らかに余裕があるのはジャックの方である。
何せ未だに出血一つない。
ガーレンだって出血させることができたのに! ガーレンだって!

「見下ロス宿禰見上ゲルジャック」
「コンナ決着モアル」


宿禰は出血に耐えきれずついには倒れる。
脅威の肉体の持ち主だったが、人は血を失えば死ぬという大前提には勝てなかった。
でも、こうなれば結局標高の差はないような……?

「勝負あり!!!」

みっちゃんは改めて勝負ありを宣言する。
ジャック範馬、Jr.戦以来の勝利を手にした。
Jr.と戦ったのなんて2005年ですよ。17年振りですよ。
あまりにも長い空白期間だったが、ついにやっとかつてのラスボスの威厳を見せつけたのだった。

ダウンしたまま起き上がらないジャックだったが、勝負ありの宣言と共に回復したのか、全身を跳ね上げて起き上がる。
そして、両腕を大きく掲げて勝利を喜ぶのだった。
ジャックにしては珍しく大きなリアクションである。
嚙道と言い出して負けたら立つ瀬がない。
自分から衆人環視の中で戦いたいと言い出したのなら負けたら余計恥だ。
掛け金を上げまくったのだからそりゃ勝てば喜ぶ。

今回のジャックは大ダメージを与えて一気に勝つのではなく、噛み付きで少しずつ有利な状況を作ることで勝った。
大振りかつ派手な戦い方をしてきたかつてのジャックとは異なる勝ち方である。
ジャックはフィジカルでピクルに負け、さらに身長だけは強化したフィジカルでも本部に負けた。
自慢のフィジカルには限界が来ていたのだ。

これらの経験からフィジカルに頼るだけでなく、新しい勝ち方の模索をし、そこで辿り着いたのが嚙道だろうか。
事実、覚悟した宿禰にただの打撃は通じなかった。
旧来のジャックの戦い方では勝てなかった可能性は十分ある。
嚙道を身に付けたからこそ宿禰に勝てたのだ。
思ったよりもまともでしたしね、嚙道。
歯を蹴られて折れなかったのはやっぱ化け物フィジカルの賜物だと思うけど。

「よくやったァ――ッッ」「噛むことは美しい―――ッッ」

一時は噛み付きにガン引きしてた観客も大喜びである。
結局、勝てばそれが正しいということか。
本部だって武器を使いまくったけど勝ったら賞賛されたし勝者が正しい!

ところで本部さん、結局解説してくれなかった。
うーむ、もっと口を挟んで欲しかったのだが。
まぁ、出てきただけでも、ヨシ!
武器ありでもいいので宿禰に襲い掛かって欲しいものだ。
相撲リベンジだ!

「スゲェや嚙道…」

嚙道の完成度は刃牙も認めるほどだった。
打撃戦の攻防に自然に混ざる噛み付きというのはたしかに新境地だ。
勇次郎が言っていた噛み付く部位を吟味しろというのはあまり守れていない気がするが。
宿禰が衣服を着込んでいたらまた勝手が違っただろう。
嚙道には課題はあるかもしれないが、新生ジャックを見せることができたのは事実か。

「骨盤ヲ捕ラエテノ―――「一投」」
「初ッ端ニ喰ラッテイタラ決着ダッタゼ」


ジャックは担架で運ばれる宿禰を見つめながら戦いを振り返る。
最後の投げを余力のある状態で喰らっていたら負けていたようだ。
たしかに出血に加え僧帽筋を噛み切られていたため、投げの威力が落ちていたことは疑いようはない。
落ちた上で人間を地面に突き刺すほどだから、万全ならとジャックが危惧するのも道理か。
出血がないからけっこう余裕がありそうでいて、入念に削ったからこそ掴めた勝利のようだ。

ジャックは僧帽筋を噛み切るという早々に取り返しの付かないダメージを与えたのが勝因か。
宿禰自体は10秒の密度が武器の力士らしく、奥の手をさっさと出すタイプだ。
なので、骨盤掴み投げでなくともいきなり肋骨掴みされていても不味かったかも。
今回の勝利は様々な要素が噛み合った結果か。

こうした振り返りができるのもジャックの成長が感じられる。
肉体や技術の進化もあるけど、精神的に鍛え上げられたらしい。
台湾で本当に何があったんだ?
……もしかして、台湾編が始まったりするか?

ジャックと宿禰の大一番はジャックの勝利で終わった。
まさかの宿禰の敗北である。
ラスボスが負けてしまってどうなるのか。
次の展開が気になる中で次週から怒涛の休載で再開は4月7日発売号からだ。
ほぼ月刊じゃねえか! 先のこと、考えてなかったな!?
まぁ、HUNTER×HUNTERとか喧嘩稼業と比べればマシということで……
次回へ続く。