刃牙らへん感想 第31話「あれ」



ピクルの顔面の皮が剥がされた。
顔面の皮剥ぎのダメージはデカいぞ!
デカいがわりと戦えるダメージでもあるぞ!
あとけっこうすぐ治る!
それを考えると骨折や動脈をやられるよりはマシかも……?

ピクルの顔面にジャックのローキックが入る。
顔面へのローキックは命を断ちかねない一撃である。
かつて烈はピクルの顔面に同じように蹴りを放った時は普通人なら死んでいたと語り、克巳も大相撲力士獅子丸の顔面を蹴れば殺してしまうと判断し試合を降りた。
顔面という急所に最大威力の攻撃は危険なのだ。
まぁ、ピクルさんはこういった攻撃を何度も受けてノーダメージで済ませてきたのですが……

そんなわけでこのような蹴りを顔面に食らわせれば本来ならそのまま決着を意味する。
しかし、そこはピクル。
即座に反撃はできずとも夢を見るに留まっていた。
そして、始まるのはピクル伝統の回復法、恐竜の攻撃を思い返すだ!

ピクルの脳裏に走るのはライバル、ティラノサウルスの尻尾であった。
牙や爪も強烈だが尻尾も記憶に残っていた。
牙や爪のような鋭さがない分、体重を思い切り乗せる攻撃だから威力という点では勝っていそうだ。

「まるで――」
「高所からの転落ッッ」


ティラノサウルスの尻尾を受けた時のダメージは高所からの転落に匹敵する!
匹敵するのはいいけど、君、刃牙を抱えたまま、地下闘技場の頂点から飛び降りましたよね?
あの時はあの刃牙でさえ大ダメージを受けた。
ピクルさんはノーダメージで平然としていた。
……いや、もっと高いところから落下したのだろう、うん。

あとティラノサウルスの尻尾は真マッハ突きを喰らった時にも想起していた。
ジャックの蹴りは真マッハ突きと同レベル……?
フィジカルではジャックの方が上とはいえ、それは何かいまいち納得しにくいような……?

「似てる……アイツに…ッッ」

ともあれ、ピクルはジャックにティラノサウルスの面影を見る。
ピクルにとってティラノサウルスは最大のライバルだったため、最大級の評価と見ることができる。
今のジャックはその域まで強くなったのだ。
読者視点だと強くなるまでの過程が不明なので今ひとつ感情移入しにくくはあるけど。
少なくとも本部と戦った時はいまいちだった。
本部戦から宿禰戦までの空白の時間に一体何が……?

ピクルは常人なら即死するような攻撃を受けても立ち上がる。
意識は怪しくなったようだがダメージ自体はそこまで大きくないようだ。
顔面の皮を剥がされたこともほとんど気にしていない。

しかし、どうにも心ここにあらずだ。
立ち上がったもののそれなりにダメージがあるのかもしれない。
それを証明しているように冷や汗を流している。
冷や汗は出血以上にダメージの証左となる要素だ。
顔面の皮を剥がされるより冷や汗を流す方が肉体的にも精神的にもダメージがデカい。

何にせよピクルには動揺の色が濃いようだ。
その隙にジャックの左フックが顔面に決まる。
皮を剥がした左頬ではなく健在な右頬を殴った。
甘さを捨てたなら弱味となった左頬を殴ってもいいような……?
動揺する相手を遠慮なく叩きのめすから甘さがないのか……?
それは前からのような……?

この一撃を喰らってもピクルは動じない。
動じないがまたも後ろを取られ、一時は戦慄したジャーマンをまたもやられてしまう。
ピクルさん、トレーニングモード状態である。
やらせる時は好き放題やらせるのがピクルとはいえ、ちょっとやらせすぎでは……?
耳を噛みちぎられた時は激おこぷんぷん丸になったのに……



「ひょっとして美味いんじゃね…!!?」

しかし、ピクルの反応が鈍いのには理由があった。
ジャックが美味いのではないかと物思いしていた。
つまりはよそ見であり集中していないのであった。
闘争を越える食事への想いを抱えているということはピクルにとってこの試合はまだ闘争に達していないと言えよう。

つまりピクルのスイッチはまだ入っていない。
スイッチさえ入れば白亜紀闘法と最終形態という奥の手がある。
現にジャックは以前、ピクルのスイッチが瞬間にやられていた。
一瞬の瞬発力は常軌を逸しているのがピクルなのだ。
故にこのような投げられている最中から反撃をしてもおかしくはない。
ピクルに常識は通じない!

「柵にジャーマンッッ」

って、そのまま柵に打ち込まれる馬鹿がいるか!?
ここまでの前振りは何だったんだよ!
普通にジャーマンを喰らったよ!!
しかも、また意識が混濁してるし!!!
野性を失いすぎているよ!!!

ピクルさん、まさかのそのまま投げを喰らうという解答を出した。
いや、てっきり投げられている途中から白亜紀の瞬発力で抜け出すのかと……
ワクワクしながらページをめくったらそのまま喰らっててちょっと笑ってしまった。

またも隙だらけのピクル相手にジャックは再度噛み付く。
狙いが上腕だろうか。
刃牙や昂昇相手にも噛み付いたし、ジャックの噛み付くレパートリーとしてはお約束なのかも。
上腕動脈を噛み切ればピクルとて大ダメージは間違いないだろう。

でも、刀で斬られても出血を止めている。
なので、そこの常識も通じなさそうだけどどうなる?
今のピクルさんは野性を失い気味であまり信頼できない。
君、もうちょっとキビキビ動いて!
野生は野性でもナマケモノかよ!

やはり強敵のいない現代での狩猟生活に慣れきってしまって野性を、ハングリーさを失ってしまったのか?
かつて地下闘技場戦士と戦った時のピクルは実は命がけだった。
何せ自分に挑む者しか食べなかった。常に飢餓状態であった。
シベリアトラやトラックに入っていた肉を食べたりはしたけど、恒常的な食糧供給はできておらず闘争=食事=命綱であり、それ故に闘争へのモチベーションも高かったのだろう。

そして、この餓えが強さに繋がっていたことは間違いない。
そこのモチベーションが揺らいだ刃牙戦は散々だったし。
ピクルはかなりメンタルに左右されるタイプだ。

今は食糧供給ができてしまったからそこのモチベーションがちょっと怪しい。
武蔵と戦った時は食糧供給こそできていたけど、あえて餓えることでモチベーションを高めていたし。
満たされてしまったピクルは盛時の切れ味を失ってしまっているように思える。
と思えばピクルのデバフにも若干の納得が……?

バキシリーズを代表する強キャラだけにやられるばかりではいてほしくないんですけどね。
一方でやられる時は一方的にやられるのもピクルである。
あと攻撃力が高すぎるが故にまともに攻撃させてもらえないのもピクルだ。
勝つ時もまともに攻撃が当たることは少なく、まともに当たった時が決着という感じだ。
そして、ジャックには攻撃が一度も当たっていない。
こういうワンパン火力キャラは対戦ゲーにおいては大抵弱いぞ。

ピクルはやられるばかりであるが故にここからの逆転を期待したい。
でも、本当にやられるばかりで終わった鎬昂昇という前例がある。
このままやられて終わってしまうのか、ピクルよ……
次回へ続く。
次号は休載!