バキ道感想 第121話「欲シイ全テ」



古代相撲の後継者である宿禰が負けた。
バキ道は相撲の凄さを教えるためのパートのはずが、何かいまいちわからんうちに宿禰が倒れた。
やっぱ宿禰の人望がいまいちだったか?
宿禰に一番性格が似ている人物が範馬刃牙というのはマイナスでしたね……


勝利したジャックは243cmの巨体のつま先から頭まで、観衆たちの賞賛を余すところなく味わっていた。
強いと讃えられれば、引かれた噛み付きも讃えられ、何なら範馬の血とまで讃えられている。
いや、それ、讃えられているのか?
勝ったのは血のおかげって、むしろ侮辱のような……
でも、範馬の血に関してはまぁまぁ気にしていたみたいだから、こう言われるのも悪くない、のか……?

ジャックは範馬の血で言えば勇次郎からは血が薄いと言われている。
それを裏付けるように登場した範馬一族(勇次郎・刃牙・勇一郎)で唯一鬼の貌を出せていない。
だからこそ、ドーピングやら骨延長やら嚙道やらで強さを得た。
そこを褒めてあげれば良かったのに。
これじゃまるでジャックが血に頼っているみたいだよ。

ジャックは観客たちの熱狂に包まれている。
しかし、ジャックはピクルとの戦いでは自分の半生を金も地位も名誉も全てを閉ざしたと語っていた。
ドーピングしているのだから名誉の道を捨ててるし、戦い方もえげつないから賞賛されるモノじゃない。
その上で強さを目指すのがジャックの生き方だった。
そんなジャックが観客たちの熱狂に思うことは……

「他デハ到底味ワエン!!!」

メッチャ喜んでた!?
君、言ってたじゃん!
美食も美女も金も地位も名誉もいらないって言ってたじゃん!?
何で観客に褒められてメッチャ喜んでるん!?
ナンデ!? ジャックナンデ!?

何かいつの間にか俗になってしまったジャック範馬だった。
この人、狂気じみたストイックさが強さの根源だと思っていたし個性だとも思っていたのだけど……
ただ何となく気持ちはわかる。
何せジャックはあの本部に負けている。
あの解説役に負けたなんて今までの人生全てを否定される勢いだ。
我々も今まで読んできたバキという漫画は何だったのかと否定された気分だった。
そりゃみんなに褒められて肯定されたくなりますよ。

「強くなりたい」
「強いと思われたい」
「凄い奴だと思われたい」
「熱く焦がれた過去が」
「今 報われている」


ジャックは「強くなりたい」ためにドーピングでも何でもやるファイターだと思っていた。
けど、その向こう側に「強いと思われたい」「凄い奴だと思われたい」が隠れていたようだ。
いや、ビックリだよ。君、そんな奴だったのかよ。
それ、本部に負けた後に芽生えた感情じゃなイカ?

ジャックVS宿禰でジャックが勝ったのはストイックさの差かと思った。
強くなるために既存の無茶トレーニングに加え、新しい格闘技を作り実践したのがジャックだ。
それに対し宿禰は大敗を喫したのに、旧来のトレーニングを続けあまつさえ女遊びをしていた。
その意識の差が出たのかと思ったけど……何か顕示欲の差だったらしい。
宿禰は宿禰で観客の前で戦えることにはそれなりの喜びはあったらしいけど、より具体的だったのはジャックだったか。

これは板垣先生の価値観の変化もありそうだ。
刃牙道で武蔵が賞賛が欲しいと語っていたけど、あれは板垣先生がそうした価値観を持つようになったのが反映されたと語っていた。
何も求めずストイックに強さを追求できるのは勇次郎のような超人だけで、凡人は何かのために強くなる方が自然だし結果も付いてくるということか。
その理屈はわかるし、それで考えるとジャックはどうやら凡人寄りらしい。
……唐突に賞賛を求め出したけど何か妙な納得感があるなチクショウ!

ジャックはこの試合を組んだみっちゃんに跪いて感謝を形にする。
妙に礼儀正しいけど、何か俗物になったジャックだから納得してしまう。
解説者が守護者になったりイメチェンが激しいご時世だ。
克巳の髪型みたいだな。

「十分ニ報ワレタ」「浮カレル時間ハ モウ終ワリダ」

「なんか…」「急いどる……?」


メチャクチャに喜んだジャックだったが次の目的を見据えているようだった。
そこはストイックなままで良かった。
その様子をみっちゃんは急いでいると感じるのだった。
もしかして、いきなりドーピングの副作用で寿命が短いとか言い出すのか?
この人ほど無茶なトレーニングをした上で特に弊害のない健康な人はいない気がするのだが。
多くの人がジャックが接種している薬物をただのサプリメントと捉えているのでは……?

そんなジャックは観客席最上段にいる刃牙を見つめる。
降りてこいと挑発すると刃牙はそれに答え、一飛びで闘技場に着地する。
ピクル戦の時はそれで致命傷を負ったけど今回はノーダメージだ。
ちゃんと着地すれば大丈夫らしい。

「俺に噛みつくつもりかい……?」「ジャック兄」

「イヤ ソウデハナイ」
「タイラゲルツモリダ」


まさかの刃牙VSジャック、兄弟喧嘩リベンジだ!
土を付けた本部はどうした! 宿敵の勇次郎もどうした! 一応ピクルもどうした!
あと何よりもスッくんが全力で置いてけぼりにされた!
宿禰の再起の物語が始まるかと思いきや、まったく関係ないところでの戦いが始まろうとしている。
宿禰は武蔵みたいなラスボスポジションかと思いきや、ゲバルみたいな中ボスポジションだったのだ。
わかるか、そんなの!

ジャックにとって刃牙は因縁の相手だ。
最大トーナメントという大舞台で負けてるし、勇次郎との互角に戦われてジェラシーもある。
あとファイターとして終わりなんて最大級の侮辱を喰らっている。
たしかにリベンジしたい相手ではある。
個人的には本部さんにリベンジして欲しかったのですが。
いや、一番は本部が相撲にリベンジすることですが。

結局、古代相撲とは、宿禰とは何だったのか。
答えが出ないうちに戦いは別のステージへ行こうとしている。
いや、ホント何だったんでしょうね……
古代相撲自体、結局は蹴りを使う相撲って感じになってしまった。

刃牙とジャックの戦いはどうなるのか。
それ以上に宿禰はどうなってしまうのか。
休載開けながらとんでもなく混沌としている。
板垣先生、休んでいる間に話の方はちゃんと考えていたんですよね……?
次回へ続く。