バキ道感想 第147話「10秒」



無駄にやる気のある宿禰とやっぱりやる気のない刃牙が激突する。
これで刃牙が負けたら伝説のバカだ。
タイトルだってバカ道になる。
でも、こういう時に限ってやたらめったら強いのが範馬刃牙でもある。
根っからのヒール体質でヴィラン体質だ。主人公なんですけどね、一応。


互いに試合場の端に立ち試合開始を待つのみとなった。
腰を落とす宿禰に対して刃牙はハンドポケットである。
このまま、慌てて喰らってくれれば笑えるけど、刃牙は抜拳術をものにしている。
既に構えは完成していると言えよう。



ここで妙に存在感のある小坊主が映し出される。
頼りない顔つきばかりの小坊主としては精悍でかなりイケメン寄りだ。
立ち姿も決まっているしモブにするにはもったいないくらいの強者感が出ている。
この小坊主が刃牙に襲い掛かっても誰も文句を言わないだろう。

そんな地上最強の小坊主が太鼓を叩き試合の開始を告げる。
まず動き出すのは宿禰だ。
10秒で終わらせると断言したからには試合と同時に時間との勝負が始まったとも言える。
だが、開始3秒。まだ射程に入っていない。
3秒でさえ惜しいのにけっこうのんびりしている。
1秒で射程に入れッッッ。

対する刃牙はハンドポケットのまま、宿禰の元へと歩き出す。
遅延して10秒以上の試合にする気はないようだ。
困難に臆せず挑む主人公らしい姿……ではないですね、これ。

そして、4秒にすると同時にやっと射程に入り宿禰は顔面めがけて張り手を放つ。
って張り手かよ。
もったいぶったわりにはエラく凡庸な手を打ったと言わざるをえない。
宿禰の体躯で打てばそれだけで必殺かもしれないが、範馬刃牙には相手との身長体重差を無力化する常在能力を持つ。
ヘヴィ級ボクサーのパンチ並みの威力までデバフされているぞ。

「「ゆる」を極めた少年の身体――」

一方、刃牙は脱力していた。
刃牙は脱力すればするほど速度を得られるゴキブリ理論の持ち主である。
力みまくりの宿禰とは真逆かつだらけた状態からも多大な効果を期待できる。
って、もしかしてだらけたまま、戦うためにゴキブリ師匠の弟子入りをしたんじゃあ……

宿禰が振りかぶると同時にゆるキャラになった刃牙は反応し抜拳する。
ポケットから拳が出るとその形は握り拳ではなく弧拳、手首の付け根で打つ形だった。
そこまでで6秒が経過した。
って遅ェ!?

宿禰が振りかぶった時が4秒、刃牙の拳が放たれたのが6秒。
宿禰は振りかぶってから2秒経過しても未だに刃牙に届いていない。メチャクチャに遅い。
1秒どころかコンマ1秒でもあれば届く距離なのに2秒もかかっている。
刃牙の妖術が発動したのか?

「拳を握る“手間”のない最速の打撃技を」
「宿禰の顎へと閃かせた」


2秒かかる宿禰の鈍行打撃とは対称的に刃牙の弧拳はおそらくは0.1秒未満の速度で宿禰に届きそのアゴを打つ。
モロに当てるというよりもほんのりと触れるような一撃だった。
これはピクル戦で見せたカスらせる打撃だろうか。
史上最強の男の脳を揺らした打撃が落ち目の古代相撲の使い手に決まった。

だが、刃牙の顔面にも宿禰の張り手が迫る。
手の平が刃牙の顔ほどの大きさを誇る。デカすぎじゃないか?
インパクトの瞬間、刃牙の顔が大きく揺れ、宿禰は張り手を振り切る。
当たった……のか?

「スリッピング・アウェイ」
「張り手と同じ速度 或いはそれ以上の速度で」「打たれる方向に顔を回転させる」
「結果 拳は顔面を打ち抜けず」「「滑るだけ」―の事となる」


ここで克巳が解説した!
さすが若き天才だけあって刃牙の回避術を見切っている。
つまり、宿禰の渾身の張り手は不発に終わったと見ていいだろう。
これでスリッピングに失敗してモロに喰らっていたら笑えるけど。

そして、宿禰の命がけの10秒はしっかりと捉えられていた。
いや、まぁ、刃牙に届くまでに2秒かかる10秒でしたからな。そりゃそうか。
古代相撲の格がどんどんと落ちていってますよ。

7秒の時点で宿禰は白目になり、8秒で顔を地に着ける。
そして、9.01秒で決着!! 一体何だったのお前!?
10秒で勝つと豪語した結果、9秒で負けてしまった宿禰だった。
誰がどうみても立派な生き恥を晒してしまった。

そして、範馬刃牙、一切合切一ミリも容赦せん。
血も涙もない相手の全てを叩き潰す凄惨な殺し方だった。
こんなだから人気ねェんだよ、オメェは……!!
いや、宿禰も宿禰で人気がないのでちょうどいいかもしれないけど。

まぁ、予想通りにアライJr.コースでしたね。
変な顔を見せて笑わせることができなかっただけアライJr.よりも悲惨でさえある。
笑い話にさえできない。
それも宿禰は3秒かけて接近してこれだからその気になればもっとタイムを短縮できるぞ。負けのタイムを。

刃牙も刃牙であそこから負けるという伝説のバカにはならなかった。なれなかった。
瞬殺もそうだけど予定調和過ぎて盛り上がりようもない。
完全に負け犬の事後処理って感じの空しい試合だった。

今回の一番の謎は宿禰の遅すぎる張り手だ。
振りかぶってから振り抜くまでに長くて2秒、短くても1.5秒ほど。
いくら何でも遅すぎる。こんなんじゃ張り手見てから昇竜余裕ですよ。
刃牙が周囲の時間の流れが遅くなる能力を使ったとしか思えない。
次回はその違和感を観客たちが語り出す!……かも。

もっとも10秒まであと1秒を残している。
ここから宿禰が復活して1秒で逆転する可能性が残されている!
でも、ここから勝つには宿禰の身体からガーゴイルが出てくるとかじゃないと無理だ。

さすがに宿禰は再起不能だろう。二度と戦うことはあるまい。
長かった古代相撲編も終わり次の展開へ足を向ける時が来たようだ。
何か無理に盛り上げようとしたけど結局は結局って感じでしたね、相撲。
歴代シリーズで冷遇されていたのに今更盛り上げようとしてもそりゃ無理ってものであろう。
相撲はボクシングと同じ地位を築けたと言える。悪い意味で。

というわけで次回から新展開!……なのか?
次の展開がまったく読めないのが最近の刃牙だ。
今度は蹴速が10秒で終わらせるとウォームアップしまくって刃牙に挑むかも。
そして、9秒で負ける。
今回は合併号なので再来週の次回へ続く。