バキ道感想 第150話「ガブリ」



もっとも強さに餓えている男がジャックと本部は語る。
そんなこと言っている間に襲われそうなんだけど大丈夫ですかね?
まぁ、いざとなれば煙玉で逃げるか……その場に残ったノムラと加藤は生け贄カードとして捧げられる。


そんなジャックだが徳川邸でトレーニングをしている!
本部を襲わないんかい!?
最後に本部の道場が映っていたからてっきり襲い掛かるのかと思っていたよ。
良かったな、本部。解説役として食っていけるぞ。

ジャックは足でタイヤを踏ん張った状態でフックを引っかけ、そのフックを噛んで持ち上げる。
タイヤが△の形に変形する!
咬合力を鍛えるための不自然なトレーニングである。
同じことを紅葉がやってタイヤを変形させるどころか引きちぎっているけど、まぁ、それはそれ。
ジャックもその気になればやれますよ、多分。

結局、タイヤを引きちぎらずジャックは次のトレーニングへと移る。
両腕を地面に着け、その状態で両脚を掲げたまま、バランスを保つ。
所謂Lシットですね。
それを240cmの巨躯で見事にこなしている。無理に伸ばした身長ではあるがバランス感覚が失われていないこともわかる。

その状態でジャックは太ももと顔がくっつくくらいに腰を折り曲げる。
筋力のみならず凄まじい柔軟性だ!
凄まじいんだけど、何というか、地道なトレーニングですね。
無茶なトレーニングこそがジャックの持ち味だと思っていたが……ジャックも学んだということか?

だが、ジャックは地道なだけではない。
さらに錠剤をいくつも噛み砕くほどに口を含み、液状の薬も3本まとめて飲み干す。
相変わらずのハードドーピングだ!
明日を見ぬ男らしい刹那的な鍛錬である。

まぁ、最近のジャック、健康サプリを飲んでいるようにしか思えないんですけどね。
何か全然健康だ。
あるいは健康を維持できるレベルのドーピングをしているのかも。
ジャックにドーピングを目覚めさせたジョン博士は自殺しちゃったわけだし、あの博士の薬が特別効果的かつ危険なだけなのかも……

そんなジャックのトレーニングが11ページに渡って描かれる。
刃牙のトレーニングなんてもう描かれなくなって久しいのに……
ジャックが強さの探求者というか、刃牙がサボり魔というか。

「実戦とはほど遠い――――」
「現実的ではない」「カタチばかりの様式美」


一方、本部は語り続ける。
君、数年振りにまともな出番が来たからって調子に乗ってんな?
いや、まともなのかなぁ……?

そんな本部が語るのは演舞についてだった。
武術に必ずついて回る演舞だが、格好いいばかりで実戦性は絶無であると語る。
古武術の達人である本部がそこに触れるとは……
実戦派だからこその伝統への諫言だろうか。

本部も演舞を刃牙に見せたことがある。
4人に身体を掴ませてから、それを一気に崩して無力化するというものだった。
刃牙をして「すげえ……」とコメントさせるほどの絶技である。
まぁ、刃牙さん、わりといろんなことに上辺だけの感服を見せるんですけど。

あれも4人に掴まれるという実戦では滅多にないシチュエーションでの技だった。
本部からすればあれもカッコだけのものであり、演舞に実戦性がないというのは自戒を含めてのコメントなのだろうか。
でも、花田が同じ技を実戦で用いていた。
本部流の演舞は実戦を踏まえたものなのか?
うーむ、連載序盤と現在の本部に差がありすぎてよくわからん!

「噛む道と書いて「嚙道」」
「カブリだ」
「震えがきた」


対して嚙道はどうなのか。
本部は震えが来たとコメントする。
本部はかつてジャックの噛み付きを武でないと断じた上で破った。
その本部をして嚙道は凄まじいもののようだ。

「ジャックは堂々と“噛みつき”が目標ゴールだ」

本部は嚙道の本質を見抜いていた。
嚙道に目覚める前のジャックは噛み付きを過程として用いていた。
噛み付きを使った試合、三崎健吾戦、ガーレン戦、渋川先生戦、刃牙戦、ピクル戦、本部戦はいずれも戦いの過程で噛み付きを用いてその後は打撃であった。

対して嚙道に目覚めた後、宿禰戦では打撃を用いれどトドメが噛み付きになっていた。
噛み付きが過程だけでなく目標点になっているのだ。
さすが解説王、嚙道を見抜いていたのだった。

でも、噛み付きで大ダメージを与えてから体躯を活かした打撃で仕留める嚙道前のジャックのスタイルはそれはそれで理に適っている気はする。
噛み付きは急所である顔面を相手に近付ける。それも急所の中の急所、口の中を晒すとリスクが大きい。
今のジャックは240cmの巨躯を活かした打撃が一番の武器なのだから、無理に噛み付きにこだわらんでも……

「カッコつけない――――」「確かに“強み”だ」

嚙道が理に適っているかどうかは置いておいて、弱者の最終兵器と呼ばれる噛み付きを最良の武器とする。
その格好付けなさが武器であり強みと加藤は頷く。
ジャックはドーピングといい噛み付きといい世間の賞賛を求めない孤高のスタイルが強さなのだ。
いや、宿禰に勝った後は賞賛を妙に求めましたが。
あれ、何だったの……? ブレてはいけないところがブレてません……?

格好付けないジャックに対して他の強者はどうか。
刃牙、勇次郎、独歩、克巳、渋川先生……
全員が独自の美意識を持つ「エエカッコしい」なのであった。
その美意識を持つからこそ己を鍛え上げ強味にもなれば、大相撲力士に妙に苦戦をしてしまったように弱味にもなる。

「人目が気にならない」
「大きな「武器」だ」


対して美意識がないのがジャックの強味!
なのだけど、美意識がなさすぎる人間は痛い目に遭ってきたのがバキ世界である。
武器を平気で使う死刑囚たちなんかがそうだ。
ジャックだってピクルに惨敗した後に再戦したら瞬殺されてしまった。
美意識がないというのはあまり強味にならないような……

一方で同じく美意識がなく、それでいて最上級の強さを持つ人間がいる。
はい、本部さんです。
素手では大相撲横綱に負ける程度の戦力だが、恥も外聞もなく完全武装すれば刃牙を圧倒し、勇次郎を翻弄し、武蔵にも勝てる。
まぁ、本部の美意識は戦い方そのものではなく皆を守護る方向に向いている気はしますが。

また、今本部の道場に集まった男たちは全員が美意識がない。
加藤は隠し持ったテグスを使うことを躊躇わない。
その美意識のなさ故に独歩に窘められ埋めがたい実力差を見せつけられたけど。

ノムラも(刃牙道で出てきたガイアをノムラと仮定すると)スペツナズナイフや拳銃を使うことを躊躇わない。
自分の周りにある環境を利用することにこだわるガイアよりも美意識がない。
美意識がなさすぎたのはいいけど、武蔵には一切通じなかったけど。
……やっぱり、美意識がないのはダメなんじゃないか?

そんな美意識がない戦士たちが集まって刃牙を初めとした実力者たちに挑むのが新章!……なのかも。
刃牙VSジャック、独歩VS本部、克巳VS加藤、渋川先生VSノムラなんて何でもありチームが勝てる未来がまったく見えない。
やっぱダメかも。
特に克巳VS加藤はどうやったら加藤が勝てるのか。末堂とセットでも勝てないぞ、これ。

ともあれ、ただ強さを求めるだけではなく、強さの種類に注視する段階になったようだ。
タイトルにもなっている道は一つではないのだ。
単純に瞬間的な強さだけを求めた宿禰が負けた理由がそれなのかも。
寒子に後ろからキスさせるような、そんなえげつない強さも持っているのが範馬刃牙なのである。
10秒の全力だけで勝てるわけがないですよ。



今後の展開はどうなってくるのか。
休載を挟み次回最終回へ続く。
最終回かよ!?
新展開になると思ったらいきなり終わるのは予想外だよ!
しかも、休載挟んでいるし! どうせ最終回ならあとちょっとくらい頑張ってくださいよ!!

そんなわけであと1話でバキ道が終わるのだった。
とにかく休載って感じのシリーズでしたね。
相撲という素材が思った以上に弄りがいがなくて、板垣先生のモチベーションが上がらなかったのだろうか。
新シリーズではまたピクルや武蔵みたいな刺激を得られるネタを見つけられればいいのだけど。
……ピクルや武蔵の後に相撲じゃそりゃ刺激不足か。