刃牙道感想 第61話「擬態」



烈が刃牙に感謝した。
刃牙が烈に感謝するならともかく、烈が刃牙に感謝する理由ってあったっけ?
刃牙は烈に迷惑ばかりかけているような……
むしろ、烈は怒っていい。怒れ!

「刃牙さん…」
「ありがとう」

刃牙への感謝と共に烈は縦に回る。
対武蔵戦のために用意した消力か!?
だが、ただ消力して武蔵の斬撃をかわすだけでない。
かつて刃牙が得意とした胴廻し回転蹴りで武蔵にカウンターを決めた。
懐かしの技だ!
そして、対勇次郎という地上最強のために用意した技が、時を経て対武蔵という戦国最強に使われたのは何という因果であろうか。
居合いの人、黒川相手に完成させた技であることから、対武器耐性もたっぷりなのも何という偶然か。

「ッしゃあ!!!」
(烈さん…ッッ)「アンタ天才だ」

ここですかさずナイスリアクションで歓喜する克巳であった。
さすがは烈の最大の友。
働くポイントをわかっていらっしゃる。
しかし、何か立ち位置が加藤とか末堂になってるような…… 刃牙に変わってセコンド役になって、加藤と末堂を本部に渡すべきだったな。
そうすれば本部もかつての仲間と共に解説ってくれたに違いない。

「スゴいな…」
「羽毛
(はね)が蹴った」

烈のカウンターに本部も驚愕だ。
そう、この人はいつもこうだった。
いつもいつも物事の見通しが甘い。 独歩の5段突きを受けた勇次郎がぴんぴんしていた時とかとんでもないピエロだった。

今回も消力がただの防御技でありそこから繋がるものがないとでも思っていたのだろう。
だが、烈は消力による回避に胴廻し回転蹴りによる攻撃を加えることで見事にカウンターを完成させた。
これには本部も度肝を抜かれ、我々は本部の何たるかを知るのだった。
守護れる気でいるのもこの甘い見通しからじゃないだろうな。
「すげェ…」「ホントにやっちまった」
セコンドの刃牙も驚いている。
思えば他人の技をパクりまくっている刃牙だが、パクられるのは存外初めてではなかろうか。
初体験からか、あまりいいリアクションを出来ていない。
やはり、克巳がセコンドにいるべきでは……

範馬刃牙流と中国武術の融合に郭海皇は口を開けて驚いている。
消力さえあれば何とかなると無茶振りをしたものの、こんな形で変化を遂げるのは予想外だったのかも。
郭海皇は技術は凄まじいかもしれないが、年齢もあって発展性に欠けるのだろうか。
だからこそ、克巳の真マッハにも驚いていたし、技術の発展を狙って神心会の人たちに消力を教えたのかも。

「あなたの五体に刻まれ編み出されたあの構えが…」
「羽毛
(はね)に――」
「重量感
(おもさ)と刃(きれ)という――矛盾を添えてくれた」


烈も内心消力の問題点、斬撃をかわしてもそこから繋がるものがないという点に気付いていたようだ。
そこを刃牙の胴廻し回転蹴りが補ってくれた。
攻めの消力を使えればいいのかもしれないが、それは今の烈には無理なのだろう。
郭海皇がやった殴られた勢いで蹴るという技術も厳しいだろう。
そこで刃牙の胴廻し回転蹴りカウンターを参考に上手く回避と攻撃を両立させ絶体絶命の危機を乗り越えた。
こりゃ刃牙に感謝するのもわかるな。

しかし、問題点がひとつある。
刃牙は烈の知る範囲で胴廻し回転蹴りのカウンターを見せていない。 最大トーナメントではリーガン戦とジャック戦で胴廻し回転蹴りをしているものの、どちらもカウンターの形で用いてはいない。
特に後者なんて烈は医務室でうなされていたし知る由もない。
刃牙の構えが身体を自然に動かし胴廻し回転蹴りに導いてくれたのか?
でも、刃牙が胴廻し回転蹴りカウンターをする時は両腕を上げるといつもの構えとはちょっと違うのだ。
うーむ、烈はどこで胴廻し回転蹴りを知ったのだろう……
本部か? 本部も知る由はないのだが、本部なら知っていてもおかしくなさそう。

さて、問題は武蔵のダメージだ。
この胴廻し回転蹴り、大物を相手にはまったく通じていない。
何か剛体術みたいだな。
今回はどうかと言うと……メッチャ効いてた! 武蔵は息も絶え絶えである。
一撃で決まる世界に生きてきただけに何回も殴られることもなく、それ故にタフネスに欠けるのだろうか。

「刺します…!!」
「刺すまでもなかろう止め」
「敢えて刺します!!!」
「それが――――――――――」
「貴殿
(あなた)の武士道にも叶うはず」

もはや武蔵は瀕死。
勝負あり判定が出るかもしれぬ。
だが、烈はトドメを刺そうと飛び上がる。
絶体絶命の危機にあえて斬れと叫び、武蔵はそんな自分を斬ろうとしてくれた。
ならば情けなどかけぬのが礼儀であり敬意か。
なお、刃牙ならここで舐めプレイを開始する。

「……×ッッ」
と、ここで本部が烈の判断に×(バツ)を出した。
こいつ、見通し甘いくせに不穏当なことを口に出すんじゃねえ!
いや、口に出していないし冷や汗だらだらで本部っぽいけど、余計な手出しをするな!
お前は守護らんでいいから解説っていればいいんじゃい!

と、瀕死だったはずの武蔵が突如起き上がる。
擬態である。郭海皇でさえ騙されるほどの精度だった。
当然、烈も騙されており武蔵の反撃に反応できない。
今回の武蔵の武器はたすきだ。
それで烈の首を絞める。
まさか、絞殺か? いや、腕や脚にもたすきが絡んでいく。

「武芸百般」
「縛法だ」

烈がたすきで縛り上げられ梱包されてしまった!
相手の動きを封じるのも戦国の技術か。
武器ありの何でもありの切れ味と幅の広さはグラップラーを凌駕するものがある。

そして、この事態を予測していた人間がいた。
本部である。
武芸百般に長けると言っていたし、縄を使えるとも言っていた。
今回はたすきを縄代わりにしてのけた。
本部らしい見通しの甘さを見せながらも、本部らしからぬ先読みを見せた。
コイツ、本当に本部なのか?

ともあれ、身動きが取れなくなった。
消力も完全に無力化されてしまった。
絶体絶命中の絶体絶命である。
そのことを烈本人も知っているのか、烈の表情は呆けているものだ。
煮るも焼くも武蔵の思うがままだが烈はどうする?
逆転なるか? 本部がドヤ顔して終わるのか?
ところで肘の不調はどうした? 案外平気そうだが?
次回へ続く。


縛法炸裂!
わざわざ自分で武芸百般と言う辺り、本部を立たせようとして偉い人だ。
こうなると格闘技だけの人間には武蔵は手に余るかもしれぬ。
同じようにたくさんの武器を使える人間こそが武蔵の相手に相応しいかもしれぬ。

となると、あの男しかいない。
数々の武器を使いこなし対戦相手を翻弄したあの男である。
そう、ガイアだ!
武蔵が戦国の合戦で鍛え上げられたのなら、ガイアは現代の戦場で鍛えられている。
武器ありの戦いも自然にやれるしなかなかに盛り上がるカードではなかろうか。
縛法に関してもツタで刃牙の絞殺しかけたし十分な技術を持っているぞ。
ん? 同じく武芸百般に長け縄も使えると自称している本部?
解説っててください。

また縛法となればあの男も欠かせない。
ガイア並みに様々な武器に長けるあの男である。
そう、ストライダムだ!
あの人、古流武術経験者に縛法で勝っていた。
武蔵と縛法勝負してみたらどうよ?
ん? 同じく武芸百般に長けて縄も使えると自称している本部?
解説っててください。

烈は押されているがどうも苦手分野での勝負が目立つ。
得意分野の素手でも圧倒されたわけだが、最初から素手の戦いに限定していればもうちょっと結果は変わったかもしれない。
今回の胴廻し回転蹴りで優勢になれたわけだし、噛み合えばイケるはずなのだ。
やはり、武芸百般で対抗できる本部に頼らざるを得ないか。

でも、本部って金竜山に負けたじゃん。雑魚じゃん。
そう思われ続けていたがあれは擬態だった可能性が出てきた。
擬態で油断した金竜山に反撃! 大勝利!
武道家は無駄なことはしない。必要最低限の勝利条件を必要最小限の手間で満たして勝つのだ。
そのためならば油断させることも基本技術なのである。
武芸百般に長ける武蔵が擬態をしたのだから、同じく武芸百般を学んだ(長けるとは言わん)本部が擬態をしてもおかしくはない。
そんな思惑の元に擬態していたら先に勝負ありがかかってしまい負けが確定しちゃったのかも。

本部=弱者の要因の6割が金竜山への敗北と言えよう。
残り4割は見通しの甘さや大言壮語、あと解説。
だからこそ、その敗北が擬態によるものならば本部の評価は激変する。
本部は本当に独歩を1分で殺せるし烈とも互角に戦え無事に済ますことはない一流なのだ!

武蔵は本部の可能性をどんどんと広げている。
実はこいつら、裏で結託しているのではなかろうか。
でも、本部の株を上げてもあまり得はないと思います。
武蔵、現代の詐術を味わうのだった……




刃牙道(6) (少年チャンピオン・コミックス)