・ユーカの母親の話 いきなり不死王から逸れるじゃねーか!
でも、語るのに必要なので……
さて、ユーカの母親は王家の血を引いたいわば聖王。
王と姫の一人……の候補であった。
というのもユーカの母(以後、便宜上聖女妹)には双子の姉(以後、聖女姉)がいた。
2人はフェルアルナ王家の慣習に従い――長女は聖女としての訓練を受ける――共に聖女としての道を歩む。
長男は聖王候補としての教育を受けるため、聖女が聖王の道を歩むことはない。
だが、結果としては聖女妹は聖王を継承しているため、おそらくはその代の王家は男子に恵まれなかったと思われる。
聖女姉は真面目で規律に厳しく、まさに規範を絵に描いたような人間であった。
逆に聖女妹は姉とは正反対で不真面目に規律を守らない人間であった。
真逆な2人であったがそれでもいくつか共通していることがあった。
歴代聖女随一の卓越した技量を持っていたこと、目的のためなら非道さえ厭わぬ強い決意を持っていたこと、フェルアルナを愛しており聖女として生きることと死ぬことに疑いを持たなかったことが共通していた。
なお、その強さに惚れ込んだ若き日のユリエルは聖女妹に弟子入りしている。
聖女妹の強さは当時のユリエルを上回っているが、現在のユリエルと比較するとどうなのかは不明。
聖女妹は本来は聖女姉に聖王を継承させるつもりであった。
聖女として戦いフェルアルナを守ることにはどこまでも真摯であったが、王として政治を執り行うことには興味がなかった。
だが、そんな中でテロリストに人質として捕まえられたある貴族――後の伴侶となる男を救ったことで心変わりする。
その男の語るフェルアルナの未来に己の全てを託したくなり、急遽王位継承権を掲げる。
そして、聖女姉と聖女妹は聖王の座を賭けて争うことになるのであった。
どちらが聖王として王位を継承するかの議論は大いに紛糾する。
互いが語るフェルアルナの未来はどちらも正しくあったからだった。
結果としてはお互いの半生を賭けた聖女としての力量を競うこととなる。
それは試合であり死合いであった。
その試合内容は完全武装で試合場に来た聖女姉に対し、聖女妹は武器どころか防具さえ纏わぬ徒手空拳。
侮辱かと怒る聖女姉の隙を突いた奇襲で腕の骨をへし折り、武器と防具のハンデを一気に埋める。
だが、聖女姉も卓越した技量を持つ聖女故に片腕が死んだ程度では屈せず、そこから壮絶な死闘を繰り広げることとなる。
互いに血まみれになりながら続いた壮絶な死闘は聖女妹のマウントポジションからのパンチ連打によって決着する。
あまりに凄惨な戦い故にこの死闘を口に出すことは大罪に値すると言われ、現在ではその試合を語る者はおらず、覚えている者は覚えていないよう務めている。
これにて聖女妹が聖王を継ぎ、聖女姉は聖女としての任務を続投することとなる。
その後、聖女妹は伴侶――史上初の聖王ではない人間を国王に推薦して議会をまたも騒がせる。
それは大きな問題となるのだが新国王は賢王そのものであり、その治世は極めて高い評価を受けることとなる。
なお、聖女妹は第三子を産むと同時に鬼籍に入っている。
聖女としては超一流なれど母としては三流で子供たちの世話もほぼ召使いに任せていた。
これは戦いばかりの自分がまともに子育てをできないという持論からであった。
そのためか、ユーカを初めとする王家の人間は母のことをほとんど覚えていないのであった。
弟子のユリエルも聖女妹を師匠としては尊敬していれど、人間としてはどうかと思うというのが本音であった。
・聖女姉の行く末 ここからが不死王が絡んでくる話。
聖女妹に敗れた聖女姉は聖女としての任務を続投していた。
だが、聖女妹に敗れたショックから過度なトレーニングを己に課すようになる。
明らかなオーバーワークの結果、聖女妹は任務の中で致命傷を受ける。
一命こそ取り留めるものの現役復帰は不可能と診断される。
聖王にもなれず聖女にもなれない。
このことを知った聖女姉は失踪してしまう。
聖女妹は何だかんだで必死の捜索を試みるものの空振りに終わる。
その聖女姉の迷い込んだ先が本編で不死王と戦った館である。
そこの領主は傷付き失意に暮れる聖女姉に心を奪われる。
聖女姉のために全財産を注ぎ込んだことで凄まじい勢いで零落していく。
やがて聖女姉が命を落とすと――その死因は病とも自殺とも言われている――領主も後を追うようにその命を断つのだった。
なお、フロア7にある本は領主が書いたものであり、フロア11の下の方にある本は晩年の聖女姉が書いたものである。
この辺の設定は最初期の頃から決まっていて体験版の頃からあったかなーと。
・現在の不死王 その後、領主の死体のみが残った館に不死王が訪れる。
そして、その肉体を奪うのであった。
その姿が本編中における不死王の姿である。
不死王はその精神、というよりも思考は媒体となった人間の影響を多分に受ける。
そのため、領主の聖女に対する妄執とも言える記憶を受け継ぐのであった。
もっとも、幾度も転生を繰り返した不死王はほぼ痴呆症状態であり思考を失っていた。
そのため、アバーではカバ星人にあっさりと殺されており、自我がなくなっていたが故にリンネに肉体の支配権を奪われている。
だが、プバーでは幾度もループを繰り返したことでボケ老人だった不死王の中で何かが噛み合って妙に生き生きすることに。
その際に領主の聖女の記憶が蘇り、それ故にユーカにやたらと絡むようになるのであった。
もっとも、それは無闇矢鱈な執念という形であったのだが。
というのが不死王が現在に至るまでの経緯。
この辺の設定は本編やエンサイクロペディアで匂わせたり。
仔細を語ると本編とは無関係になるので匂わせる程度にしましたが。
まぁ、大分昔のことなので矛盾とかあるかもしれませんがね!
こんな設定を下敷きにプバーの話は作られました。
他のキャラもわりと語られていない下敷きがあったり。
なお、騎士王だけはそんなもの、なし!