喧嘩稼業第98話感想



久し振りの喧嘩稼業だ!
これが平成最後の喧嘩稼業であった。
何故なら次回掲載時期未定だから。
……存命中に完結しないに賭けたくなってきた。


芝原は上杉に煉獄の始動となる鉤突きを決めた。
初回はいまいちな芝原の煉獄だったが、今度はちゃんと決まる。
慣れない技を無理に使わんでもと思ったが、今後の試合のための試金石なのだろうか。
でも、それなら相応の技術が必要だとはいえ対策となる煉獄破りを披露したのは失敗のような……

里見は煉獄破りの分析を行う。
最初の煉獄破りの裾を踏むことで中段膝蹴りを無効化する煉獄破りが既に伏線だった。
この時は5手先の動作を防ぐために1手目の左上段突きの予備動作の時点で動き出していた。
てっきり前以て動く必要があったのかと思ったが違うようだ。

今回の煉獄破りとなった遠近感をズラすディフェンスは上半身を使うので胸から上の拳撃でなければ行えない。
そのため、左上段突きに的を絞る必要がある。
そして、1回目の裾踏み煉獄破りは左上段突きの手前で行っている……

なので、裾踏み煉獄破りと同じ動作をすることで上杉を警戒させ目線を切らせる。
その瞬間に遠近感をズラすディフェンスを行うことで空振りさせて反撃へと繋げた。
芝原は最初の煉獄の時点で2回目に備えていたのだ。
煉獄を破ることだけでなく、1度の試合に2回食らうことを想定していた……
何と老獪な戦術眼であろうか。
田島の言う通り、自分を知り尽くしているからこそ辿り着いた選択なのだろう。

芝原の煉獄は今度は途切れない。
文学は5手区切りの煉獄の6手目をあらかじめ決めていると読んだ。
本来は相手の動きに合わせて6手目を決めるが、先に何を打つか決めるとダウン逃げされてしまう。
さらにガードが空いている部分に打ち込める可能性が減ってしまう。
予約式煉獄はあらかじめ決めると熟練度の低い芝原でも使える代わりにデメリットができてメリットが減ってしまうのだ。

ただ今回は上杉の体力がないことからダウン逃げすればそのままマウントを取れる。
ダメージが下がっても残りHPが低いのならあまり問題ない。
それを踏まえて芝原は継続性を上げた予約式煉獄を行っているのだろう。
常にベストの選択肢を取れればいいのだが、現実問題それは難しいのでベターな選択肢に切り替える。
この辺の選択の妙も芝原の上手いところか。

打たれている上杉の呼吸は乱れていなかった。
これはダメージがないのではなく、肺を動かす力が残っていない。
単純に瀕死である証拠であり、上杉は倒れれば立ち上がれないと実感していた。

その中で上杉は時間を数えていた。
芝原の煉獄は続いて90秒。
そして、煉獄の弱点である倒しきれなかった時の反撃を考慮して体力を残そうとしている。
なので、煉獄が止んだ瞬間のカウンター、かつて自身が無一に敗れた時のように金剛を使う。
これが上杉のパーフェクトカウンタープラン!
まぁ、アゴに食らって意識を一瞬失うくらいには瀕死で、時間を最初から数え直すくらいには頭が回っていないんですけどね。

そんなあかん状況でも上杉は倒れない。
長時間持続する煉獄を撃てると体力はスゴいのが上杉だ。
その体力がロクに活かされたことはないけどここで出番が出た。
そして、結局は一撃で勝負を仕掛けるという脳筋戦法に託す。
何かこの人、いろいろと考えながら戦っているけど、根本的なところで脳筋なんだよなぁ……

芝原は限界が来たので離脱する。
それと同時に上杉は金剛を狙う……が、芝原は予想済みなのでガードを固める。
が、それはフェイント。
本命は目突きだった!
だが、それも見切ってガードする。
芝原にはまったく隙がない。ここまで強いとは思わなかった……

上杉は全ての力を使い果たした。
そこで脳裏に浮かぶのは富田流を手本にするべきではなかったということ。
富田流は無一に文学だけでなく十兵衛でさえ指導者から学んだ正しく癖のない技を使う。
あれで十兵衛は学ぶことには真摯だったので、基本をしっかり身に付けているのだろう。
初の金剛は変形型だったけどね。

手本にするべきは指導者から学んでいない癖のある技。
極限状態で打つ癖のある技は剥き出しの極意のみで形成される。
その思考の中で芝原が上杉に勝てたのは運が良かった、生まれて初めて本気で戦った、死ぬ前に戦えて良かったと最大級の敬意を表しながら、トドメの一撃、四方投げを狙う。
当て身にマウント、極めつけの煉獄と多彩な打撃を披露した芝原だが、最後は得意の合気だ。

格闘家たちも四方投げで狙うと読んでいたので、ある意味では読まれやすい選択肢ではある。
だが、最後だからこそ、詰めを誤りたくないからこそ、もっとも慣れ親しんだ合気の技に行き着くのも自然か。
ここで奇をてらってミスるのが一番不味いわけだし、安パイに行くのは間違いではない。
それに上杉に反撃の体力は残されていないのだが、勝算を持って四方投げを切ったのだろう。

だが、ここで上杉に最後の力が宿る。
手本にすべきは、梶原さん!
というわけで、投げられる瞬間、背中合わせになった瞬間に梶原さんが使った肘を使った金剛0式を放つ!
ここでまさかの先祖返りの梶原さんである。
この人、負けてからの方が存在感がデカいな……

こうして背面からの金剛が芝原に直撃する。
実戦ではありえないとされていた背面金剛だったが、上杉は実戦での運用に成功した。
これには十兵衛も驚く。いや、この人、観客になっている時はメッチャ驚くしテンション高いけど。
十兵衛のこういうところは悪辣さに隠された根の性格が反映されているようで嫌いじゃないよ。

背面金剛が成功し芝原は倒れる。
芝原は倒れ勝負あり……と思いきや上杉も倒れる。
まさかのダブルノックアウトであった。
金剛を受けて気絶したかもしれない芝原、力が尽きてしまった上杉……
状況は五分だ。
五分だが……起き上がれば余力を残している芝原の方が有利だ。

そして、芝原には後藤が背後に控えている。
かつて金田は後藤の薬によって背面金剛を無効化している。
なので、今回もその薬が効果を発揮する展開もあるのではなかろうか。
後藤は金田の薬は使うのは芝原の美学に反するとは言っていたが、後藤のことだから信用できない。

まだ勝負はわからない。
そして、次の掲載時期もわからない。
生殺しのまま、次回へ続く。
何か最近はそういうのばっかりだな! 盛り上がっているということだけどさぁ!