バキ道感想 第77話「10秒の長さ」



克巳は烈の腕を引き継いだのにいきなり投げられてしまった。
やっぱ、蹴りか。何故、蹴った。
烈の腕を使え! リザードマンが力士の中から出てくるかもしれないぞ!

さて、もはや恒例となったリプレイが行われる。
今回はやぐら投げだ。
リプレイされた以上は克巳は普通に投げられたらしい。 いきなりの大失態ですな。
初手上段蹴りはさすがに大振りが過ぎる。
これがタフ世界だったらケツ穴を掘られているところですよ。

ダウンした克巳の表情からは生気を感じられない。
何か普通にダメージを受けている。
そんな克巳に対して関脇は踏み付けを幾度も行う。 克巳は両腕でガードしているがダメージはデカいだろう。
強力かつ効果的な攻めであると同時に、完全に相撲を逸脱した攻めである。
獅子丸は最初から古代相撲で戦っている。

ここで気になるのは独歩と戦った猛剣もそうだけど古代相撲にシフトした理由だ。 力士たちが大相撲を捨てた経緯がまるで語られていない。
金竜山もそうだけど力士は相撲のルールに縛られる傾向にある。
強敵と認めて本気を出したのはわかるけど、だからとルール無用の勝負をいきなりできるほど器用ではなかろう。
だからこそ、相撲を逸脱する経緯を語るのは大事なところだと思うのですが……

獅子丸はさらに胴着を掴んで引っ張り起こし顔面に張り手を放つ。
克巳はやられ放題だ。
スタートダッシュに大失敗してペースを握られてしまっている。
克巳はスタートダッシュに失敗する傾向にある。 花山の時は手心もあって大ダメージに至らなかったが、烈やドイルの時はそのまま敗北した。
ピクルの時はメンタルが万全だったからむしろ成功したくらいだけど、今回はそうも行かなかったようだ。

ここで克巳はどうするか。
背中を向けて逃げるのだった。
逃走は克巳が初試合で披露した最強の護身術である。 花山と戦った時も逃走している。
状況を打開するためなら逃走を恥じずに行えるのが克巳の強さの一つであろうか。
……ピクルの時はやけっぱち気味に向かっていったけど。

ここで克巳は人間が出せる全力の限界時間は10~20秒と語る。
10秒が長いのか短いのか。
ライオンや熊が襲いかかる10秒とはどんな10秒なのかと脱線しながら思考を巡らせる。

史上最強の関脇、獅子丸の全力の10秒は何なのか。
克巳はそれを正面から落下する滝と形容する。
しかも、樹木や岩が混ざった極めて危険な滝である。

「そんな「瀧」の10秒はとてつもなく長い!!!」

獅子丸の全力を味わった克巳はその密度の凄まじさを感じるのだった。
でも、そんな危険物が混ざった滝に一晩丸々耐え抜いた人がいる。金剛拳の楊海王だ。
なので、この滝の形容はいまいち危機感を感じないんですよね……
だって楊海王でさえ耐えられたし。
いや、あの人は耐えることに関しては超一流なのかもしれないけど。

この力士の10秒の密度を語るのがバキ道……なのだが、ここまでいまいち触れられてこなかった。
獅子丸との戦いでついに触れられるのか?
10秒間だけなら地下闘技場戦士を圧倒できるのが力士なのかも。

ともあれ、獅子丸の10秒間はとんでもないものだった。
あの克巳が圧倒されたほどだ。
ならばどうやって戦うのか。
10秒が凄まじいのなら11秒目から勝負を仕掛けるか?
瞬発力が自慢の相手には持久戦を仕掛けるのが王道である。



「ここからだ!」

そっちが10秒ならこっちは灼熱の時! 克巳、関節を鞭化しての真マッハ蹴り!
まさか、瞬発力に対してさらなる瞬発力で対抗した。
相手の弱点を突くんじゃなく、相手の長所を上回る武器で押し切ることを選んだ。
それもまた正攻法だけど、もうちょっと、こう、お前、何のために逃げた?
克巳は同様の技をピクルに放っている。
今回の真マッハ蹴りは関節を鞭化していることから威力はさらに上がっているだろう。
しかし、真マッハシリーズの一番の問題点はバックファイアである。 ピクルに使った真マッハ突き、真マッハ蹴り、真マッハ手刀の全てが骨折に至っている。
当てない打撃なんて腕が骨だけになっている。
進化して関節が鞭化しているならマッハシリーズの攻撃力だけではなく自分へのダメージも増えているのではないか?
もっとも、関節の鞭化は多関節化とは別の方向性、進化ではなく変化かもしれない。
関節を鞭化することで骨がしなやかにしなり、ダメージが骨に及ばないようにしているとか。
内出血くらいはするだろうけど骨が折れなければどうとでもなる!

とはいえ問題は克巳以上に獅子丸の方なんですけどね。
バキ世界のフィジカル最強であるピクルからダウンを奪ったのが真マッハ突きである。 かつてのパワーバランスならそのまま失神だけど獅子丸が耐えると、その、……いくら力士と言えどちょっと困る。
実は鞭化して蹴っただけでマッハに到達していないとか?

それにしても克巳は烈の腕を使わない。 初手で真マッハ蹴りなんてやってしまった以上は烈の腕はそれ以上のトンデモをやらないとダメだ。
かといって烈はそこまで拳自慢じゃない。
烈としては無茶振りをされたような心持ちだ。 マッハ突きを放ったり、ドリアンの精神を崩壊させたり、ピクルタックルに正面から向かったり、武蔵の剣を受け止めたり、烈の拳エピソードにも華々しいものはあるんですけどね。

キーポイントとなる烈の腕の活躍はまだである。
ピンチに烈の腕が目覚めるのが燃える展開だけど、生憎と相手は力士である。
宿禰相手ならまだしも大相撲力士相手に今の克巳がピンチになる姿は想像できないんですよね……
一体、どうなるのか。
何だかんだで一番の波乱の展開、かも。
次回へ続く。