どちらが勝つのか読めない戦いであり、意外な盛り上がりを見せた一戦であった。
それだけにどういった形で決着を付けるかが気になる。
地下闘技場で正式に試合をするのか? 本部を無視して続行か?
その答えが今回明らかにならない!!
というわけで、昂昇と花田と本部は置いておいてジャックと勇次郎が街中を歩いている。
ジャックと勇次郎!?
刃牙らへんの主人公的立ち位置と思しきジャック。
そのジャックにとっての目標である勇次郎。
いきなりラスボスとの邂逅だ。
忘れてなかったんですね、自分の息子のこと。
ともあれ、存在感がデカすぎる二人だ。
通行人の誰もが注目してしまう。
勇次郎なんて世界的な人気者で子供にもサインをねだられるくらいですからね。
すっかり巨凶から卒業している。
ジャックは243cmでとにかくデカい。
加えて長身でありながら筋量も凄まじい。
通常、長身は身体付きが存外細い。巨漢格闘家も例外ではない。
そんな中でジャックは横も太い。
トレーニングだけでなく食生活も意識しなければ無理な領域だ。
……骨ばっかり食って変にヘルシーな感はあるけど。
対する勇次郎は190cm以上とデカいがジャックほどの超規格外ではない。
だが、勇次郎の犬歯、毛髪、皮膚と様々な情報から通行人はむしろ小柄な勇次郎の方に注目してしまう。
それは勇次郎とジャックの実力差を示していそうだ。
勇次郎の壁は未だに分厚いようだ。
宿禰との一戦を鑑みてもワンパンで倒した勇次郎と刃牙、何だかんだ苦戦したジャックと差が垣間見える。
「
「
なお、勇次郎の髪が赤いことが触れられる。
キャラのかき分けのための表現とかじゃなく、本当に赤いんだ、範馬勇次郎……
赤毛はそこまで突飛な髪色ではないとはいえ、いざ言及されると不思議な感覚である。
実はホモだったりと近年になって明らかになる情報はけっこう多い。
この赤毛、子にも継がれていなければ親からも継いだものではない。
いや、刃牙は黒寄りとはいえちょっと赤みがかっているから引き継がれていると言えば引き継がれているか?
ともあれ、この赤髪は勇次郎の突然変異な強者という要素の一つに思えなくもない。
「身長ニ…」
「機能ガ追イツイタ」
ジャックはふと呟く。
今までは伸びた身長を使いこなせていなかったらしい。
普通に考えれば無理に身長を伸ばしたのだからバランスが狂うだろうし、その矯正には長い時間がかかるのは間違いない。
わざわざ言及することからその矯正はジャックほどのトレーニングマニアでも苦難だったのだろう。
宿禰や佐部との試合では素早い動きを見せていたし、あの頃には巨躯を使いこなせるようになったと見て良さそうだ。
同時に本部に負けたのはそこにあるかも。
巨躯を使いこなせなかったから本部に負けた! 仕方ない!
でも、あの時のジャック、踵落とししてましたね。
あれって相当なバランス感覚がなければ使えない技のような……?
「完全とは言えぬ」
「だが追いついている」
このジャックの発言を勇次郎は肯定する。
意外! ジャックに対してはダメ出ししかしていなかったのに!
「範馬刃牙」あたりならもうちょっと小馬鹿にしそうなものなのに……
今に始まったことではないけど、勇次郎もすっかり丸くなってしまった。
この言葉に驚くのはジャック本人だった。
ビックリするくらいに普通に驚いている。
いや、そりゃ読者としても驚きですが、ここまで普通に驚かれるとこっちも驚くよ……
食前にいただきますと言うくらいのサプライズなのかもしれない。
「「立ち合いの位置取り」」
「「敵より高きに身を置くこととす」」
「宮本武蔵」「
さらに武蔵の言葉を引用してジャックの骨延長を肯定した!!
え? 何この人?
刃牙に甘いのはいつものことだけどジャックに優しいのは非日常過ぎて怖いぞ。
ホモだった方がまだ納得感がある。
「バキ道」では全然触れられなかった武蔵が刃牙らへんになってからけっこう言及されている。
もしかして復活の兆しなのか?
みっちゃんなら退屈になってしまったからと悪気なしに復活させそうだ。
それが巨悪徳川である。
復活するのなら武器を封印してもらえると助かるのですが……
身長が高ければ有利なら身長を伸ばす。
それを勇次郎は短絡、安易、無節操と言う。
あ、褒めると思ったらやっぱりダメ出しか?
ジャックの目が曇る。
そこ、曇っちゃうんだ。やっぱり褒められたいんだ。
ガーレンに噛み付きを揶揄された時に嘲笑した頃のゴーイングマイウェイジャックはもういないらしい。
まぁ、賞賛を求めるようになっちゃいましたからね……
「出来ることではない」
と思ったら褒めた!?
短絡、安易、無節操でありながら世間からの嘲笑や苦痛極まる骨延長に耐えることは至難であり、その道を選んだジャックを評価するのだった。
ここで骨延長の苦痛はまだしも、世間からの嘲笑を挙げるのは意外だ。
いや、243cmなんて世間から奇異の目で見られてしまう。居心地が悪いのは当たり前だ。
それが生まれ持ったものならばまだしも、手術をして無理矢理伸ばしたとなれば嘲笑したくなるのが人というものでもあるだろう。
噛み付きやドーピングといいジャックの強さは世間から評価されにくいのだ。
でも、あの勇次郎が世間をデメリットに挙げるなんて……
勇次郎は世間のことなんてまるで気にしていなそうだし、それに囚われる人間こそ嘲笑しそうなのに……
君、本当に勇次郎さん?
勇次朗とか勇二郎とかみたいなそっくりさんじゃありません?
「「最強」を目指す歴史上 誰一人触れようともしなかった」
「「噛み付き」という聖地に 独り踏み入った」
「稀なる純度だ」
さらに噛み付きまで褒めた。
戦場格闘技では噛み付きは当たり前であり勇次郎も習得している……が、突き詰めて磨くことはなかったのだろう。
他に噛み付きを使うピクルも武器として磨いているのではなく、食事の一環として行っているに過ぎない。
事実、食欲が関係ない闘争に持ち込まれた刃牙戦では噛み付きを行っていない。
ピクルでさえ武器としての有用性の一点では噛み付きは一歩劣る認識なのだろう。
そこをジャックは、嚙道は突き詰めている。
先人のいない領域に踏み込んだことを勇次郎は素直に評価していた。
勇次郎は技術という点ではオリジナルのものはない。
勇次郎が使った高等技術の御殿手も、消力も、合気も、ドレスも、いずれも勇次郎が編み出したものではないのだ。
勇次郎自身、技術は不要と言うスタンスなので自ら技術を磨くことはなく、それ故に勇次郎オリジナル技は存在しないのはわかる。
数々の技術は天賦の才による気まぐれで体得しているに過ぎないのだ。
勇次郎は技術を弱者の工夫と断じつつも、その一方で工夫そのものは否定していない。
技術の粋を尽くした郭海皇を認めているし、刃牙が用いたゴキブリダッシュやトリケラトプス拳はむしろ高く評価している。
これらの例を考慮すると高いレベルの技術やオリジナルの技術に関しては積極的に認める傾向にあるとさえ言えよう。
そんな勇次郎がジャックが開眼した嚙道を褒めるのは不思議ではない。
……ここまでの塩対応から考えると不自然ではあるけどな!
「アナタニ――」「初メテ褒メラレタ」
勇次郎の賞賛にジャックは冷や汗を流しながら驚愕する。
いや、気持ちはわかるよ!?
だって刃牙以外にここまで褒めるなんて読者としても驚きだもの!
勇次郎が評価することに理屈は通っているけど不自然ではあるもの!
というか、褒められたかったのか、ジャック。
ジャックが宿禰に勝った時に賞賛に喜んでいたことは不自然だと思った。
今までは賞賛をいらないと断言していたのに、と。
しかし、ジャックの本音としてはむしろ賞賛を求めていたのかもしれない。
強さだけを求めている→賞賛なんていらないというロジックかと捉えていたけど、
勇次郎に褒められない→(本当は褒められたいけど)賞賛なんていらないというロジックなのかも。
内心そうだったとしても宿禰戦で急に賞賛に打ち震え出したのはよくわかりませんが……
勇次郎に褒められてしまってジャックが満足してしまわないか不安だ。
勇次郎に勝ち母の無念を晴らすことが目的……だったはずだけど、刃牙同様にそこもズレていそうだ。
勇次郎はダイアンを殺してはいないから朱沢江珠よりも大分マシな扱いだ。
より過酷な刃牙が赦しちゃったことを考えるとジャックも赦す気になってもおかしくないような……
昂昇と花田が激動の中、ジャックにも意外な展開がブチ込まれた。
次回が気になるところではある。
気になる展開が続くのはいいけど、話があちこちに飛んでいるのでどうにもまとまらない。
そろそろ一本の筋を通して欲しいところではあるのですが……
一応休みなしで次回へ続く。